見出し画像

#蜜蜂と遠雷と恋について

恩田陸さんの傑作「蜜蜂と遠雷」が映画化されるそうだ。

恩田さんといえば、「夜のピクニック」とか「六番目の小夜子」、「ネバーランド」、「ライオンハート」、「ねじの回転」などなどなど、とりあえず読んだことのあるタイトルを並べてみたけれど、十代の淡い青春メモリーみたいなのから、トリックを散りばめたミステリーみたいなやつとか、いろんな作品がある。

でもどれもかなり昔に読んでいて、なかなか内容まで思い出せない。。。表紙の絵だけは覚えているのだけど。

ただ、「蜜蜂と遠雷」は最近の作品で、個人的にも一年前に読んだばかり(ばかり?)。

というわけで、まだまだ記憶に新しい。そして、ピアノの曲名も、コンクールのことも詳しくないけれど、文字のみで紡がれるクラシックピアノの曲の雰囲気、転調、そして響が脳内にぐわっと描かれることへの驚きがすごかった。どうしてこんな風に書けるんだろう。ここに音はないはずなのに。

この作品は浜松で3年に一度開催される浜松国際ピアノコンクールをネタ元にして、若手ピアニストたちの葛藤、苦悶、挑戦、成功を描き出す小説。主人公は一人ではなく、何人もの挑戦者のストーリーを追うオムニバス形式。演奏者の内面を表現しながら、選ぶ曲への思い入れ、こだわり、演奏風景までを丁寧に物語る。2017年に直木賞と本屋大賞を受賞した、話題の作品。

この作品に関して、恩田さんの作成秘話を読んだことがあるのだが、特にコンクール関係者への取材はしていないらしい。ただ、ひたすらに何年も浜松国際ピアノコンクールを聴きに来たと。もともとピアノへの造詣が深い方なのですね。見て、感じて、描くって素敵。

ピアノ演奏中の描写は本当に長く具体的であり抽象的。音の響きだけではなく、演奏者の心情とか、記憶、葛藤までが言葉を通して語られ、セリフはなくとも非常に情熱的。こんなすごいもの、映像になるのかな?

。。。というのが最初の感想。しかし、作り手たちはこの作品が話題になった瞬間から、「どう映像化するか」を考えていたのだろうか。

登場人物は役者が演じるけれど、ピアノ演奏は本物のピアニストたちが行うという。私は全然詳しくないのでお名前を拝見してもピンと来ないけれど。。。

そういう「これからできるもの」への期待と共に、恩田さんの小説について私が一つ感じていること。

「蜜蜂と遠雷」にも、恋愛要素はある。少しだけ。いや、描写が淡いだけで、出会いとしてはとても運命的。幼少期にピアノ教室で一緒だった仲良しの男女が、このコンクール会場で運命的に再会する。そして恋に落ちる。でもそれは「出会いの発端」を少し書いただけで、あくまでメインはピアノ。

恋愛小説を読み漁って来た人は「え、これだけ?」と感じるかも、と思う。

それくらい淡い表現しかない。

しかし、それはメインのストーリーの演出程度なので、それくらいでもいいのかもと思う。というか、物足りなさを感じつつも、それはそれでいいやって感じに持っていける恩田さんの力量が素晴らしいと思う。

恋が絡むことで、演奏に若干の影響がでる。その様子を描きたかったのかな。それとも、ヒロイン、亜夜(名前覚えてた!)の成長に、マサルの存在がどうしても欠かせなかったのか。ピアノへの愛情を再認識するために、母親に変わる恋人の存在が必要だったのか。わからないけれど。

恋はすべてではない。でもちょっとだけ必要でもある。というのを、感じたなあと思い出したのだった。

#恩田陸 #蜜蜂と遠雷  

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?