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B Corp Month2024特別企画「パブリックグッド初のインターン佐藤の修行」

皆さん、こんにちは。
パブリックグッドの菅原です。

23年末、パブリックグッドの問い合わせ窓口に次のようなメールが届きました。

こんにちは。突然のご連絡失礼致します。私は、国際基督教大学に通っております、2年生の佐藤と申します。私は、高校時代に模擬国連部に所属していたことから、社会問題に興味を持ち、フードロス、外国人技能実習生、ゴミ問題などの社会問題解決のためにボランティアや学生団体を通じて取り組んでおります。

その中で、このようなボランティア活動を持続可能なものにするには、資金が少なからず必要だということがわかりました。そのため、身の回りに溢れる社会問題を解決するには、既存の企業さんにCSRやB-Corpなどの考え方を知っていただく機会を積極的に設けて、協力してもらうことが近道だと考えました。

しかしながら、学生である私は、まだ知識も少なく、企業さんとの接点を作り出すことが難しいです。そのため、もし機会をいただければ社会的にも企業的にもメリットのあるPRを行うノウハウを持つパブリックグッドさんで修行をさせていただけないでしょうか。

問い合わせ窓口に届くほとんどが営業メールの中で、際立つ「修行」の二文字。

直接お会いしましょうと返信すると、小柄で、姿勢の良い、わたしの娘と同い年の大学生がご来社くださいました。聞けば、ボランティアサークルの活動でB Corpのことを知り、更に調べてみると2023年に弊社でお手伝いしたMeet The Bのわたしのブログに行き当たり、思い切って連絡をしてみたとのこと。

当社で手掛けた事例やB Corp取得までのストーリーを紹介し、「じゃ、まあ、学校がんばってね」感を出して面談を終了しようとしたとき、佐藤さんから千と千尋の神隠しばりに「ここで働きたいです!」とお申し出が。

この率直な行動力、実務現場から学ぼうとする姿勢、ほとばしるピュアさ、全てがキラキラと輝きに、シオシオのPR会社社長と社員は撃たれ、佐藤さんは当社で働くことになったのです。このインタビュー企画は、B Corpがきっかけで誕生したパブリックグッド初のインターン佐藤の「修行」の軌跡です。

2月某日。

2024年3月のB Corp Monthに向けて当社が実施する企画について、佐藤を交えてアイデア会議を行っていました。

佐藤がふと「あ、これ、うちの大学にも売ってます」と画面を指さしたのがovgo bakerのクッキーでした。
「これもB Corpなんですね。知りませんでした。どうしてうちの大学で売ってるんだろう。お話聞いてみたいです」

先日発表されたBMBJの共同代表でovgo Baker創業者の溝渕さんにご相談したところ、ご快諾いただき、このインタビュー企画が実現しました。


●佐藤(以下「佐」)
はじめまして。国際基督教大学2年でパブリックグッドでインターンとして働いている佐藤です。今日はよろしくお願いいたします。

はじめに、溝渕さんがB Corpに興味を持ったきっかけをお伺いできますでしょうか?

●ovgo baker溝渕さん(以下「溝」)
わたしはもともと、環境というより人権に興味がありました。佐藤さんと同じ大学生の時に、教育支援のNGOでインターンをしたり、その流れでフェアトレードなどにも関心を持ったりしていました。あわせて、食べ物も大好きなので、海外に行ったとき、ホールフーズなどに足を運ぶと、フェアトレードとかオーガニックとかの製品が並んでいて、そこになんかかっこいい「B」のマークが付いていたりしたんです。当時は、詳しく調べることもなかったのですが、大学を卒業して、大きな会社に入社し、法務に従事した頃、サプライチェーンの認証などに携わる中で、またこの「B」を見つけて何だろう?と思ったのがきっかけです。

この「B」がついているB Corpという認証制度は、ソーシャルなことをすごく大事にする認証制度なんだということを知り、わたしもこういう認証を取得している会社で働きたいなーと思ったのが最初の印象ですね。

●佐
わたしもいま、フードロスなど食糧問題にすごく興味があり、関連する団体でボランティアをやったりしているのですが、B Corpのことを知ったのは海外なんですね。

もう1点、御社が公開されている「Friendly Handbook」を拝読して、プラントベースのヴィーガンクッキーがみんなの幸せにつながると記載がありました。食事制限のある方、特定の信仰、アレルギーの方など、たくさんの方がおいしく食べられから幸せになれるという点は理解できるのですが、これがどのようにして環境や社会問題に良い影響を与えるのか教えてください。

●溝
2019年、もう5年くらい前になるんですが、北米や南米を食べ物のことを考えながら2か月くらい回っていました。代替肉とか代替ミルクとかジャストXとかがちょうど出てきたタイミングで、漠然とヴィーガンの人たちが動物愛護のためにがんばっているのかなーと思っていたんですが、もちろんそういう方もいるんですが、それだけではなく、例えば、畜産牛を育てるために、たくさんの山林を切り開いたり水を使ったり、メタンガスが放出されたり、環境にものすごく負荷をかけていることを知ったんです。また別の観点では、牛を育てるためにたくさんの穀物を飼料で使うのですが、そうやって育てられた牛を食べるよりも、飼料にまわされる穀物を活用すれば、もっとたくさんの人の食糧問題を解決できたすることも知りました。

牛肉を食べたり、牛乳飲んだりすることや、お菓子で使われているバターや卵といった動物性の材料を植物性のものに置き換えられるなら、食べるための植物を育てる過程でCO2を吸収したりできるので、環境負荷を軽減したり、温暖化をより解決していく手段にもなるということから、プラントベースが環境問題や社会問題の解決につながっていくのです。

わたしはもともと人権問題に関心があったので、こういったお話から、人権と気候や環境問題、食糧問題は切っても切り離せないと感じるようになり、肉食よりプラントベースのほうが、より多くの人が食べられるようになるし、環境問題も解決できると知って、ワークショップを開催するなど、色々と取り組むようになりました。

●佐
なるほど。普段から食や安全に関して考えていないと思い至らないようなお考えですね。ovgoさんのクッキーはこういう人に届けたいというターゲット像はあるのでしょうか?

●溝
わたし自身は、我慢せずにおいしいと思えるもの、かわいいと思えるものを作りたいと思って作っているだけなんです。わたしはベースがお菓子屋さんではなくホームベーカーなのですが、バターとかたまごとかをたくさん使っておいしいものをつくれる人はたくさんいると思うんですよね。

でも、プラントベースで、原材料にできるだけ環境負荷の低い、オーガニックなもの、国産のものを使って、カーボンフットプリントもきちんとケアをして、なるべくアレルギー23品目フリーやグルテンフリーも踏まえるという制限の中で、他のお菓子と同じようにおいしいものをつくれる人はなかなかいないと思うので、普通の人も制限のある人も喜んでくれて、みんなと一緒に楽しめるような、そんな選択肢が広がるような商品をつくれたらいいなと思ってやっています。

●佐
ホームベーカーとして、たくさんの方に楽しんでもらえるように、イチから試行錯誤して作り上げていったんですね。素敵です。

次にB Corpに関しておたずねします。B Corpを取得前と後で、お客様や従業員、取引先に起こった変化や良かったことについて教えてください。

●溝
B Corpを中心としたコミュニティに参加できたことが一番のメリットだと感じています。このコミュニティは、単に考えて、宣言しているだけではなく、ビジネスとしてちゃんと成果を出したうえで、B Corp的なアクションをしっかり起こしている企業や人たちの集まりで、そういう方々には普通に仕事をしているだけではなかなか出会うことはできません。一方で、これまでこのコミュニティは、プロボノ的、自主的なものだったので、今後、更に加速させていきたいという思いもあり、BMBJを法人化して頑張っていこうと思っています。

経営者でも会社員でも学生でも、B Corpに興味ある人が悩んだり迷ったりしたときにディスカッションや壁打ちできるとか、他の会社はどういうことをやっているとか、ここのところはどう対処してるんだろうとかみたいなことを話せる人がいるのといないのとでは、その先の実現可能性が全然違うと思います。そういった人や企業と気軽に繋がれるコミュニティというのはとても貴重です。

●佐
なるほど。わたし自身も、普段から社会問題とかにちゃんとアンテナを張っている個人や企業じゃないと、そういったコミュニティにはたどり着きにくいというイメージがありました。

●溝
こういうことを言うと誤解を招くかもしれないのですが、少なくともB Corpを取得することだけで、急激にお客様の認知が急激に拡がったりとかはまだないので、いま現在はニッチな領域で、それぞれの分野で本気の人たちしかコミュニティにいないというのはとてもおもしろい状態だと感じます。

●佐
B Corpのことをどんな人たちに知ってもらいたい、またはどんな人たちが知るべきだと思いますか

●溝
B Corpを取得するためには経営者が動かないといけないのですが、経営者目線でメリットがあったり、取りたくなるような認証ではないと思っています。B Corp認証がいいと思ってもらえるのは、コミュニティに対して企業がどう還元してくれるのだろうかとか、環境問題をどう解決していくのだろうと注目している従業員や一般市民で、こういう方々がB Corpの目指す世界に共感してくれると思っています。なのでそういった方々にB Corpのことを知ってもらって、なんでうちの会社はやってないんだと提言してくれたり、逆にちゃんと対応している会社で働きたいとか、そういう会社の商品を買いたいと思ってもらえるようになっていく段階だと考えています。

あと、B Corpは認証取得した後に、B Corpコミュニティの一員になって、例えば、包括的で公平な経済をどうつくっていくかとか、株主だけではなく、オールステークホルダーにとって良い経済を考え実践していくことも重要なのですが、そういったムーブメントは一般市民や学生、個人でも参加できるものなので、BMBJとして大切にしていきたいと思っています。個人的には、上から下にではなく、下から上に上がっていく草の根的なムーブメントが好きなので、ICUや佐藤さん自身でお考えのことがあれば、気軽に声をかけてください。

●佐
ありがとうございます!心強いです!
今日は本当にありがとうございました!


インタビュー時の様子@ZOOM

●パブリックグッド菅原(以下「菅」)
インタビューお疲れさまでした。どうでしたか?

●佐
ふー、緊張しました。

何度も「B Corpは従業員のためのもの」と仰っていて、とても意外でした。もともと、企業が売上をあげたり顧客を獲得したり、成長するために取得するものだと思っていたので、もちろんそういう側面はあるのでしょうが、メインは従業員のためというご意見はかなり刺さりました。経営者目線では、B Corp認証はとりたくないかもと仰っていたのも印象的でした。いま、人権とかが叫ばれている時代なので、従業員のことを想っていない企業はどんどん淘汰されていくのかなーと感じました。今日のお話を伺って、学生でもB Corpのムーブメントに参加できるなーと感じました。

ところで、ovgoさんのクッキー、めっちゃおいしいですね。腹持ちもしそうです。
菅原さんは何を召し上がっているのですか?

クッキーを選んで嬉しそうな佐藤
ドリンクと一緒にいただきました!

●菅
これ?コーンブレッドマフィン。

●佐
甘いんですか、しょっぱいんですか?

●菅
ん-とね(最初はあまいんだけど、あとからしょっぱさも来るような、両方が同時にやって来るような、そんなおいしさを表現するキーワードは…)

●佐
食レポだめだめですね笑

●菅
すんません。。



佐藤は、抜群の行動力と高い当事者意識を持っていますが、B CorpやPR業、あるいはビジネスパーソンとしての経験値や知識は、いわゆる普通の大学生と変わりありません。それでも、彼女の「修行メール」に端を発したアクションは、B Corp認証企業であり、実務家であるわたしたちに学びや気づきを提供してくれました。

それは、実生活の中で課題感を感じて学び、行動するという当事者性であったり、分からないことがあれば先達にお話を聞けるコミュニティがあるというInterdependence性であったり、行動した前後で認識や行動に変化が訪れるImpact性だったりします。このインタビュー企画は、わたしたち実務家が現実的な課題に直面した際、「とはいえ」と脇においてしまいがちなB Corpの理念が凝縮された、佐藤の「修行」の集大成と言えます。

今年のB Corp Monthは、佐藤をインターンとして受け入れたり、福島の廃棄リンゴを活用した甘酒を企画販売した高校生と対談したり、少し先ですが、大学のゼミにお邪魔する機会をいただくなど、人的ネットワークといった平面のForwardのみならず、世代といった時間のForwardも体感することができました。

わたしはもともと、今年のコンセプトである「Forward」ということばに対して、なんとなく矢印がひとつの方向に伸びていくイメージを思い描いていましたが、何かを受け取った佐藤や高校生たちは、かれらなりの矢印を好き放題に伸ばしていくでしょうし、わたし自身にもFeed Backとして矢印が戻ってきたように感じます。

昨年のMeet The Bが平面的な広がりの起点とするなら、今年はこうした時間的な広がりも加わったように感じます。そしてそれがきっと各所で起こっていて、もともと「Forward」ということばに抱いていたひとつの方向に伸びていくイメージというよりは、どこかエントロピーの増大を思わせるようなベクトルで、BMBJが立ち上がったばかりのいま、それがわたしにはとても心地よく、また必要なことのように思えました。創造はエントロピーが増大したカオスからしか生まれないですし、この独特のカオスはBMBJを中心としたBコミュニティならではの魅力ですからね。

改めて、本企画にご協力いただきました溝渕さん、宮下さん、本当にありがとうございました。またインタビューを頑張った佐藤、陰で支えた当社の和田、お疲れさまでした。


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