脚本「こどもの日(2020/5/5の淀川河口「西す」道路の話)」（シーン１／６）

2020年5月31日 19:31

脚本「こどもの日(2020/5/5の淀川河口「西す」道路の話)」です。全部でシーン6まであります。
シーン2は2020/6/3(水)の夜にアップします。ぜひシーン2もご覧下さい。
6/14追記：結局シーン８まで増えました。

シーン1　計画と実行
2020年5月2日(土)23:00、西淀川区百島、淀川製鋼所工場前の「西す」道路にて。
製鋼所には光があるが、｢西す｣道路は街灯が無くて暗い。

20代くらいの男が二人いる。

男1 おい、そっちちゃんと持ったか。
男2 大丈夫だからはよ
男1 いくで
男1が金網を切り落とす。男2がそれを受け止めて、ゆっくり地面に置く
男1 こっちや
男2 まずこれやな
男1 持ってこ
男2 重っ
男1 はよ
男2 うっわ、どうする
男1 持たれへんの
男2 エグいで
男1 こっち持つし
男2 待って
男1 いくで

二人は、製鋼所から「西す」道路そばの倉庫に鉄の棒を運ぼうとする

男2 おっもー
男1 弱すぎ
男2 無理やろあんなん
男1 弱すぎ
男2 弱ない
男1 これどないするん
男2 割って、裂いて、その後削んねん
男1 何しとったらいい？
男2 待っといて
男1 暇やわ
男2 知らんわ
男1 何かやることないん
男2 あー、じゃあ金網元に戻しといてや
男1 どうしたらいいん
男2 溶接やわ。やったことある？
男1 えー、出来んよ
男2 冗談やて
男1 おもんない、はよ教えてや
男2 これでまず固定すんねん(紐のようなものを見せる)、そのときギリギリまで元の位置にせなあかん。それで次にこれで接着する。瞬間接着やけど、五分くらい待っといてな。そのあと、これで上から色を塗る。塗るのは金網全体や。一部だけ塗ったらバレるからな。
男1 元通りにしたらええんやな。やっとくわ。
男2 出来たらまた言うてな
男1 やってくるわ
男2 腕パンパンやー
男1 知らんわ
男2 上手くいかんかったらまた言ってな
男1 大丈夫やて

男1は退場する

男2 暗いと精密作業出来んよなあ･･･いっそのこと昼にやるか･･･

男1戻ってくる

男1 これ見て！原動機付きの照明。ガソリン入ってるみたいやから、使えるんちゃう
男2 おおー、いいやんいいやん･･･結構音鳴るな
男1 ええって。ここらへん周りもうるさいから何とかなるって。
男2 まあそっか。時間ないしな
男1 他なに要る？
男2 使えそうなもんとりあえず持ってきて
男1 それじゃわからんて
男2 えっとなあ･･･とりあえずは鉄の棒やわ、次に「アセチレン」とか「酸素」って書いてあるボンベ。バーナーは、俺が調達するわ。あと、強い布。なるべく強い布がいい。大きければ大きいほどいい。ミシンは俺が探す。工場には置いてへんやろ。
男1 それだけでええんか？
男2 大きい机、定規とか。あとは何とかする。
男1 ガソリンは？
男2 どないしょか。買ってもええけどな。危ないし。
男1 もう危ない橋渡ってるやんか
男2 ちゃうねん、ちょっと扱い間違えると爆発すんねん。即死や。夢の前に即死や。
男1 金ないやん。レジ通らへん。
男2 誰か脅してきたらいいやん
男1 いやや、面倒くさい
男2 あとで考えよか
男1 エンジンとかどうするん？
男2 そこらへんにモーターボートあるやん

男1 あれから取るん？
男2 ええねん。今わざわざモーターボート使おうとする奴なんかおれへん。キレーにバラして、エンジン部分だけ貰おうか。
男1 ええけど、それで飛べるんか？所詮モーターボートやん。
男2 16気筒やから。モーターボートのエンジンを同時に16個制御すんねん。あとは気合いや。
男1 気合いのパワーやったらもう飛んでるのと変わらんやん。完璧やわ。
男2 イェイェ
男1 フワフワ
男2 設計図とりあえず書かな。頑張ろ
男1 もうできてんねやろ
男2 元のやつは俺が作ったわけちゃうけどな。俺はちょこちょこ書き換えただけ
男1 別にええやん
男2 ええねんけどな
男1 なんやねん
男2 それで、あとは･･･なんや、人手欲しいけどな。
男1 何人くらい？
男2 バレるのも嫌やし、2、3人ってところやな。出来れば機械強くて力仕事出来るやつ。
男1 要る？
男2 おった方がええな。何かと助かるわ。
男1 誰か呼べそうなやつおらんの？
男2 おらん。
男1 かなしー
男2 お前は？
男1 やりたがる奴はおらんよ。
男2 誰も呼ばれへんやん。
男1 じゃあ諦めよ。この世界は2人しかいないんや。俺とお前。他はみな死んだ。世紀末やねん。
男2 死んでへん。そこの工場は動いてるし、町には人がいる。
男1 マスクをして表情がわからんミイラの群れやないか。死んだのも同然や。これから人とあわれへん、移動できひん、どないして生きてくねん。
男2 これまでも同じやないか。町中を歩く人間なんか誰も顔死んでるわ。ニコニコして歩くやつなんかおれへん。
男1 これまではちゃうかったんや。その証拠に俺らは使命を負ってた。
男2 命令にハイ言うてやるだけやったないか。
男1 ちゃうし。皆を守ってたんや。考えてみろ。何のためにほふく前進してたんや。皆を守るためやろ。
男2 そこまでは考えてない。やれ言われてやってた。
男1 とにかくな、今はもう世紀末なんや。
男2 まだコロナがどうなるか誰もわからんのに、気早すぎるやろ。あと80年あるで世紀末まで。
男1 だから、こんな悪いことでも、躊躇いなく出来る。今までの俺やったら考えられへん。
男2 しらんわ
男1 だから俺は空に飛ぶ。これまでもやってたことや。これからは自分の人生に覚悟と決意を持って生きていく。それも自分の力で。
男2 それは泥棒やってる奴の言うことか？
男1 泥棒ちゃう。自分の道を切り開くんや。必要やった。
男2 その発言はその手にある金網を何とかしてから言ったほうがええやろな。
男1 あっ。直してくるわ。
男2 ･･･今日それで焼肉やろか
男1 最高やん焼肉食いたい
男2 肉買いに行こうや
男1 どこ行くん
男2 どこでもええし。いこか。
男1 今ってスーパー深夜に空いてへんのちゃう？
男2 スーパーは空いてへんかもな。俺らは誰かに与えてもらうことを待って餓死するヒヨコとはちゃう。とにかく行くねん。肉が手に入る所へ。
男1 フナムシって食べれるんかな？
男2 食べたらいいやん。
男1 いやや
男2 タダやで
男1 お前食ったらいいやん
男2 いややわ。スーパーいこ。運転する方じゃんけんで負けた方な。
男1 グーな。男はグー
男2 いくで
男1 せーので
男2 あー、嘘つくなや
男1 お前運転な

船が走るような、波を切る音が遠くから聞こえる。この速さはモーターボートだ。「西す」道路は淀川北岸なので、恐らく南岸沿いに川を遡上している船の音だろうか。

男2 船やん
男1 こんな時間にも船走ってるんやな
男2 あれ何か知ってる？
男1 しってんの？
男2 あれな、プッシャーやねん
男1 プッシャー？
男2 麻薬の売人や
男1 プッシャーって言うんやな
男2 北朝鮮のチョンジンからな、直接関門海峡を渡って大阪に来てんねん。高槻とか、伏見辺りで半グレに売って、とんぼ返りでまた北朝鮮や。メキシコのコカインがキューバに行って、キューバから北朝鮮に空輸されてるらしいわ。密輸やけど。でも、飛行機も当分飛ばんからな。売人も商売が大変やろな。
男1 なんやその情報。またいつものパチこいとんか。
男2 半グレ情報
男1 なんやそれ。お前、半グレと関わりあるんか
男2 ない
男1 ないやろ。なんで知ってんねん
男2 半グレ情報
男1 アカン、会話にならんがな。はよ運転して
バンの出発する音

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか？