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【読書感想文】いろいろな表情の神様に出会える写真集(1031字)

『じいちゃんさま』は梅佳代さんによる写真集です。読み終わった後もときどきページを捲って、笑ったり、じーんと感動したりして良い写真集に出会えたと喜んでいます。

1月1日の地震で大きな被害を受けた能登半島で撮影されたことを考えると、悲しみで胸が締め付けられます。こんな幸せそうな家族は、他にもたくさんあったでしょう。でも、地震によって大きな痛手を負うことになったかもしれません。そのことを考えると、この写真集は一層貴重なものに思えてきます。

表紙に写っている年配の男性がこの写真集の主人公です。梅さんの祖父の梅勝二さんです。帯に「長く生きている人は神様に見えます」と書いてあるのですが、その通りで、柔和な表情の勝二さんの写真を見ていると心が和みます。私の2人の祖父は生まれる前に亡くなっていたので、こんなじいちゃんがいたら良かったのに、と思うこともありました。

勝二さんはひょうきんな方でもあり、招き猫の隣でご自分も招き猫の格好をされている写真などは、本当に可笑しいです。蚊取り線香をお顔の前にかざしている写真や、お孫さんが支えている一輪車に乗られている写真など可笑しい写真は結構あります。神様も四六時中おごそかな顔をしているのは大変なので、おふざけになることもあるのでしょう。

神様の勝二さんが、一番幸せそうなのは、お孫さんと写っている写真です。お孫さんに後ろから抱きつかれている写真もあって、二人とも満面の笑顔で本当に嬉しそうです。座椅子に座っている時に、お孫さんからキックされている写真もあります。

普通だったら、怒られそうな状況ですが、この時も勝二さんは笑顔です。こんな風に嬉しそうな顔を見ていると、母方の祖母のことを思い出しました。私を可愛がってくれて、家に行くといろいろ世話を焼いてくれました。お彼岸の時に作ってくれた、食べ切れないほど大きなおはぎのことを思い出します。

この写真集に出てくるのは、特別なことではありません。お年寄りの普通の生活と家族の団欒です。それがこんなに胸を打つのは、作者のお手柄でしょう。普通の生活の中にあるかけがえのない輝きを見つけて、それを写真として切り取ったのです。さらにこの写真集を見ていると、特別なことは起こらない普通の生活が、どれほど貴重で素晴らしいものか分かってきます。

言い換えれば、神様である勝二さんがそのことを教えて下さるのです。平凡な毎日をつまらなく感じることもありますが、その中にある恵みを忘れてはいけないと思いました。



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