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ありのままのあなたを受け入れてくれる世界にしよう

体は男の子でも、心は女の子。

名前は、たまたま、ユニセックスの名前サシャ(Sasha)だった。※日本にもユニセックスの名前、なおみ(直美、直実)、薫(カオリ、カオル)、光(ヒカリ、ヒカル)などがある。

子供のジェンダーに対する違和感は、思春期ではなく、実は幼児期に生まれる。
そのうち「普通」に戻ると思い込んでやり過ごしているのが、大半の親。
サシャの母は、そうはならなかった。

サシャの家族を捉えたドキュメンタリー映画「リトル・ガールLittle Girl(フランス2020)」には、本物の涙が流れていた。

シカゴ国際映画祭2020でベスト・ドキュメンタリー受賞
オンライン視聴28万回超記録
駐日フランス大使館推薦

2才半の頃、サシャは「わたしは、女の子」と言い始めた。母親は、次は女の子と願っていたせいなのか、自分を責めた。まわりからも「あなたのせいよ」と言われた。

学校では、先生は女の子、サシャを認めてくれない。生徒は先生の真似をする。生徒は、サシャに近づかない。女の子みたいだからと、男の子に嫌われ、男のくせにと、女の子から拒まれた。

サシャは女の子になりきるために、バレーダンスの教室に通った。しかし、ロシア人の先生は「サシャ君」と呼び、王子の舞台衣装を投げ与えた。母親の抗議に「ロシアにはこんな子はいない」と言って、はねつけた。

母はサシャに「女の子で、話し相手はいるの」と聞いた。サシャの眼に涙があふれた。

ありのままに生きたいサシャは、自分の人生を送れていないと、母は思った。

親は転校を勧めた。サシャは、親にも言ってない差別の苦労をくり返すのは嫌で、拒否した。

本人が強く願うなら「女の子として生きてほしい」という夫の強い覚悟が、罪を感じていた妻を救い、二人の兄弟にも協力させた。

学校に手紙を書き、先生の理解を求めた。そして、両親は、先生と父兄に向けて説明会を開いたが、数名の父兄しか参加してくれなかった。

その後、学校は医師の診断書の提出を要望してきた。

両親は医師を尋ねた。サシャは無意識に、母親の手を握りながら医師の話を聞いていた。医師は「ママはあなたにとって正しいことをしてくれていると思って、ママの手を強く握っているのね」とサシャにやさしい言葉をかけた。

性別違和は異常ではないとわかっていても、母親は弱気になっていた。
娘が好奇の目で見られるのを嫌って、母親は「女の子の服を積極的に着せていいですか」と聞いてしまう。「子供の気持ちに沿ってあげましょう。大人が決めつけることではない」と忠告される。


8才になる頃には、体毛、喉仏、生殖器などの二次性徴を抑えるために、ホルモン治療が必要になる。

「治療を始めると、精子が成熟しない。将来はやっぱり子供がほしいと思ったときには、治療を即座に中止する必要がある」。「成熟した精子を作れない後遺症は
覚悟する。それでも、生物学的な親になりたい場合は、未成熟な精子を体外で育てる。あるいは、養子を迎え入れる」など、内分泌医からていねいな説明があった。

息子が娘になる治療が始まる
サシャにはわからないところもあった

親が傷つきそうな話を、サシャは避けていたのを親はわかっていた。
「差別されたら、怒る権利はあるのよ」とサシャに言っても、黙っていた。

兄は「サシャのことを、体は男の子だけど、心が女の子と言って、友達に紹介したらわかってくれた」とうれしそうに親に報告した。

そんな日々を過去のことにしようと、サシャは治療薬を飲んだ。

治療薬のニガさは、つらくないと思った

自分に正直に生きることの辛さを、サシャの家族も感じていた。
「お母さんたちをどう思う?」と長男に聞いた。
「やられっぱなしは、ダメだよ」と冷たい。
「そうか、ダメだよね」母は力なく言った。
「頑張っているよ」身びいきの励ましが、母親には痛くて、うれしかった。


⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
・誰にも迷惑をかけず、ありのままに生きたいと願うことが、困難であってはならないと、映画は語りかけていました

・映画の持つ説得力や共感は、ドキュメンタリーの力とともに、家族の生きざまも大いにあったと思いました

・思春期ではなく、トランスジェンダーの意識が芽生える幼少期の家族に寄り添ったドキュメンタリー監督セバスチャン・リフシッツの眼力に敬意を感じました

・「娘が暴力を受けるかも知れない。いつ敵が現れるかという恐怖と、今も戦っている」「みんなの意識を高めるために、この映画に協力した」という母親の結びの言葉が印象的でした

・コロナ禍で、フランスのテレビ局で放映され、2020年の最高視聴率を記録したのもうなずけます

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