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【とわ子にまつわるエトセトラ】

ドラマを見逃した話を以前していたら、「Amazon Primeに登場したよ」って教えていただいたので、今週頑張って視聴しました。


「大豆田とわ子と三人の元夫」。


結論としては「動画苦手な私が10話を一週間で全部見た」ほどで、個人的にはとてもよかった。いつも娘(7歳)が隣にやってきて、一緒に画面を見て、「今のセリフ何? どういうこと? なんで笑ってるの?」と聞いてくるので、聞き漏らしはたっぷりあれど、それでも楽しめた。




■ロマンティックコメディってなんだ

伊藤沙莉さんの個性的なナレーションで導入が始まるコメディドラマは、ただのコメディじゃなくてなんて形容していいのかわからないけど、その辺の記事には「ロマンティックコメディ」って書いてある。どういうこと。なにそれ。


第一話、バツ3のとわ子が披露宴にお呼ばれ(縁起悪いからスピーチから降ろされたりする)した帰りに、引き出物のでっかいバウムクーヘンを歩きながら食べて帰るシーンから「固定観念を捨てろ」と言われていることに気がついてハッとする。歩きながら食べたっていい。引き出物のバウムクーヘンを。片手で(この食いながら歩くシーンは多発する)。


第二話、3番目の元夫はシンシンという名前(本名)でパンダが好きで、ホテル暮らしをしながら弁護士をしていて、風呂場でパンダの動画を見て和んでいる。ホテル暮らしだって人生の一つの選択だ。


そうだ。


すべての話の中に「固定観念を捨てろ」というちっちゃいメッセージが散りばめられていて。それでその上で考えろと言ってくる。
「あなたに必要なものはなんだ?」と。


これは、ロマンティックなのかな?




■オダギリジョーの破壊力と、ハンカチ

元夫はみんなメガネをかけていて、個性がそれぞれ違っていてチャーミングで、そして「イケメンという枠をかなぐり捨てる」感じの描かれ方をする。3番目の夫シンシンを演じる岡田将生さんのことは詳しくないけれど、イケメン度を忘れ去るほどのめんどくさい役を素晴らしく演じ上げていた。


一番目の夫の松田龍平さんは、ちょっとわかる。二番目の夫の角田さんは、あんまりわからない。説明がこれで終わってすいません。
そんな3人の元夫たちとの縁を楽しみながら(?)生きる「とわ子」に、4回目の結婚の香りが漂うのは7話以降。


降って湧いたのはオダギリジョー(すごい)。
プライベートで偶然出会い、ビジネスシーンで敵対する相手として出会う展開の中、ふわふわ男子と出来る男の2パターンで登場するオダギリジョーの破壊力が凄まじくて、ドラマを視聴した人の多くが惚れたと思う。多分。おそらく。
そして、町内のラジオ体操で遭遇した数学好きのふわふわ男子(オダギリジョー)に、身の上話をした「とわ子」が思わず泣いたとき、ジョーが差し出したのは「ひびのこづえ」さんのハンカチだった。


即座にわかった。


なぜなら私も「ひびのこづえ」さんのハンカチを持っているからだ。
ひびのこづえさんはコスチュームアーティストで、衣装を作る人。私の認識では、NHK教育の「にほんごであそぼ」に登場する、小錦が着ている服その他を作る人というイメージ。カラフルでポップで、可愛い。20代の頃、すごく惹かれて同じ柄のハンカチを2枚も買って、保存用にしようとした。その話を自分のblogか何かに書いたら、高校の同級生でJR名古屋高島屋9階のタオル売り場で働いている子が「ひびのさんのハンカチ、売れないから奥に引っ込めたとこだったよ」とコメントをくれた。


そう。そういう感じ。


パッと見、「なにこれ」なんだけど、実はかわいいんだよって教えたい感じ。
それがこのドラマの全体的な印象。




■二度と回想されない「かごめ」

「とわ子」の物語は、幼少期からの幼馴染で、親友で、家族と言えるほどの関係性を持つ「かごめ」との物語。


それはタイトルには入ってこないけれど、大事な核。


「かごめ」は市川実日子さんが演じていて、彼女以外に適役はいないし、どのドラマでもだいたい「彼女以外にはできない感じ」がすごくて納得感がある。私の数少ないドラマ視聴(最近だと「アンナチュラル」「凪のお暇」など)でも毎回そう思う。


そして「とわ子」も同様で、「かごめ」がいないと始まらない。


「ふつう」の世界では息ができず、はみ出して生きている「かごめ」には、建築士であり建築会社社長の「とわ子」が眩しい。


でも頑張って歯を食いしばって会社の代表を務める「とわ子」には、人を夢中にさせる空気を持つ「かごめ」が愛おしい。


二人の完成を形容しないで最終回を迎えるのかと思いきや、最終回にその落とし所が待っている。はっきりとは言わないし書かれないし、それはすべてがそう。
仲の良い女性が2人いたら、彼女たちの関係を恋愛と呼ぶのか、友情と呼ぶのか、その呼び名に意味はあるのか、ないのか。


その伏線回収シーンにすら、「かごめ」の回想映像はない。潔い。すべてが潔くて、とても味わい深い。




■一人でも生きていけるけど、寂しい

「とわ子」が4回目の結婚をするのかどうか? が最後の大きな主題。


一人で生きていけるほど強く成長したけれど、でも、一人じゃさみしい。だったらパートナーは必要?


まだとわ子、42歳(多分)。結論を出すには、早そう。


今は、そういう結果になったけど、5年、10年を経て、違う心境になるのかもしれない。でもその気持ちさえ、大事に包み込んで、育てて行けばいい。
そのあれこれはドラマの中で動くチャーミングな人たちを見ながら、素敵な音楽を聞きながら、笑いながら考えるのがいい。


私が人生で初めて松たか子を意識したのは、「キムタクと観覧車に乗っているドラマのワンシーン」で、それが何かを調べてみるとおそらく『ロングバケーション』だとわかった。当時彼女は18歳。キラッキラで若くて可愛かった。


今の松さん(44歳)は、年相応に体が丸くなり、法令線もちょっとあって、「将来ほっぺがもうちょっと垂れそう」な雰囲気を感じさせながら、それでいてめちゃくちゃチャーミング。この声の可愛さは何だろう。フルーツサンド食べてるシーンなんか「ヤマザキのCMかな」と思うほど神々しかった。いやいや。


その変遷ですら、味に変わる。人は年を重ねるほどに味わい深くなる。若くてキラキラした人が丸くなり、経験を経て懐が大きくなり、でも可愛かった時の笑顔を忘れない。


一人じゃ嫌な時もあるし、誰かに起こしてもらうこともある。それで起き上がって、手を離して、また一人で歩いていける。


そういう「いろいろ」を、コメディを交えて描き通してあって、ずっと眺めていたい空気に包まれていた。


また、時間があるなら1話から振り返りたい。

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