overdose

「真っ暗な闇よ
どうかアタシの話を
聞いておくれ」
嗚呼、あの人だ、今日もまた
同じ言葉を繰り返してる

「張り裂けそうな心を
繋ぎ止めていた小さな命
その命さえ奪う権利は
神様にあるのかい?」

亡骸を背負い歩き
石段をゆっくりと上がる
重くなりすぎた足取りは
静かに立ち止まる

あの人は社の前で
強張る体にムチを打ち
頭から冷たい水を
あたり一面に広がる
悲しみを身にまとう

「誰かこの手に救いを
抱きしめて温もりを
この子に与えてあげて
人としての優しさを」

嗚咽混じりに聞こえる
あの人の祈りが
いつまでも耳に残る
私の心を揺さぶり続ける

嗚呼、あの人は私そのもの
遠く、遠くの記憶から
呼び起こされた自身の象徴

増幅された夜の
隙間から覗くモノは
"あの赤ん坊に命を
お前の命と引き換えに"
耳元で囁く

ふと気がつけば
部屋の片隅に一人
ドロップ缶にいっぱいの
白い錠剤を見つめる

煌めきを失った白は
グラスに溶けていき、

そして、
こんなにも透き通る…

この記事が参加している募集

#自由律俳句

29,675件

#文学フリマ

11,606件

大変差し出がましいとは思いますがサポート頂けたら嬉しいです。これからの活動意欲と個展やイベント参加費に充てたいと考えていますのでほんの少しだけお力を借りられたらと思います。