失恋は台所ゴミのように捨てる。そうよ、わたしはアラフィフの女

今のアメリカは、セックスレスの恋愛倦怠期だとTime誌が報じている。若者は
マッチングアプリからも離れ、恋愛映画には見向きもしなくなったとNewYork Times紙も同じ論調だ。2023年の大ヒット映画「バービー」では、結ばれない
二人に拍手した。

アメリカのマッチング・アプリ

しかし、こんな風潮どこ吹く風の南米チリ。特に、アラフィフ女性の鼻息は荒い。

５８才の女性を描いたラブバラード。チリの映画「グロリアの青春Gloria(2013)」には、気持ちいい風が好き抜けていた。

この映画の撮影は、ストーリに関係なく、いきなりセックスシーンから始まった。主演女優を肉食系の女性にする心理操作だった。

アラフィフ女性の相手もアラフィフ。恋をしても遊んでいる時間はない。
果肉に、むしゃぶりつく。１０代の恋よりも打算的で、寄り道はしない。

外見は味方してくれない

「朝は、不機嫌、昼は夕方のように暗い気分になる」と、冷えた身体を訴える。
男との距離をはやく縮めたいと女は願う。今朝は、あなたのキスなしでは生きられないと、ラブバラードを歌いながら、脚の毛を剃っていたことを男は知らない。

アラフィフ男も詩を贈る。
「君が冷たい首筋をしていたら、私は暖かいマフラーに
君が音楽なら、私は耳に
君が海なら、私は渚に
君がジャムなら、私は桃に」
甘い詩を読み聞かせ、吐息が女の首筋を愛撫する。

しかし、アラフィフ。あらゆるしがらみが、蔦のようにからみ合っている。

デートの最中でも、男の元妻からは、娘の養育費を早く振り込めという催促の電話がある。別れて1年、まだ家族と同居しているようだ。
バンジージャンプと、カラー弾丸を射撃する戦争ゲームが売りの、不人気な遊園地。とは言え、経営者だ。
近いうちに、男は胃のバイパス手術を受けると言う。

女は10年前に離婚し、二人の子供は、娘は父親、息子は母親が引き取った。

娘は妊娠４ヶ月だったが、父親には話していない。娘の交際相手は、スエーデン人。だからスエーデンに移住すると言う。職業を聞くと「世界の山に登って、
スキーで降りてくるようなことをやっている」。そんな職業が成立するのか。
女は、娘の恋人についてそれ以上聞く気にもなれなかった。

その若者は娘と結婚する気はないようだ。娘は移住先でバイト生活をする。
病気で倒れたらおしまい。こんなリスクをおかしてでも、嫌っている父親から、
とにかく１秒でも早く離れたかった。

その日、母親が空港まで娘をクルマで送っていった。しかし、娘は、母親がロビーで見送ることを猛烈に拒否した。一人で旅立つ自分を、母親一人が見送るわびしさに耐えられなかったのだろうか。母親が息子を選んで、娘を選ばなかった無念な母親を許していなかったのか。

いったん、見送りを諦めた母親は引き返し、娘が見えるロビーに走った。
そして、立ち止まった。娘の後ろ姿を見て、涙があふれた。

女は緑内障が始まっていると眼科医に告げられた。今後は、年に１度の定期検診と
聞いて、心配することをやめた。

彼女の息子の誕生パーティに、男をパートナーとして元・家族に紹介。
しかし、男は、会話の輪に入れず、トイレに行くふりをしてパーティから逃げた。

元・夫と結婚式の写真を家族に見せる

男がいなくなったことに気がつき、わたしに恥をかかせたと、女は激怒。
男の子供じみた態度は、ふたりの時間を無駄にする。その後の男の電話を無視しまくった。

数日後、女は、男のしつこい電話をとってやった。
「気分直しに、ホテルに部屋を予約した」らしいので、会うことにした。

ところが、ホテルで事件。元・妻が歩いていて、ガラス扉にぶち当たったという
電話連絡が娘からあった。男は、すぐ帰りたいと言う。

女は、腹にあった考えをぶちまけた「家族があなたに依存したままだと、家族もあなたも不幸になる」と言った。しかし、男は納得していないようだった。

女はここが勝負どきだと思った。女は、立ち上がってスカートを脱いだ。
そして、男を床に押し倒し、馬乗りになってセックスをした。男の頭の中から家族を消し去りたいと思った。

動揺していた男は落ち着き、ホテルのレストランで食事をした。女は男の携帯を
スープの中に落とした。家族と連絡が取れない。男はすぐに拾い上げ、ナプキンで携帯を拭いた。

女は、萎えた。男が小さく思えた。
女はバーに行き、見知らぬ男たちと浴びるほど酒を飲み、翌朝ビーチで目覚めた。

ホテルに帰ったが、男は、パーティと同じようにホテルでも遁走していた。

女は、クルマで男の家に向かった。男がクルマに置いていた戦争ゲームの銃を取り出して撃った。

ペンキ銃で射撃する

数発のペンキ丸を男に射撃した

「失いたくないものが男にはあるんだ」と言う男にあわれみを感じた。

失恋はアラフィフを大きくする

バーで音楽が流れていた
♪気づいたら君の名前を呼んでいる　
グロリア　君と生きていきたい
君がいれば明るい朝が来るから♪

たった９文字の言葉を聞きたいために、彼女は生きている。

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
・アラフィフの女性は、男遊びをしている時間はない。
　恋愛は、ままごとではない。
　♪私の電話番号を捨てて、あなたは私の最後の男じゃないと
　強気に言ってみる。
　君は笑顔が溢れる大地だ。
　明日が君を待っている。
　人々が寝静まる夜、君を思い出す♪
　そんな歌声に乗って、アラフィフ女性を賛美したくなる映画です。

・主演のポウリナ・ガルシアは、ベルリン国際映画賞の主演女優賞を獲得。
　その他、多くの映画賞でも評価された。
　

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