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余談的小売文化論

「知性ある消費」をテーマに、現代の消費行動や理想論と現実的な問題のギャップについて考え、言語化しています。「正解」を語るのではなく、読み手が自分なりの正解を見出すための一助になる… もっと読む
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#お店の未来

青山ブックセンターが示す本屋の新たな可能性

青山ブックセンターが示す本屋の新たな可能性

先日、消費文化総研のみんなと青山ブックセンターの店舗見学に行ってきました。

青山ブックセンターの山下さんとは以前から本屋さんのあり方についてお話しを伺っていたのですが、今回改めて店内を案内していただき小売視点でのまなびがたくさんありました。

特に感じたのは、新しさやエッジは自分たちが「こうだ」と信じたことの結果がでるまで我慢することから生まれるのだということ。
見学が終わった後にコミュニティメ

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物語は、『買った後』にはじまる

物語は、『買った後』にはじまる

『ファネル型から、循環型へ』

先月登壇したEC CUBE DAYで、これからの購買行動についてそんな話をした。

最近『ストーリー』の重要性が至るところで語られているけれど、その多くは最終的に買ってもらうことを意識したファネル型の発想が根底にある。

しかしSNSが口コミを可視化するようになった今、買ってもらった"あと"のコミュニケーションがますます重要になっている。

「買ったあとこそが関係性

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ストーリーの前には「道」がある

ストーリーの前には「道」がある

7月に就任したnote for shopping プロデューサーとして、最近は『伝える』ことと『売る』ことの連続性について以前にも増して考えるようになりました。

もともと私はこれからブランドとメディアの境目がなくなっていくだろうと考えていて、その核には思想という名のストーリーがあると思っています。

一方で、ストーリーが重視されればされるほど、ストーリーが先行してモノが思想に追いついていない、と

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"D2C"がダイレクトに届けているもの

"D2C"がダイレクトに届けているもの

この1、2年でD2Cという言葉が急激に広がり、注目されるようになってきた。

と同時に、D2Cの定義に関する議論も増えてきている。

もともとは中間マージンをなくし、メーカーから顧客に直接商品を届ける『ダイレクト・トゥ・コンシューマー』がD2Cの語源だが、プレイヤーたちの規模が大きくなるにつれて小売店への出店や卸を行うブランドも増えてきた。

EC専売だったブランドが小売店に出店したり卸に展開する

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小売業の本質は『ブランド体験の総合デザイン』である

小売業の本質は『ブランド体験の総合デザイン』である

『小売業は"総合体験企業である』──。

先週金曜日に出演した『夜エクスプレス』にて、小売業をこのように定義しました。

これはダグ・スティーブンスが書いていた『Every Company is Experience Company』を私なりに解釈したものですが、最近よく語られる『体験』とは単に店舗での体験ではなくより包括的な体験を含むものだと私は考えています。

番組中では15分という限られた時

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オケージョン消費の可能性

2年ほど前に『これから洋服を売るために必要なのは、"ハレ"の場をどう作っていくかなんじゃないか』という話を書いたのだけど、年々この仮説への確信が深まっている。

そして当時想定していた『ハレの日』はちょっといいレストランやバーなどデート向きのものがメインだったけれど、最近はもっと幅広くカジュアルなオケージョンで消費が起きていることを感じている。

この流れを顕著に表しているのが最近注目して毎月読ん

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いい体験の主役は、いつだって「私」

いい体験の主役は、いつだって「私」

いい体験、記憶に残る体験とは何だろう。

スムーズに決済ができること、欲しいものがすぐに見つかること、最新のテクノロジーを駆使していること。

自分が作る側になると、ついそういった機能ベースで体験を考えてしまう。でも逆に使う側の視点に立ってみれば、記憶に残る体験にはもっと別の要素があることに気づく。

友人や家族と行った思い出の場所や、自分の価値観が変わるほどの感動、好きなアーティストを間近で見た

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日本の小売に、未来はあるか

日本の小売に、未来はあるか

昨年のちょうど今頃、たまたま手にとって感銘を受けた『小売再生』。

これまで何度もnoteやTwitterで紹介し、日々Pickしている海外ニュースでも彼の記事やブログを紹介してきました。

そこからご縁あって出版社であるプレジデントさんにインタビューいただき、本の感想を交えて店舗のメディア化や小売の未来についてお話したりもしました。

本に書いてあることはもちろん、彼のブログやBusiness

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語りたくなる体験と語るための余白 #お店の未来

語りたくなる体験と語るための余白 #お店の未来

いたるところで『体験』の重要性が語られているけれど、本当に人を魅了するブランド体験とは何なのだろう──。

そんな疑問を個人的に持ちながらのぞんだ先週金曜日のイベントでは、Takramの渡邊さんとインサイトフォースの山口さんのお二人にお話を伺いました。

モデレーターをしながら、『これは大事なフレーズですよ!』と会場に向けてツイートを強要(?)したのが下記の2つのポイントでした。

①経済合理性

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サブスクリプションの限界と展望

サブスクリプションの限界と展望

昨年、モノのサブスクリプションモデルについて下記のようなnoteを書いた。

基本的な考え方は大きくは変わっていないのだけど、サブスクリプションのスケールを阻むものについて、以前より明確に言語化できるようになってきた。

それが下記の3つだ。

①商品受け取りの不便さ
②最適な商品量の予測不可能性
③同一商品への飽き

この3つのポイントに加えて、過去のnoteで書いた『モノのサブスクリプションは

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なぜ今「リアル店舗」が注目されるのか #お店の未来

なぜ今「リアル店舗」が注目されるのか #お店の未来

今、リアル店舗が面白い。

アメリカを中心に生まれたネット発のD2Cブランドが、この1、2年で次々と常設店舗をオープンさせている。

ブランド立ち上げ当初から実店舗は持たないと公言してきたEverlaneすらも、CEO自身が『やはり実店舗が必要だと考え直した』と語り、現在ではNYとSFに直営店を構えている。

D2Cブームの先駆けとなったWarbry Parkerや元祖インフルエンサーブランドのG

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買い物はパッケージ化していく

買い物はパッケージ化していく

『Instagramが消費行動を変えた』という話はすでに至るところで語り尽くされている。

Instagramで見つけたものを買うだけではなく、Instagramに載せたいがために私たちは映えるカフェに足を運び、盛り付けにこだわろうとする。

しかし最近自分自身が買い物をしていて思うのは、Instagaramの一番大きな影響は『世界観を統一しなければならない』という感覚を植えつけたことなのではない

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これからは「世界観」が商品になる

これからは「世界観」が商品になる

WarbyParkerやEverlane、CasperといったD2Cブランドの台頭と店舗のメディア化、PBブランドの隆盛。

こうした小売業界における変化の根源は、すべてひとつの要素に集約されると思う。

それは『世界観こそが最大の資産である』ということだ。

以前「ブランドとメディアの境目がなくなっていく時代に」というnoteを書いたのだけど、境目がなくなっていくのはもはや小売とメディアだけの話

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