『え、社内システムシステム全てワンオペしている私を解雇ですか?』の書評を書いてみた

 こんにちは。hisaです。
 noteではこれまで自分向けの小説の創作論の皮を被った広報論を語っていましたが、ちょっと我慢できなくなって、書評にも手を伸ばすことにしました。

 今回紹介するのは、『え、社内システムシステム全てワンオペしている私を解雇ですか?』というタイトルの小説です。
 出会ったのは2020年の11月。当時小説家になろうで短編として発表され、主流ではないマイナージャンルから一気にランキングを駆け上がった作品でした。
 僕はそれ以前から、作者の下城米(カシロメ)先生を知っていましたが、その短編以降、独特の戦略を何度も打ち出し、実行し、実現するのを目の当たりにして、今に至ります。正直、目が離せません。

 さて、作者先生のことについては、その創作論からなぜかこだわるキャラ付けまで、語りたいことは山ほどあるのですが、今回は作品の書評です。
 作者先生のことはひとまず脇に置いておいて、作品について語りましょう。

 とは言え、ネタバレせずにこの面白さを伝えるのは難しいですね……

 とりあえず、どんな人に読んでもらいたいか、それはなぜか、作品の経過、今後どうなって欲しいか、オマケの広報戦略提案など書いていきたいと思います。

 え? それは書評じゃないって? 残念。その苦情は受け付けません。


どんな人に読んでもらいたいか

  • 軽視されたことのある技術職(特にSE、プログラマ)

  • 技術職に近いサラリーマン

 ※個人の見解です

それはなぜか?

 システムはあらゆる業務に導入され、今や企業活動の根幹ともいえるものですが、それを作る技術者の評価は決して高いものではありません。
 実際、IT企業を除けば、社長がシステム畑出身であることは稀です。

 東証やauなどのシステム障害で、経営層が会見で付け焼刃とは思えない神対応をして見せたり、プログラミングが義務教育に導入されるなど、時代は変わりつつあります。
 それでも現場にいると自分が何を要求しているのか、要件すらわかっていないキーマンが、開発チームをかき回すシーンを良く見かけます。
 僕の体験談から言うと、うちの職場で百近いシステムとデータ連携している中枢システムを再構築した際、それまで5人体勢だったシステム担当者を1人にまで削って、「え? 仕事はコンピュータがするんでしょ? 何で人間がいるの?」とリアルに言った人事担当を見たことがあります。
 その後残った担当者は脳卒中で倒れ、連携先の担当者だった僕らは進捗が分からず引き継ぐこともできず右往左往しました。
 その人事担当者は、炎上後に人の確保等の火消しに大活躍し、大いに評価されました。今では偉い人になっています。

 この作品は、そんな経験をしてモヤモヤしている人々に『刺さる』作品ですが、単純で短絡的な解決法はあえてとらず、やわらかで懐の深い展開の作品になっています。
 最近涙もろくなってるせいかもしれませんが、おかげで何回か泣きました。

 お? と思った方は、試し読みをしてみてください。きっと引き込まれます。

【1巻冒頭】

【2巻冒頭】

【コミック】


『え、社内システムシステム全てワンオペしている私を解雇ですか?』の経過

2020年11月15日 小説家になろうに短編版を投稿

 「ヒューマンドラマ」というマイナージャンルに投稿された短編で、読者導線はなろうトップページの「新着の短編小説」欄だけだったにも関わらず、あれよあれよという間にランキングを駆け上り、総合表紙入りを果たす。
 実はカシロメ先生、ペア開発した「なろうRaWi」というタイトル判定AIをネット上に公開しており、そのタイトル判定の正確さを自ら証明してみせた。
 その後、このAIの支援を受けた作者が次々書籍化しており、まるで小説みたいな展開が今も続いている。

2020年11月17日 小説家になろうに長編版を投稿

 短編がランキングを駆け上がっている最中に、間髪いれず長編版を投稿し、こちらもランキングを駆け上がっていく。
 内容はもちろん、作品を取り巻く状況もあまりにドラマチックだったため、横で見ていて手が震えたほど。
 結局、書き溜めがあったわけではなさそうだったにも関わらず、わずか一ヶ月で十万文字を達成。これが後に一巻のベースになる。

2021年5月7日 PASH!ブックスより書籍版第一巻発売

 大方の予想通りに書籍化され、発売時点でコミック化が告知されていた。
 発売後、今度もいろんなランキングをすごい勢いで駆け上っていくランキングキラーぶりを発揮。
 感想を言いたい人が急増したのか、ネット上のレビュー数もみるみる増えて、ほえー状態。

2021年5月12日 脅威のTwitterマーケティング

 作者のカシロメ先生が、一巻冒頭をの試し読み画像をTwitterで呟くと、一気にバズる。タイトルに撃ち抜かれて共感する人々が続出し、3万近くいいねがついて、再点火された作品は再びランキングを駆け上っていった。
 こんな手法を今まで見たことがなかったので、またしてもホエー状態。

2021年6月15日 みずほ銀行がシステム障害の再発防止策を公表

 システム軽視、技術者軽視の最高峰であるみずほ銀行は、この後も何回も障害を起こして世間をあきれさせたが、そういったニュースに関連するTwitterやYahoo!ニュースのコメント欄で作品名をみかけるように。
 実際、障害のタイミングでよく売れていたようです。

2022年3月26日 僕もうっかりTwitterでバズる

 エンジニア支援記事とネタツイを手掛ける「スタバでMacを開くエンジニア」さんのネタツイに、カシロメ先生の冒頭試し読みツイを引用リプしたところ、うっかりバズってしまう。

 このツイート、百万以上のインプレッションがつきました。自分の作品ではこうはいかず、目につくのはタイトルのみなので、タイトルの違いがこうも違う結果をもたらすのを実感する、なかなか新鮮な経験となりました。

2022年8月2日 PASH!マンガより、コミック版配信開始

 コミック化の告知が出てから、担当する伊於先生のTwitterをチェックしながら今か今かと待ちわびていたのですが、ついに配信開始されました。
 8月6日時点で軽くリサーチしましたが週刊なのか月刊なのかわからず、2話読めるのはいつになるのだろう……?

2022年8月5日 PASH!ブックスより書籍版第二巻発売

 すでに読了しましたが、途中何度かホロっとしてしまいました。

 投稿版で覚えのあるエピソードがごっそりなくなっていたり、見覚えのないエピソードが増えていたり、感覚的には6~7割ぐらいは新作となっている感じ。投稿版の読者も、新作感覚で読めるでしょう。

 ちなみに、話の構成や雰囲気はまったく違うんですが、僕の中では熱くなり方が『宇宙兄弟』と同じだったので、ターゲット読者層は重なりそう。

今後どうなって欲しいか

 読者的には、引きがとても気になったので、とりあえずまずは3巻は読みたいです。
 そして、これはなろう時代から思っていたんですが、実写と非常に相性が良さそうな作品だと思っています。具体的にはラジオドラマやドラマでしょうか。
 さらなるメディアミックス展開に期待しています!

広報戦略の提案

 この作品、文体は読みやすさ重視のライト調なのですが、導入部に刺さる読者層は通常のライトノベルとは少しずれています。従来のライトノベルの広報ルートだけではターゲットとなる潜在読者層へ届かない可能性があります。
 逆に、今や人材軽視はシステム界隈に限った話ではないため、社会人全体に刺さりやすい可能性もあります。
 さらに、独特の戦略は作家志望者勢の研究対象になる可能性もないとは言えません。
 そこで、潜在読者層に近い位置に広告を打ってみてはどうでしょうか?

  1. 知ってもらう段階(媒体)

    • プログラミング系、DB系、組み込み系の雑誌、サイト

    • 日経新聞

    • 通勤電車内

    • 転職情報雑誌、サイト

    • コミックからの逆誘導

    • 各小説投稿サイトのバナー

    • なろうトップページお知らせ上の「お便りコーナー」へのメッセージ掲載

  2. 愛着を持ってもらう段階(手法)

    • 技術者軽視を打ち出すキャッチコピー

    • 本文そのまま掲載

  3. 買ってもらう段階(誘導方法)

    • QRコード

  4. 買い続けてもらう段階(忘却防止)

    • 作者Twitter

    • いろんな作品の投稿

    • いろんな作品の出版

最後に

 おっと。もう3,000文字以上書いてるのか。そろそろ風呂敷を畳まないと。
 えーとえーと。うーん。
 イマイチ中身の面白さを伝えきれてない気がするので、どなたかネタバレせずにうまく面白さを伝える方法を教えてください。
 とりあえず、この作品を買うところから!
 よろしくお願いしま~す。