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リソグラフィ再生とマルチパターニング

リソグラフィ工程の再生(リワーク)について、からの、マルチパターニングのお話です。

半導体工程の種類多しと言えど「やり直し」ができる工程は限られます。その稀有な存在が不動のボトルネック、リソグラフィ工程だったりします。


■ そもリソ再生とは

「リソ工程中のレジストを剥がして再処理する」ことです。

ウェーハに塗布されたレジストは言わば溶媒を飛ばした樹脂膜です。これは下地影響なく綺麗に剥がすことが可能です。

この絵のマスク(レジスト)部分を、エッチングやイオン注入前に剥がしてしまうわけです。

よく見るあれ

リソ再生する理由は様々です。寸法外れや重ね合せ規格外れをはじめ塗布・現像異常、露光コンディションずれ、リソ後に付着したパーティクル除去、工場内雰囲気異常、などなどなど。

とりあえずやり直しちゃうわけです。

もちろんこんな手戻り工程しないに越したことはありません。品質・キャパ・生産リードタイムのQCD三拍子にとって良いことは何もありません。

リソ周りの様々な機能向上は「微細」を司るのみならず「安定」をも高いレベルで実現する使命があり、リソ工程の直行率(再生率の低さ)は重要指標です。

■ 再生ってどうやってするの?

枚葉処理なら、塗布露光現像のみのレジストであればシンナー洗浄、
もし追加キュア・SEM観察・BARC(下地反射防止膜)をしてしまってたら、アッシング剥離。

バッチ処理なら、配線工程前(FEOL)は硫酸洗浄、配線後(BEOL)は配線エッチング後剥離液洗浄。

などがあります。

シンナー洗浄くらいなら100回やっても品質影響はほぼありません(queue timeの観点で当然ない方がいいです)。しかしアッシングは短時間の熱ストレスによる下地膜質変化や、洗浄による最表面改質など品質影響の考慮が必要です。

■ で、マルチパターニングの話

こんな感じで再生も絡めながら長年やりくりしていた半導体のリソ工程ですが、

ああ… いつかその時代が来るんだろうな… と薄々感じ、来てしまった技術がマルチパターニングプロセスです。

ただでさえ再生運用ややこしいのにどうすんのこれとも言ってられず、各社なんとか運用されています。

マルチパターン(2重の場合)は大きく3通り。

①LELE(リソ/エッチ/リソ/エッチ)
②LFLE(リソ/レジスト硬化/リソ/エッチ)
③SADP(リソ/エッチ/成膜/エッチ/エッチ/エッチ)

①③は@semi_journal_jpさんのまとめが秀逸です。

ではどれを使うか?

優先度としては(異論は超認める)、
コストの優位性は ③<①<②
メモリに強いのは ②<①<③
ロジックに強いのは ③<②<①

リソ運用としては②が大変厄介です。

①③はリソ工程は1回ずつで運用できますが、②は複数パターンをリソ内で完結しなければならない。

そして、2つのリソ出来栄えを相対的に合わせていく必要がある。失敗したら、2つ分のリソがやり直しになります。

①であればすでに1パターン目が出来上がっているのでそこに合わせれば良く(再生したとしても基準が明確)、ある意味シングルパターンとほぼ同じです。

■ まとめ

工場全体のスループットに直接影響してしまうリソに運用ボトルネックを寄せるのは結構なリスクです。そもそも既に②はマイナーな位置付けになってしまったのが実情ではあります(2023年現在)。

マスク上のパターンスプリットはmanufacturing friendlyな設計が強く問われます。再生のような現場運用まで考慮できると理想ですね。あくまで理想。

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