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観に行った映画を好きになれなかった日。

リニューアルしてから行けてなかった、近所にある映画館。本屋さんも映画館も徒歩圏内にある、って、なんて幸せなことなんだろう。なかなかこの街から引っ越せない理由のひとつ。

ずっと楽しみにしていた作品だった。前情報はあまり入れず、この監督だから観たいというのがすべてだった。

音楽が素晴らしかった。でも、冒頭からちょっと不穏な空気(わたしの中で)。とても素敵だと思うシーンもあった。ぐっとくる場面も。でも、最後まで観て、わたしはこの作品を好きになれなかった。
そして、じつはなんとなく感じていたこと。この監督と、合わないかもしれない。

教えてくれたのは、もう10年以上前、ネットで知り合った映画好きな男の子だった。彼はわたしに、ウェス・アンダーソンやジム・ジャームッシュ、黒沢清、瀬田なつき、等々、たくさんの監督や作品を教えてくれた。今回観た作品の監督もそのひとり。彼がすすめてくれるものは本当にどれも面白くて、毎週のように映画館に通った。
そして単純なわたしは、彼に恋をした。昔から「自分の知らないことを教えてくれる」人に弱くて、恋愛耐性がないので惚れっぽい。すぐに「彼が好きなものが好き」になっていった。
そんなつまらないわたしを彼が好きになるわけもなくあっさり失恋したけれど、彼が教えてくれた映画の楽しみ方は今もわたしのなかで生きていて、とても感謝している。

それから、「彼が好きだと言った作品」から、「わたしが好きな作品」に上書きしていった。あの頃よりもっと好きになった作品もあれば、これはそうでもないかも、っていうものもあった。もちろん、誰にすすめられたわけでもなく、好きになった作品もたくさんある。その分、好きじゃない、苦手かも、と思う作品も。

映画館を出て、今観た作品についてひとりで考えを巡らせた。あの監督っぽいといえばそうだな、でもそういうところがじつはわたしは好きじゃないんだ。
そういえば彼のことを思い出したのも久しぶりだった。あの頃、彼が好きだと言ったものに、わたしは一度も否定的なことを言わなかったと思う。

この作品を観て、彼はなんと言うだろうか。彼がなんと言おうとわたしの感想は変わらないけれど。

今はただ、そういう自分でいられることを、誇らしく思う。


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