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サンタさん、デザイナーに世界を変える力をください。

メリークリスマス!

この記事はGoodpatch Anywhereアドベントカレンダーの最終日の記事です。この記事はほぼほぼが年末テンションのポエムとなっておりますので、UXデザインについての記事が読みたい方は前回の記事も合わせてご覧くださいませ。

そもそもAnywhereってなんぞやという方はこちらをどうぞ。

さて、年末の内部イベントでAnywhereの一年を振り返りましたが、やはり今年はコロナによって色んな意味でめちゃくちゃになっていた年だなと、「みんなよく乗り切ってくれたよ…!」と涙なしでは語れない結果となりました。

普段は新規事業をお手伝いすることが多い弊社ですが、コロナ第一波によって企業における新規事業の動きがほとんどストップしてしまった状況で、広告業界ほどではないにせよ、それなりに苦しい戦いを強いられていました(このあたりは決算を見ていただければ一目瞭然ですね。IRが公開されてしまう上場、怖い…。)。進行中のプロジェクトはリモートでも全く問題なく進行できていたため、プロジェクト継続能力の高さは証明されたのですが…、あるメンバーとは「この時期は週5で泣いてたよね…」と振り返るくらい、今まで思い描いていたことと全然違うことに全力以上で打ち込まなければいけない状況をなんとか耐えている状況でした。不安定で不確実な状況に、現場のプロジェクトを支えてくれていたメンバーには本当に頭が上がりません。

そんな苦しい中でも、先行してリモートワークに打ち込んでいた企業として、知見を提供しなければ!と考え、「リモートコミュニケーションマニュアル」をはじめとした記事をみんなでたくさん書きました。気がつけばAnywhere関連で82本の記事が溜まっています…。

また、デザイン界隈でもリアルでの勉強会ができなくなってしまった状況をなんとかしたいと、狂ったように勉強会イベントを開催していたりしました。ここ一年で30件以上のイベントを開催し5月は週2−3件のイベントを開催!!のべ4000名近くの方に参加していただけました。Adobeさん、サイバーエージェントさん、日本デザインセンターさんBCGデジタルベンチャーズさんなどと合同勉強会を外部に開放すると言う立てつけでご協力いただきました。全てを列挙することはできませんが、ご協力いただいた企業の方々、本当にありがとうございました。

また、Code for Japanさんの呼びかけに応じて、「まもりあいJAPAN」プロジェクトにUI/UX領域でご支援させていただきました。紆余曲折あり、僕らの作ったアプリが世の中に出ることは残念ながら叶いませんでしたが、関さんをはじめとした、行政・テック・プロダクト・医療領域のスペシャリストの方々と肩を並べて一つのプロジェクトに取り組めたことは僕らにとって非常に得難い経験となりましたし、Anywhereのデザインやコミュニケーションの設計はここでも通用するんだという自信にもなりました。当時のアプリやデザインについては様々な情報公開をしておりますので、興味のある方はご覧いただければと思います。とても良いアプリになりそうだったので、リリースできなかったことが本当に悔やまれます…。

そんな非常に厳しい状況でしたが、もちろん通常のプロジェクトも遂行しながら、様々なことに歯を食いしばって取り組んで来たことで、東証マザーズ上場という目標を無事に達成することができました。各社軒並みIPOを控えている状況の中でそれでも上場するんだ、と意思を固めてやり切ったコーポレートチームは本当にすごいです。そんなこんなで、Anywhereのみんなを含めたGoodpatch全員の頑張りがあったからこそ、DXやデジタル庁など、デジタル・デザイン関係の動きがかつてなく激しい今この瞬間を「上場しているデザイン会社」として迎えることができました。僕たちが世の中に貢献していけるチャンスが大きく広がりました。

さて、辛い状況を振り返ってばかりでも暗くなるばかりですので、そろそろ話題を転換します。そんな大変な一年でもみえてきた明るい兆しの話をしたいのです。

Anywhereバックオフィス大進化

今回は深く触れませんが、Anywhereは「有期間の時間給雇用」という非常に特殊な雇用システムをとっています。経理や労務についても、今までのGoodpatchのシステムが使えない部分も多く、Anywhere独自で作り上げてきました。今年は頼もしいメンバーがジョインしてくれ、「Salesforceと接続された売上管理システム」や「見積もり〜アサインを補助するシステム」「みんなの適切な稼働情報をそのプロジェクトに伝えるための工数管理システム」などを構築することができ、Anywhereの特殊な業務がどんどん効率化されていきました。「週次の振り返り会の前に発射されるアンケートシステム」なども自動化されています。そして、なんでもシステム化するわけではなく、適度なバランスで、それをしっかり運用してくれる人がちゃんと存在しているから、素早い進化が可能になっているのです。その結果、立ち上げからまもない、非常に特殊な形態の組織にもかかわらず六月の上場に向けた監査も問題なくパスすることができました。これは、本当にすごいことだと思っています。いつもはあまり目立たないところで活動している3人のメンバー、サポートしてくれている渋谷のメンバーには本当に感謝しています。本当にありがとう。

まだ設立から2年しか経っていないですが、僕らのバックオフィスシステムは、普通の会社よりも全然高度なものができているし、普通の(特に制作の!!)会社が守れていないような労務的課題にも適法に向かい合える状況にたどり着けていると感じています。

適材適所の可能性

バックオフィスのみならずAnywhereでは本当に、良い適材適所が実現できています。前述の雇用システムによって、フリーランスや経営者、会社員として普段働いているメンバーの力をAnywhereに貸してもらうことができる体制が整っているのです。

情シスには渋谷のメンバーと協力して、Jamfの中の人として河野さんにお手伝いいただいています。Jamfは僕らには欠かせないMacの管理ツールとしては最先端かつ最高のプロダクトだと思っているのでこれ以上ない心強さです。採用面では「Anywhereのことを理解している+スタートアップのこともわかる+採用のプロ」として手伝ってくれる鈴木さんがいます。

プロジェクトでStudioを使ってサイトを作ろう!となった時にはStudioの中の人として菅原さんがプロジェクトに入ってくれました。技術的にできるのかできないのか、他に実現する方法はないのかなど、中の人に直接聞ける状態の贅沢さよ…!まだ事例公開できないけど是非見せていきたい!!

このように、難易度の高いUXプロジェクトはこの人に、構造的なUIならこの人に、スピード重視ならこの人に、戦略ならこの人に、行政はこの人に、医療はこの人に、宇宙にはこの人に、ノーコードにはこの人に、ローカルなものはこの人に、などなど特殊な領域に直面したときに手伝ってもらえる人がAnywhereにはたくさんいます。

こういったメンバーが投入されたプロジェクトは本当に楽しくて、良いものを生み出せるプロジェクトになっている実感があり、Anywhereならではのデザインが作れているなぁと感じています。「ある仕事をするのにあたって一番適した人を連れてくる」という、当たり前に思えることをちゃんと実現できる、これがAnywhereがもっと面白くなっていく可能性だと思っています。Anywhereにプロジェクトを頼んだら勝手にオープンイノベーションプロジェクトになっているような感覚すらあります。

コラボレーションのOS

そして、2年目のAnywhereを通して僕らの強みがさらに明確になってきたなと感じることがあります。それは、コラボレーションのOSともいうべき僕らの遠隔密着で共創型のプロジェクトスタイルです。当初からAnywhereのプロジェクトは「超難易度の高いVUCAの時代にまともなものを作るため」に、「異なる専門性を持ったメンバーが心理的安全性の担保されたチームを創り上げ高速で学習していく状態を作り、リアルタイムにコラボレーションをしていく姿」を理想としてきました(長いよ…)。最近は遠隔密着コミュニケーションと言っていますが、本当に「離れていても密着感のあるコミュニケーション」を実現できていると感じています。リモートは人間を感じられないって言ったのは誰よ。

Anywhereのプロジェクトが始まった時点では、正直な話、ほぼ全てのパートナー(クライアント)は「本当に大丈夫かな?」「しっかりコミュニケーションしていきましょうとか誰でもいうしなぁ」と半信半疑でスタートしていると思います。しかし、プロジェクトが進行するにつれて、僕らのスタイルをみなさんちゃんと理解してくれます。最初とは人が変わったんじゃないかと思うほどコミュニケーションが変化するパートナーの担当者がいたり、プロジェクトが終わる時にはみんなで寂しくて泣きたくなってしまうようなシーンが普通に存在しています。ちなみに、Anywhereで受けているプロジェクトの追加継続率は非常に高く、こういったところからもパートナーとの信頼関係の構築能力が組織全体として高いことがわかるかと思います。

この過程で、「週次定例MTGで、このデザインを、デザインのわからないクライアントに、どうYESと言ってもらおうか」などと考えてしまいがちな、「制作会社的な下請けマインド」は完全に過去のものとなり、「クライアントとパートナーとして対等に付き合い、一つのチームを構成して、本当のユーザーを向いたデザイン活動」が実現できつつあります。こうなってくるとOOUIなどのUIデザイン手法や、本質的なUXデザインやリサーチを行っていく土台が整ってきます。ひとつひとつの手法は銀の弾丸ではなく、しっかりしたチームの土台に乗せるからこそ威力を発揮できるのです。

僕たちは、問い合わせ後の案件化する前のヒアリングや、プロジェクト開始時のキックオフワークショップ、日々のチームの振り返り、はたまたメンバーの採用面談からこうした意識を作り上げていく組織になっています。これは、一朝一夕にできることではなく、Anywhereメンバーひとりひとりのマインドが実現していることなので、僕はメンバーのことを本当に誇らしく思えるのです。

このように、「今の時代にあったデザインの考え方」を持ちながら「ちょっと変わった会社や雇用のシステム」によって「多様な人材が多く在籍」していて「みんなの力を最大限発揮するためのコラボレーションのOS」を持っている。だからAnywhereは非常に面白いのです。

そして、このAnywhereのスタイルで何をしていきたいかと考えています。

ブラックに見られがちなデザイン業界

まずは、「クリエイティブの過酷な現場」だけではない世界を作りたい。どうしても「クリエイティブ=ブラック」という認識がついてしまっているので、デザイナーは若くて体力のある人しか選べない職種と思われがちです。職人的な世界など、クオリティの追求の仕方にはいろいろなスタイルがあっていいと思いますが、今は、あまりにも制約がキツすぎると感じています。子供が小さいから、ジェンダーの問題が、持病が、家族が、地方に住んでいるから、などと人の抱える事情は様々です。「デザインはそんなに甘い世界じゃない」と言う気持ちもわかりますが、ベースの人口がこんなに少ない日本においてさらに希少な「デザイナー(もの作りをする全ての人を含んでいると思っています)」を、それで切り捨ててしまっていいのでしょうか。デザインの仕事の重要性に比べて、従事人口が少なく、デザイナーの地位が向上していない世界になっていることに僕は課題感を感じています。正直、UIデザインやUXデザイン人材は完全な売り手市場で、多少のスキルがあれば、転職も独立も、小規模なプロダクションを作ることもそんなに難しいことではありません。でも、ただその状況に甘んじてしまうのは産業としてのデザインを狭めてしまっているように思えてなりません。

そのためにAnywhereでは、サービス残業によって成り立っているブラック制作会社的な経営手法ではない道を見つけたいのです。今のAnywhereでは毎日の稼働状況をメンバーに報告してもらい、週次でプロジェクトメンバーの稼働状況をレポートし、必要であればクライアントとも共有します(ワンチームなので)。業界的な慣習や組織構造の歪みを、個人に負担させることがあってはならないと考えています。デザイナー個人の能力が足りないから、徹夜をしないといけないような世界は、法律やビジネス効率を考えても「おかしい」のです。普通に会社に所属している時には希薄になりがちな意識(そしてそれを美徳としやすいデザインの現場の空気)を今一度見直さないと、今後のサスティナブルな発展はないと考えています。

そして、その「サービス残業」の目的が「クオリティを高める・良いものを作る純粋な努力」ならまだ良いのですが(よくはない)、「クライアントとのコミュニケーションがうまくできていないことによる仕事」になってしまってはないでしょうか。「ちょっとここどうなってます?」「これってどう考えてます?」という一言が聞けないが故に無駄にしてしまった一週間って誰もが経験したことがあるのではないでしょうか。そもそも、「世の中に問うて見なければそれが正しいのかを評価することすら難しい現代」において、「クライアントの考えている今の正解を当てにいく作業」に使っている時間なんてないはずです。ちゃんとコミュニケーションしていれば防げたすれ違いをゼロにすることはできなくとも、もっと減らしていくことはできるのでは?そのヒントが僕らのコミュニケーションOSの中にあるのではないか?と考えています。

「はいはい、DXDX」という前に

そして、ここまで話してきたような「デジタルサービスをデザインできる」デザイナーが増えないと今後のデザイン需要はとてもじゃないけれど支えきれません。昨今のビジネス界はどこを向いてもDX、DXですが、そもそも国がDXしないとやばいぞ!と思ったのは、IT化の遅れている企業をなんとかしないと経済がやばいぞ!と国が思ったことが発端だと認識しています。お金の匂いのするバズワードを毛嫌いする気持ちはわかりますが、日本の経済を良くしようと思ったその危機感まで否定することはないと思います。

…少々、脱線しましたが、これからのDX需要はほとんどデザインに対する要望だと認識するようにしています。DXレポートを読んでも「ブラックボックス化を避けて正しいシステムを作ろう」「ちゃんとユーザーが使ってくれるシステムを作ろう」と言っているわけで、これはソフトウェアデザインに求められることそのものです。これまでの世界で、システムやビジネスのアプローチでうまくいった部分もあるとは思いますが、それでも社会にデジタルの価値を届けられなかったのはデザイン的視点が足りなかった可能性と捉えることができるのではないでしょうか。「デジタルサービスを作るためのデザインの考え方」は間違いなく、社会に必要とされています。

だから、その価値をちゃんと証明したい。デザインの価値を証明したいのです。

夢を見るのがデザイナーの仕事なので

最近は、Anywhereが到達できそうな未来として、例えばこんなストーリーを妄想しています。

秘境と言われるような村に、平均年収1000万を超えるデザイナーが10人くらい住んでいて、遠隔地であっても最先端の大きな仕事をしています。たまに、地元の高校生とかにデザインを教えて、「この村にいてもこんなすごい仕事ができるんだよ。」「お仕事って神経をすり潰される仕事ばっかりじゃないんだよ。」「デザインだけではなく、世の中にはこんなに選択肢が溢れているんだよ」と言うことを伝えている、そんな未来です。

実際にAnywhereのメンバーが住んでいる十津川村を尋ねて、より一層このストーリーを実現したいと思うようになりました。これはただ単にスローライフに憧れるマインドで言っているのではなく、経済的な合理性もあるのだと確信できるのです。

今までAnywhereをみんなで作ってきた経験から、このストーリーが荒唐無稽なものだとは思っていません。十分成立可能なものだと信じています。デザイン業界の課題、日本のデジタル化の課題、地方の課題、その全てをAnywhereが解決できるとは思わないですが、みんなの力を結集すれば、可能性は無限大だと思っています。知ってます?コンピューターってそのために作られたんですよ!!!

ということで、まだまだ、規模も小さいですし、至らない部分も多いですし、発展途上な僕たちですが、誰も置いていくことのないインクルーシブな未来をつくれる可能性を手にしていると信じて、来年もAnywhereのみんなと一緒に走って行きたいなと思っています。

何も!!成していない状態で!!理想を!!掲げるのは!!心が!!非常に辛い!!のですが、「サンタの心を受け継いで、これからは君たちがサンタになるんだよ。子供たちの夢を叶えさせてあげる立場にドンと座るんだよ。」と、嶋本先生も言っておられるので、そうなれるように頑張っていきたいと思います。ドリームラッシュ!

結びとなりますが、Anywhereはデザインの力を証明したいと思ったり思わなかったりする全ての人に開かれています。フリーランスや副業といった形で関わることで、みんながパラレルな成長をできる環境になれればと思っていますのでご興味のある方、以下のリンクから是非ご応募ください。お話ししましょう。


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