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インド系文字によるエスペラント語表記

7月26日は国際エスペラントの日で、1887年のこの日に発表された、ポーランドの眼科医であるルドヴィコ・ラザーロ・ザメンホフ博士による人工言語・エスペラント語が今年135周年を迎えました。

エスペラント語はラテン文字だけでなく、キリル文字やシェイヴィアン文字による公式表記が発表され、近年は人工文字・ユリアーモ文字も考案されました。

今回はインド系文字によるエスペラント語表記について取り上げます。

デーヴァナーガリー文字によるエスペラント字母

ヒンディー語版ウィキペディアの【एस्पेरांतो】の項目に記載されているデーヴァナーガリー文字によるエスペラント語の表記は、本来の表記と一部異なる形式となっています。

原則的に長母音字に統一されていますが、ウ段は母音字が長母音字UU》, 母音記号が短母音記号U (例 : ĤU《🇮🇳ख़ु・🇳🇵खु》[xu フ], CUत्सु》[ʦu ツ], VU《🇮🇳वु・🇳🇵भु》[vu ヴ], RUरु》[ru ル]―と変則的な表記が採用されています。

タ行・ダ行はそり舌音のTTA》とDDA》ではなく、ヒンディー語でエスペラントを表す〈एस्पेरांतो〉[エースペーラーントー]の綴りに合わせて、歯音のTA》とDA》で示す表記となっています。

母音記号の配置表記は、便宜上デーヴァナーガリー文字A》を土台にした表記を取り入れています。
イ段の後に母音が続く場合、YA》が挿入され、ラテン文字表記の“-IA”は〈ईया・अीया〉と表記されます。

ナーガリー文字順の字母一覧

インド式における子音字の発音を変化させる下点であるヌクタ記号は、エスペラント語では〈Nukto〉[ヌークト]と呼称されると思われます。

ネパール語版ウィキペディアの【एस्पेरान्तो】の項目に記載されているネパール式では下点が表記されないため、併記しています。

Aआ・आ】アー[a ア]
Iई・अी】イー[i イ]
Uऊ・अु】ウー[u ウ]
Eए・अे】エー[e エ]
Oओ・ओ】オー[o オ]
AN・AM【🇮🇳आं】アン[-an- アン/-am- アン他] - 撥音。ネパール式では鼻子音字にヴィラーマ―基本的にANआन्-》だが、Kグループ〈क・ख・ग〉の場合はANGआङ्-》, Ĉグループ〈च・ज・झ〉の場合はANआञ्-》, Pグループ〈प・फ・ब・भ〉の場合はAMआम्-》―を付加して、対応するグループの子音字と合成で示す。
K】コー[k ク]
Ĥ【🇮🇳・🇳🇵】クホー[x ホ]
G】ゴー[ɡ グ]
NG【🇳🇵】ンゴー[ŋ ング] - 合字表記用。
Ĉ】チョー[ʧ チ]
Ĝ】ヂョー[ʤ ヂ]
Z【🇮🇳・🇳🇵】ゾー[z ズ] - ネパール式では《Ĝ》と区別されない。
Ĵ】ジョー[ʒ ジュ] - マラーティー語由来。
NJ【🇳🇵】ニョー[-n- ン] - 合字表記用。
T】トー[t ト]
Cत्स】ツォー[ʦ ツ] - ツァ行音はT》とS》の合字で表記。
D】ドー[d ド]
N】ノー[n ヌ・ン]
NJन्य】ニョー[nj- ニ] - ロマンス諸語やスラブ諸語、日本語などに由来するニャ行音はN》とJ》の合字で表記。
P】ポー[p プ]
F【🇮🇳फ़・🇳🇵】フォー[f フ]
B】ボー[b ブ]
V】ヴォー[v ヴ] - ネパール語由来。但し、インド式では母音記号や子音字と合成する場合、Ŭ》の字形に置き換えられる。
M】モー[m ム]
J】ヨー[j ィ]
R】ロー[r ル] - ラテン文字表記“RJ”は、R》とJ》が音節の区切りによる〈र्य〉[-r.j- ルヤ]と語頭及びスラブ諸語や日本語のリャ行音由来の〈🇮🇳र्‌य・🇳🇵र्‍य〉[rj- リャ]と合字が変化。
L】ロー[l る]
Ŭ】ウォー[w ゥ]
V【🇮🇳】ヴォー[v ヴ] - ヴァ行の独立字はネパール式の《》と共通だが、実際はインド系ではŬ》と母音記号の合成で表記される。
Ŝ】ショー[ʃ シュ]
S】ソー[s ス]
H】ホー[h ハ]