#01「旅の流儀と仕事の流儀」
人生を振り返り、学生時代の貧乏旅が「仕事の流儀」に通じるものがあることに気づいた。
大学生の頃、野宿しながら四国・北海道を巡った。一人旅、相棒は400ccのオフロードバイク、両足をぶらぶらしてもつま先が地面にふれないほど車高は高く(足が短いのはご愛嬌)、重く、取り回しの悪いバイクだったが1日300kmの長距離を走るにはよいバイクだった。
◎風の切り方
雨に降られても走る。もちろん合羽はあるけど3時間も走れば隙間を伝わりインナーやブーツのなかまでズブ濡れ。
雲が晴れたら合羽を脱いでまた走りだす、風を切って自然乾燥だ。それでいい、それがきもちいい。
◎ルート
あえて最初からルートを決めず、観光地も避けた、朝ラジオで天気を確かめどこへ向かうかを決め、だれも行きそうもない地図に小さく載っていた滝に寄り道しながらトコトコと。
1度だけユースに泊まった、「雨ばっかりで最悪、二度と来るか」とのだれかのメモ書き。
私は自身でルートを決められたから比較的晴れた北海道を堪能したよ。
私は他の人と違うものが見たい、そもそも行きたいところが異なるらしい。
だからルートは自分で決めなければならない。
◎何食べた
貧乏旅、観光地を避けたので四国の旅は讃岐うどんすら食べられずに終わった、私は損をしたのだろうか?
ある晩、野営した橋の下から見上げる星のきれいなこと、そして川のせせらぎ。
ビスケットと缶詰、菓子パン、水道水を沸かしただけのお湯。
こんなにおいしかったっけ・・もう一生味わえない。
◎事件は起きる
当時はスマホもない。一人旅は自己責任だ。
四国では財布を落とし一文無しに。北海道では林道のど真ん中でバイクが動かなくなった。
あたふたしない、2日後には笑い話の種だ。2日間がんばろう。2日後成長した自分が楽しみだ。
◎旅の恩
貧乏旅、寝る場所にこだわってはいけない。雨さえしのげばなんとかなる。
夕方小雨降る中、散歩中のおじいさんに「この辺りに屋根のある公園はありませんか?」と尋ねた。
「家に泊まっていけ」とおじいさん、もちろん断ったが「そこだからと」結局ご厚意に甘え1晩泊めていただいた。
旅の後半で疲れが蓄積していたのでおじいさんの趣味の釣り話を聞きながらウトウトしていたところ、おばあさんの「寝かしてあげたら」の一言で久しぶりに暖かい布団で朝まで熟睡することができ、すっかり回復して無事旅路へ着くことができました。
今のご時世ではありえないことだが、本当に感謝でしかない。
◎シン世界(旅ではないけど・・)
学生時代雪国に住んでいた。新雪ならオフロードバイクでも何とか走れる。シンシンと綿雪が降る夜中。
大学からアパートへ戻る何度も通った河原沿いの道、くるぶしの上まで積もった路地の新雪を照らす外灯のスポットライトが見えた。
バイクのエンジンを止めた。暗闇。外灯に照らされた綿雪だけが踊りながら舞い落ちる。もともと静かなところ、綿雪が全ての音を吸い取り、風のノイズすらない「無音」の世界。
外灯の明かりの下、耳を澄ませながら綿雪とくるくると回ってみた。
こんな世界があったのだ・・と。
◎心の支えを見つけよう
バイクはむき出しだ。人生もむき出しだ。風が吹けば寒い。ころべば痛い。
だからこそ自分は今ここを走っていること(生きていること)を実感できるのだが、つらいことも多い。
走り続けるためには支えになるものが必要だ、苦難を乗り越えるための「心の支え」を見つけよう。
最後まで、お読みいただきありがとうございます。
謝辞
この記事は北海道で一晩泊めていただいたおばあ様が今年1月頭にお亡くなりになったとの訃報をお孫さんからの手紙で知ったことがきっかけになっています。あの明るいおじい様は北海道の旅の3年後にガンで亡くなっていたことも後に知りました。
今年も年賀状を頂いていたのでまさかと思いましたが、その最後の内容は「私の病状を気遣う文面のみ」で・・。最後までお優しいお二人でした。
ご冥福をお祈り申し上げます。
「なまけ弁当」
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