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読書感想:至極のドキュメンタリー「死に山 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相」は未来を占う

「死に山 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相」を読んだ。
複数本を同時に読むスタイルのボクだが、面白さ故この本は一気読みしてしまった。特に後半最後の今までにない展開にはある意味胸躍って読み、その後なかなか寝ることができなかったくらいだ。
以下ネタバレあり。


未解決事件には関わった人たち、関係者が一番解決したいと思うのは当たり前で、中でも多少でも事件の捜査の一環に関連した人ならなおさらだろう。
それでも立ちふさがる事件の謎。
時間を経て追っても解決できない負の循環に関わる人たちの悩みたるや相当のモノだろう。
未解決事件は、この事件に限らず世界各国にあるだろうし、今現在も無数に生まれ続けているのが実情だ。
この「死に山 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相」では、全く無縁の国の人間が関心を持つことで、一旦は同じ方向性の解決策を思いついているにもかかわらず、その時は解決に至らなかった同じ方法で解決に(恐らく)至らせている。
具体的に言うと、深く関わってきたディアトロフ財団の人が思いついてメールで書いてきていている超低周波音が、作者が別アングルから辿り着いた超低周波音と同じだったが、この度作者の母国の専門家に食いついて尋ねたところ科学的な正解案に導けたという。その中で分かったと思われるのは超低周波音とカルマン渦の両方の発生による「未知の不可抗力」が若者たちを襲ったことこそが原因ではなかったのかと理由づけている。
つまり、もう既に解答のカードは揃っていた。
ただし、どれが正しいカードか分からなかった。
正しいカードへと導く人が必要だった、ということだ。
マンシ族が語り継いでいた伝承が、気象に関心があった外国人がこの事件に興味を持ったことで、専門家の科学者と出会うことで、全てのピースが都合よくここにきて科学によって合わさったのだ。

人は、容易な案、突飛な案、スキャンダラスな案、都合のいい案、へと導きたがるのが好きだ。科学的に分析するのはオモシロクないと思うのか後回しにし、どちらかと言うと嫌がる。しかし、現実は明晰だ。

世の中の未解決事件ももう少し様々な科学的見地を取り入れて分析すれば、意外とすんなりと解決するのかもしれない。(甘いかもしれない)
この事件であれば、気象学、地理学の見地からのアプローチ
などがあって解決へと導けた。
通常の一介の検事の実力では限界があるのはやむを得ないだろう。

これからの時代は、未解決事件に対し頼もしいツールがある。
AIだ。
世にある全ての分野の科学論文をビッグデータに放り込んでおいて、未解決事件があればAIにプロンプトを打ち込んでみて、様々な見地からの検証を行うことができるのではないだろうか。
ボクは有望な案だと思う。
ただし、この本のようなプロデュースできる人材、プロンプトを適切に指示できる人材が必要なのは間違いない。

AIが素晴らしいから人間の職が奪われる、などと単純発想する人は初めから職が奪われる理由を探しているのだろう。このように科学の力が集結することで今後更に人間の集合知が生かされていくのだとボクは思う。
未解決事件は、初動捜査ミスで分からなくなったものや、今回のように単に切り口が分からないものがあるだろうから、今後は恐らく減っていくのではないだろうか。そのためには、この本がもっと世間に知られる必要があるのは間違いない。

さあ、皆さん、早速読んで周りに勧めましょう!

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