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濱口竜介デー 2024.05.06

朝7時起床。ようやくのゴールデンウィーク、ならぬゴールデンデイ。朝から洗濯機を二度回して、溜まっていた洗濯物を片付ける。昼前に家を出る。「虹の仏」でカレーが食べたかったが、めちゃくちゃ並んでいたので断念。十三に行き、第七藝術劇場へ。濱口竜介「悪は存在しない」を観に行く。

僕が着いたときには既に立ち見の席しか販売しておらず、ネットで予約しておいてよかった……と思う。こうしてミニシアターにたくさんのお客さんが詰めかけ、立ち見でもいいから見たいという情熱が、この国にまだ残っていることに救われるような気持ちになる。
ネタバレしないように「悪は存在しない」に触れる。とにかく石橋英子の音楽と、濱口竜介の映像とのマッチングが素晴らしい。
映画が宿命的に抱えているであろう恣意性との相剋が凄まじく、もはや超越的な何かの気配さえも感じるような映像世界だった。自然を前にして畏怖をするような感情が、映画という媒体から伝わってくる。恐ろしい映画だった。
これを撮るってどういうことなんだ、と訳がわからなくなる。濱口竜介、すごすぎる。

茫然としながら電車に乗って九条に移動。夕方からはシネ・ヌーヴォで濱口竜介「親密さ」の上映。今日はとことん濱口竜介デーである。
シネ・ヌーヴォに着いたのが早く、上映の1時間前だった。シアターでは「悪は存在しない」が上映されていて、薄く開けられた戸から音声が漏れ聞こえてくる。思わず耳をそば立て、聞き入る。
目は外の景色を追う。雨が降っていて、濡れた地面の上を野良猫が歩いている、車が走り抜ける。

不思議な時間だった。

「親密さ」はやはりオールタイムベストの映画だった。もう何回も見ているが、今回は一番ストーリーが頭の中に入ってきた。
「世界って、情報じゃないでしょ」という言葉にハッとなり、ストンと心に落ちていく。
何より、夜明け前の長回しのシーンとラストは何度見ても心から感動する。この世界に生きる困難さと美しさとのそのすべてがこの映画にある。

帰りは電車に乗りたくなくって、すぐに家に帰りたくなくって、九条からまっすぐ歩いて家を目指した。川を渡り、堀江を抜け、難波の喧騒を歩き、上町の坂を登り、そこから天王寺を目指した。1時間半、たっぷりと映画のことを考えて帰った。

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