劇場版スラムダンクを見てきました。

※このnoteは多分にネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方は今お帰りください。



本日12月3日に劇場版THE FIRST SLAMDUNKが公開された。

事前のゴタゴタがあったため、やや水を差された気分ではあったが、声優の交代などどうでもいい私にとってはどこ吹く風。
16時の上映チケットを購入し映画館へ向かった。

上映30分前に映画館に着くと、どうやら一つ前の時間の上映が終わった直後だったようで、見終わった人たちが出てきた。
その中で高校生ぐらいの男の子と50代ぐらいの親子連れが楽しそうな顔をしている。
お父さんが楽しそうに子供に話す、「実はピアスって言う短編があって〜、リョータの話なんだよ」と。
その表情を見た時点で私は「ああ、この映画は多分間違いないんだな」と安堵したのである。

この映画のプロモーションは特殊だった、なんせ事前にストーリーについて一切話が漏れ出てこない。

今スラムダンクを映画化すると言う意味、そして目的とはなんなのか。
誰もが求めていたものはそこにあるのか?

見に行った人は全員不安と期待の両方を持ちながら映画館へ足を運んだに違いない。

見た感想を先に一言だけで言い表すと

「俺たちの見たかったものがここにあった」

だろう。

※まだ映画見てない人は今すぐ見に行きなさい、まだ間に合います。

映画が始まる、舞台は沖縄から始まった。

幼少期の宮城リョータの姿、そして宮城の兄らしき人物が1on1をしている光景だ。

スラムダンクは非常に特殊な漫画である。
劇中に登場するキャラの中で家族構成がわかるのが赤木だけと言っても良いほど各キャラのパーソナルな部分はほぼ語られたことがない。
今思うとこれはわざとだったのか?とも思えてくるほどだ。現に宮城が沖縄出身であると言うことは本編では語られていなかったし、父親と兄を立て続けに亡くしていることなども誰も知らなかっただろう。
むしろ原作の中では赤木三井の3年生と桜木流川の1年生という濃い二つの軸に挟まれ、2年生の宮城の影はやや薄かった。
井上先生の意図を読むと「漫画と同じ切り口にはしたくなかった」と言う旨を話されている。

そう、今回の映画の主人公は桜木花道ではなく宮城リョータなのだ。

宮城と家族が抱える重い過去、赤木が向き合った周囲との温度差、三井が背負った寂しさ、原作でも少し触れられた部分を交えながら、

映像が始まって10分ぐらいだろうか、湘北のメンバーが宮城、三井、赤木、流川、桜木と井上先生の手書きのような鉛筆画のアニメーションで1人ずつ揃っていく、全員が集合し「湘北高校」と文字が出る。そしてそのあと描き出されたのは山王工業のメンバー、つまり

本作は湘北高校対山王工業の試合が描かれているのである。

そう、原作ファンが待ち侘びた山王工業戦がついに映像化されたのだ。このサプライズを死んでも表に出さなかったスタッフに敬意を表したい。おそらく謂れのない批判を多数受けたにもかかわらず、あえてこの姿勢を貫けたのは今作への自信があったのだろう。

このシーンが出た瞬間叫びそうになった、俺はこれが見たかったんだと。残りの人生の憂いが一つ消えた気持ちだった。

おそらく一緒に見ていた人たちも同じ感情を持ったのだろう、みんな声は出さずとも椅子がガタッと動く音がした。
みんな待っていたのだこの時を、動く沢北を、動く河田を、動く深津を。
 
そして試合開始、試合内容やルールは連載当時ものを尊重してそのままにしていたようだ。
もちろん試合の開幕は「イッ」からのアリウープ、そして深津による速攻「同じ2点だぴょん」で始まる。

 今回の映画の懸念点として3Dモデルを使用している部分を挙げている人がいた。
だが今回のこの映画は試合の臨場感、リアルタイムの各選手の動きを見せたいと言う意図があったのだろう。
それは手書きのアニメーションでは不可能だ、今回の3Dモデルの使用は非常に理に適った選択だったと思う。

実際に試合はスピード感を感じる内容に仕上がっている。井上先生本人がかつて「リアル」の中でかつてのスラムダンクのアニメの試合描写に満足していないそぶりを垣間見せていたこともあったので、バスケットの試合のスピード感というものを大切にしたかったんだと思う。

原作と同じように得点を重ねる両チーム、桜木の動きのぎこちなさなどを見ると「シロート桜木」と言う言葉の意味がよくわかった。
ちゃんと原作のコマを彷彿とされるカットが端々にあり、重要なセリフは原作そのまま。「そうそうこれが見たかったんだよ」と思わず声が漏れそうになる。
ただ今回のスラムダンクはギャグパートと美紀男と桜木の対峙は極力省き、後半戦を分厚く取り上げ、その中でこの山王戦に特別な思いを抱く宮城と赤木の回想が挟み込まれていく。残念ながら魚住のかつらむきはカットだ。

そして原作のラスト、試合時間残り1分を切ってから試合終了までセリフがなくなったシーンだが、ここは映画版でもしっかりセリフなしで展開した。この部分の描写の濃さはお見事だった。

試合展開ももちろんそのまま、桜木のブザービーターで決着。

そして最後にサプライズ、原作では背中の怪我のリハビリをする桜木と、日本代表のユニフォームを見せびらかせる流川というカットで終わった。今回の映画ではアメリカへ留学した沢北が、現地のコートで記者の質問に答えるシーンが流れる。アメリカではポイントガードに回った沢北の対戦相手が、同じくアメリカへ渡った宮城リョータというところで映画が終わる。この時点で両者が何歳なのかはわからないが、未来を描いた貴重なシーンとなった。

感想

 まずもう山王戦を映像化してくれたことに本当に感謝を、魚住のシーンや「好きです、今度は嘘じゃないっす」がなかったのは少し残念だったがよく纏まっていた。赤木のを茶化す存在も同級生から先輩に変わり、よりねちっこいものへ、逆に三井がバスケ部に復帰する部分はあっさり仕立てたところは個人的に評価が高い。
 宮城を主人公に据えた点もgood、ポイントガードという司令塔の視点で試合が展開されていったところも大事だったのだろう。ただ少し気になったのは宮城のバックボーンがあまりに重いところ、あれは切なすぎる。

 新声優陣は概ね良好、問題視されていた部分ではあるが、「声優変わったから見ない」とか言ってる人はスラムダンクのファンでもなんでもないのでほっといていいかなと思いました。ただ1箇所だけだけども、演技の部分で最終盤桜木が沢北の速攻を後ろから止めて「返せ…」というシーンがあるが、ここの「返せ」の言い方はちょっと解釈不一致だった。背中の激痛に耐え走った桜木のシーンなのでもっと絞り出すような声でやってほしかったと思う。

3Dモデルを採用した理由も試合を見たらしっかり腑に落ちたし、原作の再現度もかなり高かったように思う。
より湘北対山王工業の試合をリアルにしたかったという思いが伝わってきた。これを理由に見ないと言っている人はあまりに損していると思う。

本当に見に行ってよかった、ただただイノタケ先生に感謝を、ありがとうスラムダンク。
 

この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?