東京都の婚姻と出生が減らないのは

この自称独身研究家は人口統計学の基礎知識が欠如していることに加えて、自分の思いつきに合うように統計を読んでしまうので、統計で嘘をつく記事を連発している。

15~49歳の各年齢のウェイトは等しいので、年齢構成の違いはTFRを直接的には左右しない。従って、「未婚率の高いエリアの合計特殊出生率はどうしても計算上低く」はならない。自分で書いていることの意味も分かっていない。

合計特殊出生率というのは、15~49歳の各才別の出生率の合計値ですが、この計算分母には未婚者も含まれます。よって、未婚率の高いエリアの合計特殊出生率はどうしても計算上低くなります。未婚者の多くを構成するのは15~24歳の若者です。要するに、若者の人口比率が高ければ、合計特殊出生率は低くなってしまうものです。

絶対数で見ればこれ👇が言い過ぎであることは明らか。

全国の出生数を押し下げているのはまさに東京以外の地方であり、唯一30年近く出生数をキープしている東京が日本の出生数を支えていると言ってもいいでしょう。

厚生労働省「人口動態調査」

これ👇も誤りで、東京都の婚姻数の多さと婚姻率の高さは出会いの機会が多い(→マッチング率が高い)からではなく、単に20・30代の人口が多いからで、既婚率は47都道府県で最低である。

案外知られていないことですが、東京の人口千対当たりの婚姻率は2000年以降ずっと全国1位です。

日本全国各地から若者が集中することで、当然絶対人口としての未婚人口の割合は多くなりますが、その分、男女の出会いの機会も増えます。

東京に来たからといって誰もが結婚できるとは言いませんが、少なくとも、地方の過疎地域のように「結婚したいのにそもそも適齢期の異性が存在しない」という事態にはならないわけです。それが東京における婚姻数の多さに影響しているといえます。

総務省「国勢調査」
橙線は全年齢
総務省「国勢調査」
橙線は全国

これ👇も誤りで、都心3区(中央区、港区、千代田区)の出生増は、タワーマンションの大量供給→それを買える所得層(で出産可能年齢の女)の人口流入が生じたためである。1995年と2023年を比較すると、20代後半~30代の女の人口は2倍近くに増えている。

東京都の中でも所得の多い23区内の出生が増えているわけです。これは、所得の多寡で出生数が変わるといっても言いすぎではないかもしれません。

もっとも出生増を記録しているトップ3は、1位が中央区、2位が港区、3位が千代田区といういずれも高所得者の多いエリアで占められます。

東京都
総務省「国勢調査」

東京都、中でも都心3区の出生増は人口の都心回帰の結果であり、この👇ようなことは意味していない。

ここから浮き彫りになるのは、結婚から出産に至る過程の中で、若者が置かれた経済環境によって、「結婚できる/できない」「子を産める/産めない」が決定されるということです。

このような素人を専門家のように扱って誤った説を流布するマスメディアの責任は大きい。

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