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レガシーマインドに魂を吹き込めるか

少し人間臭いことをつらつら書く。

工程保証のインライン検査での不具合、例えば表面検査ムラ、寸法外れ、ウェハーエッジ形状、いつもと違う色合い.. 何れかが一定以上の基準を超えて見つかったとする。

検査員は検査NGとして通報をし、エンジニア対応に渡される。ここからがお手並み拝見になる。

判断は大きく3つ。

①これは工程実力であると判断し流動を続ける(様子見、ともいう)

②このロット単体での異常と推察、前後ロットを確認して適宜の判断をする

③ライン異常と判断、原因と推察した装置を即時止め、処理済みロットを遡求調査する(場合によっては電気的な機能特性確認まで追う)

半導体前工程にしぼったとき、2000年前後においてこの判断に直面する場面比率それほど変化がなかった。肌感、3:1:1くらい。

プロセス技術の変化といえば素子分離のSTI構造やCMP周りでの新たな欠陥モード(これは新鮮だった..)はあるものの、日々のロット流動の仕方、段取りの違いによる品質判断材料は劇的には変化しなかった。

既存ラインの発展編・応用編程度の認識しか持っていたかもしれない。

その後はCuダマシン、ArF、マスク複雑化、3D構造、マルチパターニングからのEUV量産化(これは一部企業だけだけど)・・・

何しろ各技術要素の進化が早かった。これはかつてDUVとCMPのコンビでブレイクスルーした状況とは異なっていた。

これにはさすがにベテランたちも過去知見とリンクした洞察がなかなか追いつけない。つまり、長年の技術継承の断絶が到来したと言える。

新プロセス立上げは比較的若手が担当するようになるが、各トラブルの内実は新規ものとレガシーもののミックスであり、対応が遅れて心理的にも難易度が上がる。

まだ未知な事象が多く、異常発生時は先の選択肢の③(ラインを止めて流動済ロットはwatch listに入れる)が主流になる。

この状況をどう打破したらいい?

例えばウェハーを大河のように粛々と流し、不良・逸脱もありうる必然とし、その情報を改善に回す。これは極端にまで選択1 を実現した姿になる。

もしロットを間欠的に流していたら、異常(疑い)は単発情報にしかならない。従来の有能なベテランは、これらを我が知識とするのが得意だった。

この機能が変化したことが、各社の競争力に繋がっている。今や、レガシーな技能継承の是非を、競争力という文脈で語って良い頃に来ている。

過去ポストで、「新技術はピンと来ることが大事」と偉そうに書いたことがありましたが、これは技術者の垣根なくヒントが与えられ、共有可能に気づけることを表して表現しているつもりです。

巨大な設備、高価な材料、広大なファシリティにたじろぐかもしれない。でも所詮は悩み多き同じ人間が作ったものです。

昨今の設備仕様はガチガチだ!と悩む前に、どんなラインを作り、どんな強みに繋げ、どれだけ人が付加価値出して働けるか、を突き詰める余地はまだまだあるんじゃないかな。

心配しなくてもstate of the artな装置達も遊びがある。いや遊びだらけです。若手中堅の皆さん頑張ろう!

終。

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