見出し画像

君の世界を持っていた

小さな君は 
もう君の世界を持っていた 
わずかに動く手指だった赤ちゃんから 
君の世界は自由に広がって 
自ら触れ 
自ら食べ 
自ら歩き 
どんどんどんどんふくらんで 
あっ 
と気付いた時には 
風船のひもは 
母の手から解き放たれてしまった 
いま君の母は 
広い海にぷっかり浮かんだ船のようだよ 
心地よく漂いながら 
手足を伸ばして 
深い呼吸をしているよ 
君の朝が来たんだ