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ファイナンス(企業財務)の基本⑧:投資判断で使う「IRR法」の理解は、こんなに簡単だった

前回は、「投資の意思決定」の具体的方法論である「正味現在価値法(NPV法)」をご紹介しました。
今回は、NPV法以外の「投資の意思決定」の具体的方法論である「内部収益率法(IRR法)」について、書いていきたいと思います。

まずは簡単に、前回のおさらいです。

正味現在価値法(NPV法)とは(前回のおさらい)

NPV法とは、ある投資案に対して、投資案から生じる将来CFの現在価値から、初期投資額を引いた差額によって、投資の意思決定を行う方法です。

NPV法による投資の意思決定ステップは、下記となります。

  1. 投資案からのキャッシュフローを予測する

  2. キャッシュフローの現在価値を求める

  3. NPVを計算する(初期投資額を引く)

  4. 投資判断する。NPV>0:投資実行、NPV < 0:投資見送り

今回は、NPV法以外の「投資の意思決定」の具体的方法論として「内部収益率法(IRR法)」をご紹介します。

内部収益率法(Internal Rate of  Return法)とは?

IRR法とは、「投資によって得られると見込まれる利回りと、本来得るべき利回りを比較し、その大小により投資判断する方法」です。

「投資の利回り(内部収益率、IRR)」とは、初期投資に対して得られる収益の割合(利回り)を指します。

例えば、 今日100円を支払い(初期投資)、1 年後に110円を受け取る投資の利回りは、10%となります。これは数式で考えると、 下記式のXを求めていることとなります。

100 × ( 1+X ) = 110    または   100 = 110 / ( 1+X )

上と同様に、今日100 円を支払い(初期投資)、1年後に10円、2 年後に110円受け取る投資の利回りは、下記式のXを求めることになり、X = 10%となります。

(100 ×(1 + X)− 10) × (1 + X) = 110  または  100= 10 / ( 1+X ) + 110 / ( 1+X)^2

ここまでのご説明ですと、なんとなく、雰囲気はわかるとは思うのですが、「正直、何だかちょっとわかりにくいな・・・」という感じだと思います。

そのため、ここで、自分として最もわかりやすいと思う「内部収益率の定義(考え方)」をご紹介します。

内部収益率(IRR)とは、「NPVがゼロとなる割引率のこと」です。

NPVの中身

上の図より、「現在価値 = 各年の将来CF / 割引率 を足し合わせたもの」です。
すなわち、割引率が大きくなればなるほど、現在価値は小さくなります

そして、例えば割引率を1%、2%、3%・・・と試していくと、どこかの割引率の値で、NPV(= 現在価値 - 投資額)がゼロとなります。このときの割引率を、「内部収益率(IRR)」と言います。 

また、その逆を考えると、将来CFが大きければ大きいほど、NPVがゼロとなる割引率も、大きくなります。すなわち、それは投資の利回りの大きな投資案ということになります。

この割引率(内部収益率、IRR)を算出するのが、IRR法のひとつのステップです。

IRR法では、算出したIRRを「ハードルレート(投資により本来得られるべきリターン)」と比較して、「IRR > ハードルレートであれば、投資する」と判断します。

「ハードルレート」はどうやって考えて設定されるのか、については、「割引率」の詳細を書くときに、触れたいと思います。現段階では「ハードルレート」について、下記の点だけ押さえて頂ければと思います。

「ハードルレート」は、投資家の期待値を反映していなければならない


では、IRR法による投資の意思決定ステップをまとめます。

IRR法による投資の意思決定ステップ

  1. 投資のハードルレートを決定する

  2. 投資によるキャッシュフローを予測する

  3. IRRを計算する

  4. 投資判断 IRR > ハードルレート ⇨ 投資する

今回は、ここまでにします。
次回は、「NPV法」と「IRR法」を比較して、それらのメリット・デメリットについて書いていきます。

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