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竹富島での後悔

今年の3月の終わり頃、家族で石垣島へ旅行に行った際、水牛車に乗ってみたいと思い立ち、竹富島にも足を伸ばしてみた。

竹富島は、珊瑚の石垣に囲まれた赤瓦屋根の民家が白砂の道沿いに立ち並ぶ、昔ながらの沖縄のゆったりとした風景が残る美しく小さな島だ。石垣島のターミナルから船で15分ほどなので、気軽に立ち寄ることができる。

ただ、頭に思い浮かべていた島の風景は失われつつあった。

観光客が多すぎるのだ。

狭い白砂の道をぞろぞろと観光客が縦に横に広がり歩き回る。レンタサイクルの自転車に乗った観光客も多い。
そこを島民が足早に通り抜け、畑へ仕事に向かうであろう車も人を避けながら動いたり止まったり、窮屈そうに走っていく。

美しい風景の中にあまりにもたくさんの人がいるものだから、テーマパークかと錯覚するほどだ。
そこでは普段の生活も営まれているのだが、それはまるで忘れ去られているようだった。

白砂の道は神様が通る道ということで、島民の方々が毎朝箒で掃き、掃け目をつけて美しく整えている。

島民は全員がお互いの顔を知るほどの人数しかいないものだから、昔は足跡で誰が通ったかわかるほどだったとか。

しかし今、午前のうちに道の砂は無数の足跡と幾筋もの車輪の軌跡で乱れ、荒れた砂の下に島民の想いは埋もれて見えない。

水牛車を先導する男性は島の歴史や町並みについてゆったりとした柔らかい口調で語ってくれたが、竹富島の現状について折に触れるたび、物寂しさが醸し出されているように私には感じた。

私はここに来たことを後悔した。
私も島の魅力を半減させてしまっている1人だった。

帰りのフェリーで竹富島のオーバーツーリズムについて調べた。

毎日住民の3倍以上の観光客が訪れること。
島の1/3が島外資本に売り渡された歴史。
その後島民らが自主的に土地を買い戻し、島を守るための竹富島憲章を定めたこと。
星のや竹富島の開業背景。
観光業の恩恵と島の破壊のジレンマ。

この先、竹富島はどうなっていくのだろうか。
いつまであの風景を守ることができるのだろうか。

何も考えず、何も調べず、竹富島を訪れてしまったことに自責の念を拭えなかった。

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