見出し画像

「時間軸」を科学する。シリーズAから始めるSaaSコホート分析

1.はじめに

こんにちは!月額3000円から始める電話自動応答サービスIVRyのカスタマーサクセス高柳(@neveryanagi)です。

〜お知らせ〜

実はIVRy、グッドデザイン賞を受賞しました!!!

  • 電話対応のニーズを満たしながらもデジタルの利便性も取り入れるシンプルでわかりやすいUI/UXや価格体系を実現している点

  • リリース後も顧客ヒアリングを元にサービス改善を繰り返している点

を評価いただきました。これからもお客様に価値を提供し続けられるサービスでいられるように取り組んでまいります。

今日はそんなIVRyのカスタマーサクセス分析についてのお話になります。

2.こんな人向けのnoteです

カスタマーサクセスとは何か、という書籍や記事は増えてきたんですが「具体どんなことすればいいの?」というナレッジはまだまだ足りていないなと実感しています。

このnoteではカスタマーサクセスの分析プロセスについて以下のような方向けにIVRyでの取り組みをシェアできればと思います。

  • カスタマーの課題を理解するために顧客分析がしたい

  • コホート分析って何か知りたい

  • カスタマーサクセス推進のために分析を始めたい

3.IVRyにおけるカスタマーサクセス分析

IVRyではData Driven Managementに取り組んでおり、カスタマーサクセスにおいても顧客の継続的な利用実現に向けて早い段階からデータを様々な角度で分析しています。

Data Driven Managementについては弊社代表・奥西が書いているnoteをご覧ください。

Data Driven Managementにおいて意識しているのが

  1. あらかじめ複数の分析切り口を設定しておく

  2. レポートを自動で更新できる状態にする

  3. 社内での共有も自動化・仕組み化する

の3点。今回はカスタマーサクセスにおける1の切り口について詳しくご紹介します。

4.カスタマーサクセスの重要指標

さて、IVRyに限らずSaaSのカスタマーサクセスにとって重要な指標を1つ挙げるとしたら何を挙げますか?
NRR、機能利用率など見るべき指標はたくさんありますが共通して追っているのは解約率(チャーンレート)ではないでしょうか。

SaaSは顧客業務をより良くしていくためのサービスです。そのため自業務にフィットした状態で使い続けてもらうことではじめて顧客に価値を提供することができます。

LayerXのかじ(@kajicrypto)さんもカスタマーサクセスについて次のように表現しています。

こう聞かれたら、「自社のサービスが顧客に提供するビジョンの継続実現に責任を持つ役割」と答えています。プロダクトには必ずビジョンがあるはずです。顧客にどんな価値を提供するのか定義されています。その価値を継続的に提供し続けることにカスタマーサクセスはコミットします。

カスタマーサクセスは概念 - LayerXのCS全体像 -

チャーンレートが1%→3%に変わると1年後に残るユーザー数は25%もの差が生まれます。
顧客価値だけでなく売上観点から見てもチャーンレートをどう改善するかは大きなテーマです。

わずか数%でも1年後の事業インパクトが大きくなります

5.チャーンとコホート分析

チャーン改善のために見ていきたいのは

  • どんな顧客がチャーンしているか

  • どのタイミングでチャーンしているか

  • なぜチャーンしているか

ですが「どのタイミングで」を分析するための手法がコホート分析です。

コホート分析は一般的に以下のように定義されています。

「コホート」とは、共通因子を持った集合体のことで、「コホート分析」は、ユーザーを属性や条件でグループ分けをして、動向を分析する手法のことです。一定の条件や属性によって分けたそれぞれのグループが、時間の経過に伴い、行動にどのような変化が起きるのかを分析します。

コホート分析とは?顧客行動を把握して維持対策に活かす

よくあるのはある月にアクションした顧客のその後の経過を分析する使い方ですね。以下のようなグラフを作成して分析を行います。

縦軸:アクションした月、横軸:経過月数(データはダミーです)

コホート分析で見る利点は、CMを打った月に入ってきた顧客はそれ以外の月のチャーンと傾向が異なるといった、全体数値だけ見ているだけではわからない顧客傾向を早めに拾うことができる点にあります。

6.SaaSサービスのチャーンをコホートで見た方がいい理由

SaaSのコホート分析といえば最近話題になっていたのがLayerXの牧迫(@35_mki)さんが投稿していたnote。こちらは商談〜成約までの時差を意識してコホート分析をしていました。
ちなみに今回の記事タイトルには全力のリスペクトを込めています笑。

アプリの場合インストールから1〜2日である程度結果が出ますが、SaaSの場合リードから商談・成約まで数日〜数ヶ月を要するというのが大きな差としてわかるかと思います。

つまりB2B/SaaSビジネスにおいては、「リード→商談」や「商談→成約」など各ファネル移行ごとに時差があることを意識した事業計画になっていない場合、「事業解像度が極めて粗い」事業計画であると考えられます。

ファネルを科学する。コホートを駆使して事業解像度を高める「シン・ザ・モデル」

一方SaaSサービスのチャーンをコホートで見るべき理由としてチャーンレートの構造的な落とし穴があります。

アカウント数ベースでの計算を例に挙げると月次チャーンレートは

当月の解約アカウント数 / 前月末時点での有料契約アカウント数

となります。ですが一般的に既存の残っている顧客のほうがロイヤリティが上がりやすく使い続けてくれる傾向にあるため、期間を追うごとに自然と分母の有料契約アカウント数が増えることになります。

そのため、単純に月次チャーンだけ見ていると自分たちのサービスが改善しているわけではないのにチャーンが改善しているという錯覚をしてしまう恐れがあるわけです。

そのため各月ごとの顧客傾向を検出しやすいコホートで見ることで、自分たちのサービスのチャーンを正しく理解することが重要になります。

7.チャーンにおけるコホート分析の切り口

時間の経過による顧客の状態変化の分析も、サービスの特性に応じて分析の切り口を設計することでよりシャープな顧客理解につながります。

IVRyを例にとると

  • 複数の業種のお客様が利用する → 業種別

  • 利用期間の異なる複数のユースケースが存在する → 利用目的別

  • 複数の広告経路から顧客を獲得している → 集客経路別

という切り口でコホートを見ることで各利用者のセグメントごとの傾向を分析しています。すると

  • 美術展などの1〜2ヶ月利用で解約するCLが一定存在する

  • 長期休暇のタイミングのみ利用して断続的に契約→解約を繰り返している

顧客の行動傾向が見えるようになることで、誰にいつフォローすべきかの優先度を明確にすることができるようになります。
IVRyのようなSMB向け低価格SaaSの場合、人力フォローをしない層も一定出てくるため、コホート分析をかけて定量的に切り分けをしています。

8.まとめ

改善のための第一歩はまず何が起きているかを正しく理解するところから。コホート分析はカスタマーを時間軸で分析する大きな武器になるのでぜひ活用してみてください。

次回は実際にコホート分析をするためのモニタリングダッシュボードをどう作っているのかについて触れたいと思います。

IVRyは、SMB向け/ホリゾンタル/様々なユースケースが存在するSaaSのため他では見られないチャーンの特徴が随所に見られます。
つまりカスタマーサクセス視点では、まだ解ききれていない面白ポイント盛りだくさんです!今のIVRyのカスタマーサクセス、めっちゃ面白いと思います)

ぜひご興味ある方はお話しましょうー!
それではお読みいただきありがとうございました!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?