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自分とメガネ生活

メガネをかけて生活するようになったのは、高校2年生の時からで、わりとメガネデビューは遅めです。

子供の頃はむしろかなり目が良く、毎日10時間ポケモンのゲットに勤しんでいたにもかかわらず、視力1.5以上をキープしていました。

しかし、いつまでも発売されない金・銀バージョンを待ちきれず、ひゃくごじゅういちのヨロコビとユメをあっさりと捨てて、オーキド博士の教えを裏切った途端に、どういうわけだか劇的に視力が低下。

ゲームをやると目が悪くなるという定説を覆し、ゲームをやめた途端に目が悪くなってしまいました。

それでも高校に入学した当初は、銀色の背景に真っ白な小さな文字が浮かび、非常に眩しくて読みづらいLUNA SEAの『SHINE』の歌詞カードが余裕で読めるくらいだったのですが、だんだん読みづらくなり、1曲めの『Time Has Come』の歌詞のごとく、「新しい時が始まろうとしている」のを感じたので、メガネをかけて暮らすことにしました。

サトシになることは諦めたので、のび太やコナンに近づこうと。

というわけで、ポケモンをゲットどころか、ゲームボーイを入手するよりも遥か前から存在だけは知っていた、小1の頃から通っていたスイミングスクールへと続く道沿いにあるメガネ店へと突入。

ここは当時の時点で創業50年だか60年だかという老舗で、おふたりで経営していらっしゃる地元密着のお店。店員さんはおふたりとも、『ちびまる子ちゃん』の花輪くんの執事のヒデじいのような、上品な出で立ちのおじいさんでした。

言葉遣いも非常に丁寧で、メガネ童貞の自分に詳しくわかりやすく、敬語でメガネのことを教えてくださったのですが、高校生にもなって、「おぼっちゃま」と呼ばれるのはムズ痒すぎた。

この時期はまだちょっと反抗期が残っていたので、おじいさんに悪気がないのはわかってはいるものの、内心では、頼むからやめてくれと思いつつも、その数年後に閉業されるまで、お世話になり続けました。

閉業される少し前に訪れた時はもう「おぼっちゃま」とは呼ばれず、「お殿方」と呼ばれました。これはこれでムズ痒いですが、「お殿方」と呼ばれたところは後にも先にもここだけ。ちなみに、閉業のお知らせの貼り紙などは自分が見た限り特にはなく、本当にひっそりとお店を閉じられてしまいました。

その後、童貞の頃におじいさんに手取り足取り教えられて購入したメガネにも、とうとう寿命がやってきてしまい、今度は某全国メガネチェーン店に突入したのですが、あのおふたりのヒデじいが経営されていたメガネ店とは、明らかに雰囲気が違うことに気づきました。

まず、店内にメガネと関係のないオシャレな虎だか豹だかの置き物があるのです。うちはメガネ以外のものは時計くらいしか置かねえ、という硬派だったヒデじいメガネ店には、こういったものはなかった。

そして、壁もなんだか洞窟のような色合いになっている。ヒデじいメガネ店は、経年劣化もあってか、少し朽ちた部分もあるふつうの白い壁で、無機質な感じでした。

どちらが良いという話ではないのですが、これが、個人経営店とチェーン店との違いなのかと。

そして、チェーン店の人は、やたらと営業をかけてくる。ヒデじいメガネ店はメガネをひとつ欲しいと言ったらひとつしか紹介されなかったが、チェーン店だと、予備のメガネやら、サングラスやら、洗浄スプレーやらをやたらと紹介される。

売れれば店員さんの点数になるから……、ということで、たぶんノルマやら成績順位やらもあるのでしょう。しかし、メガネは自分にとっては高額な商品。ダイソーの10万円たまる貯金箱みたいにノリで買えるものではない。ところで、10万円たまる貯金箱って今やもうダイソーでしか見かけなくなったな。

結局はその某メガネチェーン店には行かなくなり、最新のメガネを購入した去年は、別の中堅クラスくらいのチェーン店に突入しました。ここもまあ、営業をかけてくることはかけてくるのですが、「よくお出かけにはなりますか?」「Amazonプライムで何を視聴されますか?」などと雑談を交えてくる。

よくお出かけにはなるのでそう答え、「インターネットはよく見られますか?」「SNSなどはされますか?」の問いには、当然ながらnoteでサブカルくさい日記を書いているなどとは言わず、本当はインターネット中年なのにインターネットをそれなりに嗜むアウトドア派30代男性のふりをして「Xに旅行の写真を少々……」などと嘯く。まあ嘘ではない。ほとんどが銭湯の玄関口の写真だが。

それならこのメガネですよ、と、インターネットをそれなりに嗜むアウトドア派30代男性に向けた商品を紹介されました。鯖江で作られたメガネらしい。鯖江というのは福井県らしい。福井県はメガネの名産地であるということを、アウトドア派30代男性に擬態した私は初めてそこで知った。

そこから福井県の話になっていったのですが、メガネどうこうはともかく、ふつうに福井県に行きたくなってきた。その流れでアウトドア派にはサングラスという説明を受け、鯖江のサングラスも購入することに。

度のついたサングラスは初めてだったのですが、結果的にこれが大正解で、間違いなく2023年度のベストバイ。後に福井県(鯖江ではなかったが)を訪れた際も、ずっとこの鯖江グラサンを掛けていました。

グラサン外出の何がいいのかについては別の機会にまた語ろうと思いますが、あのチェーン店の人の雑談は、お客様を知るためだったのだなあと。いちばん大切なのはお客様を知ること、というのはかつて『マネーの虎』に出演されていたパスタ店の店主の立花さんがおっしゃっていたこと(正確には、立花さんがヤナセの会長さんに言われたこと)ですが、具体例を見せていただいたという気持ちになりました。

おそらくもう引退されたヒデじいが自分の呼び名を「お坊っちゃま」から「お殿方」に替えたのも、そういうことだったのだろうと。お陰様で、のび太にもコナンにもなれてはいませんが、自分らしくメガネを使えています。

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