見出し画像

最重要記事:整骨院への不正請求疑惑裁判・・・否決はされたが、ここから学ぶべき事

平成30年10月17日東京地方裁判所にて、ある判決が出ました。

ある交通事故の治療・施術を巡って、保険会社が接骨院を相手取ったのですが、最終的に裁判所は保険会社の主張を認めず接骨院側が勝った形になります。

ただ・・・この内容は、よーく読んでみるといくつも引っかかる点があるし、単純な記事として下ろせないような内容が散見されています。

手前味噌ですが、私なりの切り口で解説してみます。
これ、相当の内容になりますので、無料公開部分にて見解説明は十分出します。

有料部分は、他では切り込めきれないであろう部分も踏み込みますので、重要事項な記事として捉えて頂けますと幸いです。

<事故の概要>


・非追突事故の形態であり、病院では頚椎捻挫と診断された

・被害者の車両修理費は約24万円であり、破損状況から修復を行った費用としては、取り立てて激しい損傷を得たとは言い難い状態。

・通院期間は約7カ月に及び、実通院日数においては、ほぼ毎日となっていた。

・当初、保険会社との任意一括請求対応の協定は結ばれていたが5ヶ月目まで・・・6、7ヶ月目においては保険会社からの入金は無い

・1~5ヶ月目まで、整骨院に支払われた施術費用は100万円超となった

私から見て、不正請求と思われておかしくない様な、絵に書いたような事例となっています。

 やはり 保険会社も、 月平均20万円を超え、 総額が3桁になれば かなり 疑わしき目で見ることになります。

<保険会社の当初の主張>


結果的に裁判に発展します。

主張としては

・被害者と整骨院が共謀し、実際は整骨院で施術を受けていないにもかかわらず虚偽の申告をし、不正に保険金を支払わせた

・支払済みの施術費等の費用の返還を求める

・同時に今回の不正疑念において発生した「調査会社への調査費用」「弁護士費用」250万円も払え

とのことで総額約350万円を被害者と整骨院に請求する訴訟に発展しました。

<判決内容>


・被害者の申告が虚偽のものであったということは断定出来ず
・整骨院は損害賠償義務を負わない

と、一見「本当に?マジで?!」と疑うような内容でした。
これが刑事事件で言う「推定無罪」「疑わしきは罰せず」というやつか?!
民事だけどな・・・←ここは、所詮は素人ということです。

私が資料で得た分ですが、何が保険会社を訴えを退けたのか、確認してみましょう・・・

<裁判所が保険会社の主張を退けたポイント>


大まかには反論含めて精査したら「施術を受けていないとまでは言えない」
とのこと
では、保険会社の主張とそれによる裁判所の判断を見てみましょう

①提出された通院日に整骨院の休診日が含まれていた

保険会社主張
→患者の通院日に、整骨院の休みである日祝日が複数回含まれていたので、虚偽請求である

反論
→休診日であっても、個別調整にて施術することがある

裁判所判断
→整骨院HPに「日曜、祝日の受付に関しても電話で対応しておりますので、お気軽にお問合わせください。」の記載
休日に施術をすることがなかったとはいえない


②調査会社の報告では通院日に当該患者が来ていない


保険会社主張

→調査会社を使い、数日間整骨院周囲にて張り込み
患者が通院していない日と、請求日の整合性を確認すると一致していた日があったために虚偽申請であると判断した

反論
→調査会社の実施した時間は20:00まで。整骨院の営業時間は19:30までだが、患者・接骨院はそれ以降に来院して施術していたと反論。


裁判所判断
→営業時間外通院が出来ない訳じゃ無いので否定することが出来ない。
患者などの申告が虚偽であると断定出来ない


③整骨院の場所・患者の住所と勤務先所在地が不自然に距離がある

保険会社主張→患者の住所や勤務先から、あえて遠い整骨院を利用することが不自然である。
実際に勤務先から整骨院まで1.3㎞も離れている
反論
→そもそも整骨院は以前にも通院したことのある院であり、自宅から勤務先までは自転車通勤をしている。そのうえでの1.3㎞はそこまで遠い距離では無い。
裁判所判断
→反論の通り、仕事帰りに立ち寄る先としての整骨院としては、特別の遠距離とは言えないことから不自然さは無い。以前にも通院歴があるのであれば、尚更である。


④カルテと施術証明書の記載内容に相違があり不自然である


保険会社主張
→カルテに書いてない内容が、施術証明書には記載されていたりする。
従って施術証明書そのものが虚偽記載である可能性が高く、施術を行ったという請求そのものが虚偽である。

反論
→カルテに当日書ききれない場合も有り、施術証明書において補足されていたとしても、それは施術そのものの虚偽とは言えない。

裁判所判断
→保険会社は短絡的に施術証明書の記載問題から施術の虚偽と結びつけるように主張するが、「記載の不備」が、そのまま「施術の虚偽」とはならず、施術が行われたことそのものを否定することは出来ない。

以上になりますが、私もこの裁判の事を聞いたときには驚いたことがいくつかあります。

これまでの傾向と比較して
・整骨院側と患者側が、それなりに反論出来ている
・その反論と元の主張を、裁判所が公正な立場でジャッジしている。


こういった事件の場合、他の虚偽・水増し請求の多さの実態から、裁判官心象も良くないことから、塩対応されることが多いのではないか・・・そんなイメージが付きまといます。

しかしながら・・・の判決内容に私は見えました。

よく読めば読むほど・・・「これ、よく裁判官がこういった判断したな・・・」と思うほどです。

この事案は少し前で、控訴されたかどうかは分かりませんが、続報が無いのでされてはいないようです。

裁判所は認めてくれたけど、それなりには抜け穴があるようです。
こうなると、内容からして

・時間外・休日での施術に関しての広告は徹底し各所に明示しておく
・指摘されている施術証明書をきちんと書く

等が一般的な・・・記事だったら、アドバイス記載することかも知れませんが・・・

それじゃ、私が書く記事としては面白くも何とも無い内容ですので、私なりに気になった点含めて、ぶった切らせて頂きます。

①今回の疑義は「整骨院」のみならず「患者さん」にも目を向けられている。それが意味を成す、気になるポイントとは?

②疑義を助長させていた、整骨院にありがちな・・・多くの接骨院・整骨院がしているであろうレベルの業務の問題点をチェックしてみる

③以前の記事でも書きましたが・・・時間外・休日加算を狙ったから?その場合における「目安料金表」との関係をもう一度踏まえておくので、ここはチェックして欲しいポイント

④私に言わせれば、たまたま運が良かった?保険会社がやらかした?ある意味、保険会社サイドが自滅に至ったポイントをぶった切る

⑤あえて私から出す、この裁判を踏まえて業務に落として欲しいこと

の5点で参ります。

①今回の疑義は「整骨院」のみならず「患者さん」にも目を向けられている。それが意味を成す、気になるポイントとは?


いつも申し上げていますが、あまりにも交通事故における柔道整復師の不正請求が多く、保険会社も一部の医師会も「柔整師に自賠責に関わらせるなキャンペーン」は毎年酷くなっています。

まぁ、そのようになるような悪の限りをしてきた、一部の輩が100%悪い。

しかし、一部には開き直ったように「不正はどこもやっている」とYouTubeで言っていたアンポンタンもいました。

・・・どこもって・・・ウチは100%してませんし、してない先生を相当知っていますが?
不正してないのに、輩扱いで大変だから知恵を得たいとのことで、勉強されているかたが沢山居ますので・・

ただ、今回の事案を見ていて気になるのが、やたらと
「整骨院と患者がグルになってやった」
のごとくを前面に出した保険会社の主張なのです。

まるで「グルになってやらないと、こんなの出来ないであろう・・・」というニュアンスの意図を私は感じるのです。

勉強会を含め、事ある毎に「保険会社は調べられるだけ調べます」と申し上げています。
・現在の活動内容(接骨院業務のみならず周辺活動も含む)
・過去の請求履歴
・スタッフなどのエゴサーチ
・院のバックーボーン
・自賠責損害調査事務所のデータベース
・保険会社そのものが持っている履歴および分析データ


などはもちろんで

・不正請求防止制度←「疑わしき」だけでデータ登録可能
・AIによる分析


もされます。

そして忘れてはいけないのが・・・

ここから先は

1,720字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?