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ファンノベル・アシアン戦記 ~第2章~

舞台となる「聖󠄀ファーリア大陸」略図です。

※大事な注意!※

この物語は海神蒼月による二次創作「空想創作物語」です!
実際におられる(居られた)ライバーさん名が登場しますが「ご本人様とは一切関わりがありません」のでこの物語に関してご本人様 並びに関係各所へのお問い合わせはご遠慮願います。
また、実際のライバーさんに登場役として海神蒼月の演出・解釈等を加えてありますので一部の方の解釈違いを生む可能性がありますが、ご本人様・並びに関係の方以外の抗議は対応しかねます。
予めご理解の程をお願い致します。
では、始めます。

第1話・大聖堂へ

「おい、なんでこんなことになってるんだ?」
俺は今さっき出会ったばかりのこの細身の遊び人風と背中を合わせて息を整えながら悪態をつく。
「しらね。あいつらオレのファンなんじゃね?」
背中の男は戯けた風に言う。
悪意と言うよりも諦めに近い口調で。
「冗談じゃないぞ、おまえの連れだろうが。なんとかしろよ」
辺りを見回すとガラの悪い男どもがウヨウヨこっちを見てる。
嬉しくねぇ。

少し時間を遡《さかのぼ》る。
フォースと別れた後でメノウの元に戻ろうとしたら、なんか追われてる男に遭遇してしまった。
『別にオレには関係ない』と通り過ぎようとしたその刹那、事もあろうに「ソイツ」と目が合ってしまった。
「よう!わだっちゃんじゃない!」
ソイツはそう言いながらこっちに来た。
うげ、こっち来んなバカ。
それとなんでお前、オレの(俺の)中身の名前知ってんだよ?
咄嗟《とっさ》に俺はソイツから逃げるために走り出す。
俺を追う「ソイツ(仮名)」とそれを追うむさ苦しい野郎共。
めんどくせぇなぁ。
「おい、逃げんなよぉー」
俺の後ろからやや間延びした声。
無茶抜かせ。
巻き込まれんのは御免だ。

で、だ。
結局逃げ切れずに こんにゃろーの仲間認定されて俺まで戦う始末。
唯一の救いはこのむさ苦しい破落戸《ゴロツキ》共が見かけ倒しだったこと。
とは言え結構の人数だから面倒くさいこと面倒くさいこと。
「片付けたら一杯奢れよな」
俺は剣を今一度握りしめて言う。
「金ならないぞ。身体で払って…」
剣の柄で脇腹をドスり。
「ぐ…本気なんだから怒るなよ…」
後ろで痛そうな声。余計に悪いわ。

で、15分位も動かされて無力化完了。
思ったより こんにゃろーも強い。
「オレはグワンってんだ。わだっちゃん、あんたは?」
グワン、と名乗ったこの細身の男は汗だくだが息は大して上がってない。
見かけによらないらしい。
「その、わだっちゃんってのはなんだよ?」
俺は一番気になるところから聞いてみる。
「んあ~?なんかあんたは『わだっちゃん』って感じだからそう呼んだだけだど?」
別に俺の中身の正体を知ってて呼んだ訳じゃないのか。
ならいいか。
「じゃ、自己紹介は不要だな」
俺は踵を返す。
「ちょっとまってよ!奢るって!だから置いてかないでよ!」
俺の後ろから小走りに付いてくる足音を聞きながら俺はセイファルアの街に戻った。

「わだっちゃんはこの街の人なん?」
道すがらグワンが聞いてくる。
「違うけど?」
振り返らないで答えると「違うんかい!」と小さなツッコミが聞こえた。
「そういうお前はどうなんだよ?」
一瞥《いちべつ》して聞き返すと「それがよくわかんないんだよね~」と間延びした声。
「よくわからんってどういうことだよ?」
俺はふと足を止めた。
「それがここに来る前の記憶が曖昧でよく分からないのよね。ほんと、どこよここ」
ま?
ってことはワンチャンこの世界の外から来た可能性がある、と言うことを示唆しては居まいか。
とはいえ、それを聞くのはちょっとリスキーだ。
少し、様子見だ。
コイツが本当にあのグワンなのか、まだ確証も無い。
でもまぁ、それを言い出したらメノウを始めとした「あのコ達」も同じだ。
そもそも俺の創作に現実のライバーが設定される訳が無い。
少なくとも創作の場に「リアル」を持ち込むことは無い。
と言うことは何らかの外的要因で彼ら、彼女らはこの世界に取り込まれたことになる訳だ。
「頭は、大丈夫か?」
俺はグワンを見遣る。
「失礼だな、わだっちゃん!」
対して怒ってもなさそうな風でグワンは言った。
「まぁ、今更ジタバタしても始まらんし生きていければいい訳よ」
なんて随分と穿ったことを言いやがったので、なんか妙に納得して俺は歩き出した。

「なぁ、わだっちゃん。これ、どう見ても酒場に見えないんだけど?」
グワンと俺は一軒の店の前にいる。
「そらそうだ。ここは酒場じゃ無いからな」
どこか和風な佇まいの建物。
障子のような引き戸の入口には「うどん」の文字。
「大陸イチ美味いって噂のうどん屋だよ。どうせ文無しなんだろ?」
俺が言うとグワンはがっくりとうなだれた。
と同時に腹の虫。ぐう。
「こんちゃー」
俺は戸を開けてグワンを引っ張って中に入った。
「あ、アシアンさん!」
店主のタヌキっコの化川《ばけのかわ》桜那《はるな》ちゃんが満面の笑みで出迎えてくれた。
「あれ?メノウちゃんは一緒じゃないんだ?」
そうか。
あの時は俺の方が行き倒れでメノウに引き連れられて来たんだった。
「まぁな。それよりも釜玉、大盛り2つで」
俺たちは店の隅の方のテーブルに着く。
桜那ちゃんは「かしこまりました」と可愛らしく笑ってキッチンの方に引っ込んでいった。
「…金ならないぞ」
訝しげに俺に言ってくるグワン。
んなことは先刻承知だ。
「気にするな」
俺も他人(?)に助けられた身だ。
あ、そういえばメノウのことほっぽって来ちゃったな。
すぐに帰る気でいたからな。
待ちぼうけ食ってるだろうか。
『すまん、勘弁な』と心の中で手を合わせながら、今度ロザリーから貰った路銀で美味いもんでも食わせてご機嫌を取ろうと思うなどした。

「ハルちゃん!お勘定置いてくぞ!」
隣のテーブルのおっさんが突然そう言って立ち上がった。
ふと見るともなくそっちを見遣ると視界の奥の方のカウンターに居た綺麗な女性がビクッ!っと肩を震わせて辺りをキョロキョロ見回した。
で、ちょっとこっちと目が合ってしまったので俺はなんでもない風を装って視線を切った。
「あ、美人さんがいるじゃないの、わだっちゃん」
グワンもさすがにこう言うところで大騒ぎする程常識なしではないらしい。
「手ェ出すなよ?」
一応釘を刺しておく。
「出さねぇよ…」
何故か少し覇気なくグワンはそう言った。

「お!こりゃうめぇ」
店の隅に座る男2人が一心不乱にうどんを啜《すす》りまくる。
もちろん俺とグワン。
「だろ?」
2人、あっという間に汁まで完食。
「ごちそうさまでした」
何故か2人、共に同じタイミングで手を合わせてハモる。
「はい、お粗末様でした」
良いタイミングで桜那ちゃんが丼を下げに来た。
「なぁ桜那ちゃん?」
丼を持つ前に声をかける。
「はい?」
小首を傾げる桜那ちゃんにトモケナギノ大聖堂のことを尋ねてみた。

「トモケナギノ大聖堂は聖󠄀ファーリア大陸に広まったムルド教の総本山で現在の聖堂長は"大司教"フリード様。最近は穴蔵や魔術院と協力して人々の暮らしを豊かにする研究をしているようです」
と。
「なるほど、穴蔵は北か。もっと早く知ってればこっちに戻る前に寄って来れたかも、か」
俺はううむ、と腕組み。
「なんだ、随分な物騒な名前が並んだな。大聖堂に穴蔵に監獄島か」
グワンも腕組みして椅子の背もたれに凭《よ》り掛かる。
木製の椅子がぎしりと軋《きし》む。
「物騒なのか?」
今の話に物騒な要素は無かった気がするんだが。
「あくまでも噂だけどな。元々仲の悪い3大施設が今になって協力関係なんてロクなこと企んでないだろって話。怪しい研究でもしてるんじゃないかってな」
グワンは天井を仰ぐ。
「そうなのか?」
と、桜那ちゃんの方を見遣ると桜那ちゃんは困ったように苦笑い。
『そういう話もありますよね』と表情が物語っていた。
「穴蔵」と「監獄島」の仲が悪いのはなんとなく理解出来るとして、"大司教"フリードが治めているんならその威光で上手く行きそうな…ってそうか。
両名が神聖大戦の英雄に楯突く訳《わ》きゃないんだから、腹に一物持ってても表面上は協力体制を敷いてるように見せるか。
「行かれるんですか?」
と、桜那ちゃん。
「ん。まぁ、ちょっと色々あってさ。行くことにしたんだ」
俺の言葉に桜那ちゃんは「そうですか」となんとも言えない複雑な表情で、「物好きだねぇ」とグワンが天井を見上げていた視線をこっちに投げ、「あの…」といつの間にか桜那ちゃんの隣に立っていた美人さん。
「ん?」
俺はその美人さんに目を留める。
「大聖堂へ行かれるとのことだったので、もし良ければ同行させていただけないかと」
なんとなく引っ込み思案っぽいコだな、という印象。
「あの…私、ハルって言います」
ぺこりと頭を下げる。
ハルちゃんの隣にハルちゃんの構図。
ちょっとおもろい。
「あ、私も はるちゃんって良く呼ばれるんですよ。奇遇ですね」
桜那ちゃんにっこり。
ああ、和む。
「で、こっちのハルちゃんも大聖堂に行くのか」
俺が言うとハルちゃんがこくりと頷く。
「そっか。まぁ、俺は構わないぞ。旅は道連れとはよく言うからな」
俺がそう言うとハルちゃんの表情がぱっと明るくなった。
「本当ですか!?たすかります!」
うむ、可憐な少女の笑みは活力になるわ。

俺とグワンとハルちゃん3人で桜那ちゃんに見送られて店を出る。
「じゃ、達者でな」
俺はグワンに告げる。
「あのさ わだっちゃん、やっぱこういう恩義はちゃんと返さねぇと気が済まないんだわ」
…おい、何言い出すんだコイツ?
「いや、気にするな」
俺は最後まで言わせまいとハルちゃんを促してとっとと行こうとしたのだが…
「俺もついてく!身体で払…!」
デカい声で言いやがるので言い切る前に剣の柄で思いっきりど突いてやった。
「うぐ…わだっちゃん…ひでぇ…」
悶絶してるので、退散することにした。
「あの…お連れの方、いいんですか?」
などとハルちゃんは見当違いな心配をしているので「いいのいいの」とハルちゃんの手を引いてうどん屋を後にするのだった。


あとがき

随分間が開きましたけどこれからも続きます。
第1章の相方、雪乃メノウ編に替わって新たな登場人物が登場しましたね。
第2章には1章で出てこなかった人達がたくさん出ます。
執筆が止まっている間にも色々なライバーさんとの繋がりがありましたので、2章はその辺りの方達を登場させるつもりです。

今回の登場人物(敬称略)

グワン
リアルでの配信ではテンションおかしい酔狂人。
幻のユニット「ぐわし」の「ぐ」担当。
ちなみに海神蒼月は「わ」担当。
(X)
https://twitter.com/GUWAN2456
(SHOWROOM)


ハル(咲駆ハル)
こちらの世界では可愛い妹分。
ちょっとポンな頑張り屋さん。
海神蒼月の声はラリホーの効果らしい。
(X)
https://twitter.com/haru12633

(SHOWROOM)
https://www.showroom-live.com/r/38d806117647

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