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明石市のアカシノミクスは数字のごまかし

泉房穂(前明石市長)がアベノミクスは数字のごまかし・トリックだったと批判しているが、それを言うなら自画自賛するアカシノミクスはそれ以上のごまかしである。

そういう施策の結果、市民は財布に余裕ができたので積極的に消費し、地元商店街が潤った。そして、明石にどんどん人が集まって人口が増えた。とくに明石の場合、子育て支援がきっかけで、ダブルインカムの夫婦が増えました。こういう人たちのおかげで、市民税が増えた。明石の地価は、私が市長になったときから、実勢価格で2倍になりました。すると、建設ラッシュが起こって業界が潤い、ますます税収は増えました。
明石はまさに地域経済が好循環となり、増えた税収が財源となって、多くの住民サービスが可能になりました。
こうした明石の取り組みについて、社会活動家の湯浅誠さんが、アベノミクスの真逆の政策として「アカシノミクス」と名づけてくれました。

この「子育て支援を起点とした経済好循環」のストーリーはいかにももっともらしく聞こえるが、現実には存在しない(詳しくは過去記事のその一その二を参照)。全国の人口が減少する中、明石市の人口は増加しているが、市税収入や課税対象所得の増加率は全国(市区町村計)と変わりない。明石市の税収増は全国的な景気拡大→税収増の上げ潮に乗っていただけで、アカシノミクスの成果ではない(むしろアベノミクスの成果)。

総務省「市町村税課税状況等の調」

明石市の地価の実勢価格が2倍になったとのことだが、住宅地の公示地価は2011年→2023年に+7%に過ぎず、特段高い上昇率ではない。

アベノミクス(というより第二次安倍政権期の経済動向)の評価も間違いだらけである。

アベノミクスのもうひとつの特徴は、数字のごまかしです。典型的なのは、雇用に関するデータ。アベノミクスで有効求人倍率が上昇したといわれていますが、あれはトリック。ほとんどが公共事業によるもので、景気回復とは無関係です。しかも、非正規化がどんどん進んでいるから、雇用が増えたとはいえ、人々の生活が豊かになったわけではない。アベノミクスでたしかに名目賃金は上がったが、物価の変動を考慮した実質賃金は下がり続けています。

有効求人倍率が上昇したのは就業者が増えて失業者が減ったからだが、就業者の増加のほとんどが公共事業ではないことは明らかである。

総務省統計局「労働力調査」

安倍政権期には正規雇用者も増えているので「非正規化がどんどん進んでいる」も正しくない。非正規化雇用の増加には主婦と(一昔前ならリタイアしていた)ロートルの労働力化も寄与していることにも留意が必要である。

総務省統計局「労働力調査」

賃金の説明も正しくない。

内閣府「令和4年度年次経済財政報告」
内閣府「国民経済計算」より作成
内閣府「国民経済計算」より作成

朝日新聞は吉田清治の証言の裏を取らずに大々的に報じたが、泉房穂に好き放題に喋らせている新聞・雑誌・テレビ・ラジオ・ネットの各種メディアがやっているのは同じことである。

付録

上流思考』CHAPTER 9
「成否」を正しく測るには? ――「幻の勝利」に気づく

1種類目の幻の勝利は、「指標」は改善するが、それが「取り組みの成果」だと勘違いしてしまうケースだ(チームの本塁打数は増えたが、リーグの投手陣が全体的に不調なため、どのチームも本塁打数が伸びていた、など)。

p.233

1種類目の幻の勝利は、「上げ潮はすべての船を持ち上げる」という古い言い回しにも表れている。船を持ち上げようとした人は、上げ潮などなかったことにして、成功を宣言したくなる。

p.234

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