たいでんるーず

東北の山里に移住してきて24年。4人の子どもたちと過ごしてきた日々と、目の前に迫ってい…

たいでんるーず

東北の山里に移住してきて24年。4人の子どもたちと過ごしてきた日々と、目の前に迫っている限界集落での奮闘を、豊かな自然の中から、みなさまにお伝えできればうれしいな、と思って始めました。どうぞよろしくお願いいたします。

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記事一覧

夕日が沈む

夕日が沈む いつも急いでいる毎日だから ゆっくり今日という日を みとろうじゃないか 車を脇に止め 土手を上る 木や水や家が染まる 宇宙の色は形而下に現れ 人々を立ち止…

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闇は深いほど星は瞬く

今日もまた暮れていく 鳥たちはねぐらへ戻り また日が昇るまで 闇の中に消える 闇は深いほど星は瞬く 舞台の主役は入れ替わり 動から静の存在が輝く あらゆるものが具象で…

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ねぶたの木うす紅色の髪飾り 夜風に波打ち目を閉じて待つ

風吹けばひらひら覗く夏暖簾 赤銅色の君の二の腕

灼熱の葵(あふひ)の上り詰める頃 君はあっさり梅雨明けと呼ぶ

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田んぼ唄ひとりきりの音の世にカエルとキジとウグイスの声

大空に大きく円を追いかけて下界を染めゆくクマタカの影

チイチイと短き羽をばたつかせ生きるに向って親鳥を呼ぶ

春寒に 一番乗りのつばくらめ 恋の蕾にうらうらと舞う

おしゃべりを残して帰る三日間 娘の焼いたシナモンロール

時はただ小川のように絶え間なく 哀しみの舟を海まで運ぶ

ふきまんぶく

 「ふっきちゃんがきったよ♪ ふっきちゃんがきったよ♪」  ポカポカお天気の3月のある日、私は7歳、5歳、3歳になる子どもたちを連れてフキノトウを採取していた。家の…

4年間の4キロ

 そもそも毎朝走り始めたのは、4年前。娘が高校へ行かなくなった時からだ。それまで長男が生まれてから、4人の子どもたちに振り回された18年間だった。これを機会に、自分…

君はいつも温かい

山の夜は長い ごうごうと風は吹き抜け 雪が窓枠に張り付きながら積もっていく 窓や扉は硬く鍵をかけられたように 凍りついて動かない 山の朝は短い 燃え上がるその一瞬を…

ほっぺたに ハートマークの寒雀 約束場所はコイン精米

木守柿 エナガの群れの戯れる 羽の風花澄み渡る空

夕日が沈む

夕日が沈む

夕日が沈む
いつも急いでいる毎日だから
ゆっくり今日という日を
みとろうじゃないか

車を脇に止め
土手を上る
木や水や家が染まる
宇宙の色は形而下に現れ
人々を立ち止まらせるのだ

夕日を背にすると
正面のお月さまが笑っていた

闇は深いほど星は瞬く

闇は深いほど星は瞬く

今日もまた暮れていく
鳥たちはねぐらへ戻り
また日が昇るまで
闇の中に消える

闇は深いほど星は瞬く
舞台の主役は入れ替わり
動から静の存在が輝く
あらゆるものが具象であり
世界は浪漫で満たされている

ねぶたの木うす紅色の髪飾り 夜風に波打ち目を閉じて待つ

チイチイと短き羽をばたつかせ生きるに向って親鳥を呼ぶ

時はただ小川のように絶え間なく 哀しみの舟を海まで運ぶ

ふきまんぶく

ふきまんぶく

 「ふっきちゃんがきったよ♪ ふっきちゃんがきったよ♪」
 ポカポカお天気の3月のある日、私は7歳、5歳、3歳になる子どもたちを連れてフキノトウを採取していた。家の庭には毎年たくさんのフキノトウが顔を出す。この年もたくさんのまんまるい顔が、あちこちから出てきていた。
「あったー!」
「こっちもいっぱいだよ」
「そんなに泥が付いてたらだめだよー」
「あーなんでばらばらにしちゃうのーもう!」
「あ、そ

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4年間の4キロ

4年間の4キロ

 そもそも毎朝走り始めたのは、4年前。娘が高校へ行かなくなった時からだ。それまで長男が生まれてから、4人の子どもたちに振り回された18年間だった。これを機会に、自分のためだけの時間を作ろうと思ったのだ。そして、ちょっとばかり願掛けの思いもあった。いつの日か娘が自分で走り始める日が来ることを願って。

 娘の症状は無気力症候群か、適応障害といったところだろうか。まじめな性格の彼女は勉強も優秀で、高校

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君はいつも温かい

君はいつも温かい

山の夜は長い
ごうごうと風は吹き抜け
雪が窓枠に張り付きながら積もっていく
窓や扉は硬く鍵をかけられたように
凍りついて動かない

山の朝は短い
燃え上がるその一瞬を逃すまいと
ズブズブと雪をかき分けるが
朝焼けのピークは超えていて
穏やかな顔をした山が柔らかく
こちらを見ている

あー今日も言い訳に
スキマを与えてしまった
明日こそは君と共に
雪上を滑るように走る
たとえ
頰がかじかんで鼻水が凍

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