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『自分らしくいこう!』第4回 ★育てることは、愛をもって自立と自律を育んでいくこと★ ~5人を育てた最愛の母の教え~

新緑の季節になりました。青々とした葉が生い茂って行く様は、生命力そのものを実感させてくれますね。3月末に母が亡くなり、私自身の心の整理の時間が必要でした。コラムの中で、何度か、私が5人兄弟であることに触れていますが、私は、東京の下町、北区で、兄と弟3人の5人兄弟の紅一点として生れ育ちました。2月中旬に母が緊急入院し3月末には逝ってしまいましたが、この間に、兄弟5人が顔を合わせる機会も増え、また、コロナ禍を挟んで会えていなかった友人とも再びつながって、人と人とのつながりをもっともっと大事にしていこうと思える大事な時間になりました。

 35歳で一人娘を産み、仕事との両立で子育てを助けてもらっている時に、母に聞いたことがありました。「なんで、5人も子供を産んだのか」と。この話の流れは、マイナス感情では無く、私自身が1人の子育てでも大変な事だと思い、母への感謝もあって、口をついた言葉です。その時に母が「子供はな、私がこの世にいた『生きた証』なんだよ」と言った言葉をずっと覚えています。5人も子供がいたからだと思いますが、「文句があるなら自分でやれ」も母の口癖でした。この教えは、私たち兄弟の中にしっかりと入っています。例えば、どうしてもパスタが食べたい弟は、「今日は俺がつくる」と宣言して、自分で買い物に行き、弟流のミートソースを7人家族分作ってくれました。「うまい」「おいしい」と自然と出た褒め言葉が効いたのか、作る毎に腕を上げて、10年以上前に会社勤めを辞めて、今では懐石料理も出せるような料理人になっています。母の生きた証の5人の子供達は、みな、それぞれに自分自身の人生を自分らしく生きています。

 「文句があるなら自分でやれ」と同時に「他人の不幸の上に自分の幸せを築いてはいけない」も私たち兄弟に、よく言っていた言葉でした。今になって振り返ってみると、目の前の自分のテーマに対してどうするのかを、自分で考え決めることを教えられ続けてきたように思います。「文句があるなら自分でやれ。でも、他人の不幸の上に自分の幸せを築いてはいけない。」どちらも、当たり前のことと言えばそうなのですが、改めて言葉にして入ってくることで、一層、重みを持ち、判断軸に育っていったのかもれません。

企業内でキャリア面談をするようになって、様々な声に触れる中で、組織内のコミュニケーション不足を感じることが多々あります。業務連絡・仕事の指示以外の会話が減って、「上司にどんなことを相談していいのか、わからない」という若手社員や、「頭数はいても人手不足」と嘆く現場のリーダー達。難しいと(上司が)思う折衝や交渉は、全部自分(上司や先輩)がやってしまう。メンバーには説明する時間や、やらせてみる気持ちの余裕がない。仕事は進んでもメンバーが育たない。育っていないから不安で仕事を渡せない。これを繰り返していたら若手は育ちません。3倍速の時代と言われる令和の人材育成は、「心」の土台作りが肝なんです。それは、まさに子育てのような育成です。嵐に折れない心の覚悟を、困難にも自分で立ち向かっていく勇気を、7回転んでも8回起き上がる粘りを、チームのみんなが見せてくれたら、泣けるほど幸せな気持ちになりませんか。

★お母さんの子育て(人財育成)ポイント★
 ○ 家族を愛する。チームは家族。メンバーは妹や弟、自分の子供という意識を持つ
 ○ 失敗しても決して見捨てず、本人が失敗に向き合うことを見守る
 ○ 自分の心を開き自然体でかかわる
 ○ 一番の応援者であるという愛を持って叱る
 ○ メンバーの成長が「自分の生きた証」と腹に決める

時に、遠回りしているように感じても、確実に育っていきます。やるべき「作業」が、自らやりたい「仕事」に変っていくとき、メンバーは自立と自律の道を歩み始めます。そして、それこそ、上司や先輩の「あなた」がそこにいた「生きた証」になるのではないでしょうか。

 人材を人財へ。それは、未来を作る仕事です。あなたが育てた人財が、また次の世代を育てていく。そのような育成の連鎖ができているチームや企業には、いきいきとした目をした人財群が育ち、挑戦し、思いやりや励ましの声、議論もできる土壌を作っていると思います。我が母に育てられた5人の子供達に受け継がれている歴史のように。

                            薄井 昌子

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