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読んだ本の話(小説、漫画、エッセイその他)

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読みやすい本が好き。バックグラウンドは少女漫画。小難しいものは苦手。だけれども、頑張って色々読んでいます。読書の記録と感想。
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記事一覧

【読んだ本の話】チムグスイさんの本から、「何もしないこと」の大切さを学ぶ。

植物療法士であり、ハーブティーやエッセンシャルオイルのお店を営む「チムグスイ」代表の鈴木七重さんの著書、「私を整える」を読みました。 本屋で平積みになっていたのです。 私、ここのハーブティーを買ったことあるわ〜くらいの軽い気持ちで手に取りました。 自律神経系の不調とは付き合いが長いので(20歳くらいの頃から数年おきにやってくる何か)。スルスルと文章が脳に溶け込んでいきます。 体の声を聞こう、何もしない日を受け入れよう 人が現在の形になるまでに、想像も絶するほど長い

【読んだ本の話】長田弘さんの読書論。時空を超えて、今日も友達に会いに行く。

以前、この記事を書いた時のこと。 読んでくださった方から、「長田弘さんの詩集がおすすめですよ」というコメントをいただきました。 「人から勧めていただいた本は全部買う」のが私のモットー。たとえ難しくて読めなくても、それはそれ。まずは触れてみたい。 そこで、購入した長田弘さんの本「読書からはじまる」。本を読むことについて深く深く掘り下げたエッセイです。 詩集をお勧めいただいたのに、「詩が読めるかどうか不安」な私はエッセイ本を選びました。発言と行動が微妙に違って申し訳あ

【読んだ本の話+α】陶芸家・鹿児島睦さんが生み出す、今まで見たことがない世界に触れる。

今回は、令和6年2月24日(土)~令和6年4月14日(日)まで、静岡県三島市で開催中の陶芸家・鹿児島睦(まこと)さんの展覧会「まいにち展」を見た記録と。 ミュージアムショップで購入した本「鹿児島睦の器の本」(2017年発行/美術出版社)の感想です。 鹿児島睦(かごしままこと)さんの「まいにち展」へ 陶芸家でありアーティストである鹿児島さんを知ったのは、「陶芸好きな人がインスタで公開していた」器の写真を見てから。 鹿児島さんが作った素敵なお皿に朝ごはんが盛り付けられてい

【読んだ本の話】中島敦の短編を読んで才能に唸る。語彙は難しくても文章が明快。

読書の師匠がいます。 もう70代半ばに入っている骨董屋さんで、江戸時代以降の焼き物への知識が深い。その人は読書の鬼でもあり、色々な本を貸してくれる。大体読めません。 その中の一冊、中島敦の「李陵・山月記」という短編集を読みました。 「山月記」は国語の教科書に載っていることが多いので、ほとんどの人が触れてきた名作ではないでしょうか。古代中国、自分の詩の才能を信じて拗らせた男子が発狂して虎になり、山で生きているところに昔の友人が遭遇するエピソード。 それもいいのだけど。

【読んだ本の話】平松洋子さんの「日本のすごい味」を2冊、読む。まさにすごい取材

「おあげさん」を読んでから、平松洋子さんが書くものが気になってあれこれ読んでいます。 最近読んだのがこちら。2017年に2冊が同時刊行された「日本のすごい味」。 雑誌「考える人」に連載された記事を加筆修正して再編集したものです。 仕込みの時間から張り付く取材力 日本各地で生産される地元の味、伝統の味、親しまれるお菓子、新たに生み出した味など、「その場所でしか出会えない」味を探究する食のルポルタージュです。 登場する食材は千差万別。 いちごのショートケーキから駅弁

【読んだ本の話】一田憲子さんの「大人になってやめたこと」から緩やかな衝撃を受ける

明日でいいことは今日しない さてさて。 私はまだ人生半ば、折り返し地点なので。「これまでの人生はこれでよかったのか」と思ってしまうし、大成なんて程遠い、世界の片隅で密やかに生きていることを満足もしていなければ憂えてもいない宙ぶらりんな状態です。 そんな自分が、ライターの一田憲子さんのことを「いいなあ、すごいなあ」と思うことは自然なこと。著書を何冊も出していて、暮らし周りのライターとして名を挙げていて、今まで知り合った何人かのライターさんが「憧れはあの人」と言っているの

【読んだ本の記録】宮城谷昌光先生の「夏姫春秋」にやっと辿り着いた

浜松市在住の直木賞作家、宮城谷昌光先生。 近所の偉大な先生! ということで、ずっと著書を読もうと試みたものの。ノー知識で挑んだ「三国志」で跳ね飛ばされ(代わりに吉川英治さんの三国志を一巻だけ読んで満足するというダメっぷり)、その他いろいろ図書館で借りては全く自分の歯が立たない状況にがっかり。 でも、知人から「いきなり長編小説を読もうとしちゃダメ。エッセイや読みやすい短編から慣れるべき」とアドバイスを受けて、宮城谷先生の自伝エッセイ2冊と、比較的短い「花の歳月」を読んでみる

#蜜蜂と遠雷と恋について

恩田陸さんの傑作「蜜蜂と遠雷」が映画化されるそうだ。 恩田さんといえば、「夜のピクニック」とか「六番目の小夜子」、「ネバーランド」、「ライオンハート」、「ねじの回転」などなどなど、とりあえず読んだことのあるタイトルを並べてみたけれど、十代の淡い青春メモリーみたいなのから、トリックを散りばめたミステリーみたいなやつとか、いろんな作品がある。 でもどれもかなり昔に読んでいて、なかなか内容まで思い出せない。。。表紙の絵だけは覚えているのだけど。 ただ、「蜜蜂と遠雷」は最近の作

【読んだ本の話】マンガ編集者のクリエイター指南本からわかる一次情報に触れる重要性

気がついたらマンガが好きな人生を歩いていました 幼少期は「りぼん」と「なかよし」を愛読し、「別冊マーガレット」「花とゆめ」などを連綿と読み継ぎ、少年ジャンプをかじりながらかいつまんで色々読み。絵を描くのも好きだったし、漫画家になりたい!って思ったこともありました。 でも一度も漫画を描いていないので生半可な気持ちだったのでしょう。 大人になっても変わらず好きで、いい歳ぶっこいていまだに少女漫画やらなんやら読み続けています。そろそろ大人買いを通り抜けて大人課金です。本が増え

「カフーを待ちわびて」を読んだ

脈絡のない、インプットの記録をアウトプット。 原田マハさんのデビュー作「カフーを待ちわびて」を読んだのです。 初めて読んだ彼女の作品は、「楽園のカンヴァス」。それはそれは素晴らしい小説で、美術に造詣の深い、というかプロである原田さんの知識とセンスと言葉の巧みさを詰め込んだ、読み応えのあるアート・ミステリでした。 ピカソのことも、ルソーのことも詳しくないけれど、そして美術館の仕組みも知らないけれど、最後までワクワクし続けたことを覚えています。 で、その後、彼女が魂を注ぎ

【マイヤ・イソラと旅する手帖】を読んで。恋多きクリエイターの人生

マリメッコが好きです。 私が一番好きな柄は「Maija Louekari」さんという方がデザインした「シイルトラプータルハ」という緑色の植物デザインで、その生地を何度も購入してバッグやらポーチやらカメラケースやら作りました。 ※趣味がハンドメイド。リバティ生地で子供服をザクザク作った過去は彼方へ。 そのマリメッコのシンボリックなデザインを手がけ続けたのが、マイヤ・イソラ氏。今もアイコンになっている芥子の花「ウニッコ」の生みの親です。 彼女の人生を描き出すドキュメンタリー

私にいなり寿司をつくらせた「おあげさん」/平松洋子著

何を隠そう(隠したこともないが)。 いなり寿司をつくったことがなかった。 そもそもいいイメージを持っていなかった。なぜか? 幼少期から法事の集まりといえば「助六」がメインで、それらを食べるにつけ「甘い」「肉がない」「甘い」「酸っぱい」と辟易していた自分。 ※身内が亡くなってから49日の間は肉や魚を使わない精進料理を食べるべきで、その際いただく寿司は必然的に「助六」になるそうだ。 その総仕上げと言って良いのが、結婚後たまたま実家帰省中に叔父が亡くなった時。叔父は独身だっ

「地図と拳」の感想から。建築と時間と。

今年の初めに直木賞を受賞された、小川哲さんの「地図と拳」。 ご本人が書いた受賞の言葉を読んだときに、とても感心して(でも内容はすっかり忘れた)、Amazonで購入したものの届いて厚みにびっくりした。 最近やっとこさ読了。 あらすじは、旧満州の架空の町を舞台に、明治32年から昭和30年までの「そこに生きる人たちのそれぞれの物語」を時系列に、でもオムニバス風に集めた長編。目線は日本人だったり、中国人だったり、ロシア人だったり色々。満州に関わる多くの人の思惑が散りばめられている。

時は誰の手にもあるようでいて、誰の手にも残らない

著名な作品を目についたものから読んでいくのが最近のひそやかな目標で、そう言いながらも脇道寄り道、時には逆戻り。時間ばかりが過ぎていく。 図書館の児童文学書コーナーを横切ろうとしたときに、「そういえば読んだことがない」と手に取った「モモ」に感銘を受ける。 「時間泥棒から時間を取り戻す」くらいの認識しかなかった私に、このストーリーが壮大な問いを投げかけてくるのだ。 「さて。私は何のために生きているでしょうか」 ○○○ 作者の根底にある価値観が、私のカチカチに固まりつつあ