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43歳、自分の好きを知り、自分を慈しむためにエルメスに行った結果

今年の大物、今年のうちに。これは、今年ラスト(11月末)の大物購入の記録。

毎度のことながら、備忘と考察のために試着した商品については画像を貼らせていただいています。写真は公式サイトからお借りしました。


ためらい

エルメスのカシミヤシルクというものの存在を知ったのはちょうど1年前、初めてカレ90を購入した時のこと。

スカーフが見たい、とだけ言った私に真っ先に紹介されたのは【カレジェアン カシミヤシルク】、通称カシシルだった。カレと同様に鮮やかな色出しと緻密な絵柄が特徴の、夢のようにふわふわと滑らかな肌触りのバカでっかい布。しかし、すでにシルク100%の光沢にすっかり目を奪われていた私はあっさりスルーした。

その後まんまとエルメスの魅力にハマり、ちょこちょこ情報を探すようになると、カシシルの魅力をそこここで目にするようになった。曰く、冬に首元に巻くのはもちろんのこと、春秋はパッと羽織るだけで温度調整に大活躍。薄手で嵩張らないから、夏でも冷房避けに持ち歩く人が多いらしい。

カレを日常に取り入れたことで、スカーフというアイテムが割と服装を選ぶことに気づき始めたところだった。オンかオフかで言えば、圧倒的なオン。カジュアルに着崩したっていいとは思いつつ、どうしても毎度ブレザーに合わせてしまいがち。これがマットで柔らかいカシシルなら、もっと気楽な使い方もできるんじゃ?

言わずもがな、ネックはお値段。カシシルいいな〜、でもさすがにお高いしな〜、ストールはお気に入りあるし別に買わなくたって困るわけじゃないしな〜、でもやっぱいいよな〜、いやいやでも…。

春が過ぎ、猛暑の夏にはすっかり忘れていたカシシル問答はしかし、お気に入りの冬アウターを手に入れた途端ひょっこり再浮上した。思い出すのは、自問自答ファッション教室で聞いた「冬コーデのセオリーは基本ワントーン。インナーとアウターの色は揃えて小物で差し色がおすすめ」というフレーズ。冬のオールブラックコーデ、差し色にカシシルが入れば完璧なのでは?

いやそうは言ってもさ〜、もはやカシシルってショートブーツと同じ値段よ?何も今年買わなくても、この冬は手持ちのストールで乗り切ってまた来年考えたらいいんじゃない?…そう脳内で自己完結しようとしたところで、はたと気がついた。

私、カシシル試着したこと、一回もない。

…おいおいおい、何寝ぼけたこと言ってやがる。実物を知りもしないで買うの買わないのぎゃいぎゃい抜かしやがって、どこのすっとこどっこいだ。本当に欲しいかどうかなんて、実際に着てみなきゃわからないじゃないか。

私の中で、謎の江戸っ子モードが発動した。そんなYAZAWAは飼っていない。いやでも、まさにおっしゃる通り(だから誰?)。とりあえず、試着だけでもしてみるか。話はそれからだ。そんなわけで、まずは下見に出かけることに。てやんでい。

出会い

1年前のエルメスデビュー時と大きく違うのは、某情報番組じゃないけれど、「何色の何」を探すか前もって明確にしていたことだ。

冬コーデの差し色にするなら、青がいい。青は教室でも着ると決めた色だし、あまりに好きすぎてコンセプトにも入っている「湘南」を表す色でもある。今回のお目当ては、青系のカシシル。事前に公式サイトで予習もして、目についた商品をいくつかスクショしておいた。うん、我ながら成長を感じるね。

実はこの数ヶ月前にいわゆる「塩対応」の洗礼を受けていたこともあり、次にお店に行く時はできるだけ目当てを絞り込んでおこう、と決めていたのも大きい。おそらくエルメスが超品薄だった頃、そうとは知らずに目的もなくうっかりふらりと入ってしまった私は、なかなかにパンチの効いた対応を食らっていたのだった。

今日の雲行きはどっちだ、と若干ビクつきながら店舗に着いてみると、入店制限はかかっていなかった。「店内をご覧になってお待ちください」と言われて数分後、「お待たせ致しました」と現れたのは、にこやかでとても気さくなベテラン店員さんだった。どうやら今日は大丈夫、とホッと胸を撫で下ろす。

それにしても「青系のカシミヤシルクを探しています」と伝えられたのは、大きなアドバンテージだった。その一言で店員さんが「協働モード」に入る。店内に出ている品を(おそらく表に出ていないものも思い浮かべつつ)素早く見繕い、私の好みを探りつつ、一番似合うものを的確に見極めてくださる。一流の店員さんは、真剣に品を探す顧客にとっては最高のパートナーなのだと思い知らされた。

最初に試着したのは、サイトで見て一番気になっていたこちら。

キャメルと青のコントラストがとても綺麗で、好きな組み合わせ。ただ、犬がかわいいなと思っていたのだけれど、巻くと大半の犬はどこかに消える。巻き物あるあるだ。そして、巻いた姿の第一印象は「抽象柄」。何が描かれているかよくわからず、なんとなくいろんな色がごちゃっと盛り合わされている感じになる。

お次はこちら。

枠の青とドラゴンのスカイブルーが良さそうだな、と当たりをつけていた。が、差し出す店員さんの手があまり積極的ではなく、おや?と思っていたら、巻いてみて納得。意外や意外、面積の多い地の色が一番印象に残る。しかもサイトと実物で色がかなり違っていて、全体的にややくすんだ色出し。これは違うな、と除外した。

もう一つ、サイトでいいなと思っていたものがあって…と目で探し、棚にあったのに実物だとなかなか気づけなかったのが、こちら。

サイトでは青の印象が強く、柄も繊細で素敵だなと気になっていた。が、実物の第一印象は「オレンジ色」。予想以上に抑えた色味の中で、縁と動物の色が一番目を引くというまさかの事態。どうやら、サイトの商品写真の方が実物より明るくはっきり色が出る傾向にあるようだ(注:私見です)。

一応巻かせてもらったものの、柄が緻密すぎて離れて見ると煙ったような淡い印象を受ける。「もうちょっと、コントラストの強いデザインが好きですねぇ」と正直に言うと、「そうですね、私もお客様にはその方がお似合いになると思います」と店員さん。

そう、どうやら私はある程度色なり柄なりがくっきりぱっきり出ているものの方が好みだし、似合う(と思っていた。でも白黒みたいなバッキバキのコントラストは実は似合わなくて、自分の許容カラー範囲でギリギリ最大限の対極を攻めたがっている、と知ったのは後日スギサキさんのカラーレッスンでのこと)。

話を戻そう。事前リサーチはいずれも微妙な結果となってしまった。はて、と思いながら店内を見渡した時、あ、と声が出た。

この柄の、ちょうどロイヤルブルーが表になる形でファサッと壁のラックにかけられているのが目に入った。見覚えはなかったから、サイトではスルーしていたのかもしれない。「あちら、試着させていただけますか?」と尋ねると、そうでしょうとも、という表情で「もちろんでございます」とサッと動く店員さん。

巻いてみると、いい。とてもいい。

第一印象が青と黄のコントラストで、一目で気に入った。黄色がゴールドっぽく見えるのがまたいい。柄の大きさやバランス感もちょうど良くて、巻いても色柄がごちゃっとならず、ちゃんと何が描かれているか識別できる。縁の模様はどことなく植物のようにも見えて、優しげな印象。それでいて色遣いはハッキリと大胆。

ものすごく、いい。

「よくお似合いです」と納得したように微笑む店員さんに、じゃあこれを、とうっかり口から出そうになるのを慌てて飲み込んで、「品番を控えていただけますか」とお願いした。めちゃくちゃ感じの良い接客に、好みどストライクの色と柄。まさかの、出会えてしまった。嘘。どうしよう。

問い

あの柄、一体何が描かれていたんだろう?帰宅してから品番をもとに調べてみる。

ドレサージュ・トレサージュ。

名前はどうやら造語のようで、それぞれの単語は馬術に関する何らかと、手編みの革製品にまつわる何らか…要するに、よくわからない。

店員さんは、「私は最初にこちらを見た時、アメリカ先住民の手工芸みたいな印象を受けたんですよね…ドリームキャッチャーみたいな」とおっしゃっていた。縦横に走る縄目模様は、私の目にも革というより縄のように見える。そして、ところどころに感じるメタルの輝き。青と、縄。…海面と、船のロープ…?あ、と思った。

同じ模様でも、色違いだと全く印象は異なる。

青がいい。絶対、あの青がいい。

それにしても、カシシルの肌触りときたら!首に巻いた瞬間の、包み込まれるようなあの滑らかさ。守ってくれる、という表現がぴったりだった。加えて美しい色柄といい、容易に想像できる使い勝手の良さといい…たった一回の試着でいとも簡単に魅力に取り憑かれてしまった。これは、集めたくなる気持ちがわかる(どうやって?というのは置いといて)。

ドレサージュ・トレサージュはこの秋冬に出た、とのことだった。となれば、来年になってもまだ買えるかどうかは全くの未知数。第一、こんなにピンと来たものを上回るほど好きなデザインは果たしてあるのだろうか。そうだ、他の店舗も一度見てみよう、と後日2店舗目の試着に向かった。

2店舗目には、ドレサージュ・トレサージュはなかった。それ以外で店頭にあった青っぽい品はすべて試着させてもらったが、どれもドレサージュ・トレサージュ以上ではなく、ただただその魅力を再確認する結果となった(ちなみに2店舗目で接客してくださったのも、めちゃくちゃ感じの良いベテラン店員さんだった)。

さて、どうしよう。

ちょうどその頃仕事では、9月から2ヶ月以上続く山場にいい加減音を上げたくなっていた。当初10月頭に予定されていた大きな会議の準備に忙殺されていたのだが、資料の大幅な方針変更が幾度となく入るうち、ついに会議自体が11月下旬まで延期。遠のくゴールに向かってふらふらと走り続けている状態だった。

まぁだからと言って、演歌を歌うというほどではない。だけど、1年近く気になり続けたアイテムにこれ以上ないほど好きな色柄が見つかったのなら、それはもう、手に入れたっていいんじゃないだろうか。それに今カードを切ったとして、支払いまでにはちょうどボーナスが入る、はず。貯金を崩すことはなさそうだ。

ふと、あすみさんの星読みでのアドバイスが頭をよぎる。しんどくなりそうな時には、牡牛座の月=私のインナーチャイルドを思いっきり甘やかすといいらしい。それには、五感をフルに満たすこと。たとえば、めちゃくちゃ美しいものを見たり、真に上質なものを身につけたり。カシシル…ぴったりじゃん…。

ダメ押しでムーンプランナーを見てみれば、件の会議終了後に直近で店に行ける日は、ちょうど満月なのだった。驚くことに、なんと時刻もほぼぴったり。

カードは、出揃った。よし、行こう。

お迎え

そんなわけでなんとか無事に仕事を片付けた後、最初に試着をした店舗へ。折よく出迎えて下さったのは、あの時接客して下さった店員さんだった。

こんな経緯で、12月のカラーレッスン受講前に思い切ってお迎えしたという次第。たとえ私に似合う色じゃなかったとしても身につける!と息巻いてレッスンにも持参したら、スギサキさんからまさかのめちゃくちゃ似合う色認定を頂いた、というとっても嬉しいお話。

しかしこれ、本当に本当に本当ーーーーーーーに、買って良かった。

クローゼットの扉を開けて目に入るたびに心が満たされて、豊かな気持ちになる。そして、これにふさわしいクローゼットを育てていこう、と静かに誓いたくなる。使うたびに愛着が増すし、何度も飽きずじっくりと柄を眺めている。

私には、やっぱりこれが船のロープみたいに見える(特に上の輪っか)。でも、どこか腕時計のように見えなくもない。

青・茶・黄の細かい模様は植物っぽくもあり、メタルっぽくもある。下の白っぽい縄目はロープのような…?

こちらの右上・右下のブルーグレーのウネウネは、私には二重螺旋を想起させる。左端の茶の模様は、植物っぽい柔らかさを感じて好きだ。

2度目のエルメスで、自分が心から愛せる品にまた出会えたことが本当に嬉しい。1年に1度、こうして豊かな気持ちになれる美しい布を探しに行ってみるのもいいかもしれないな…なんて、巨大なフラグを立てて、2023年の締めとしたい。






カシシルに合わせているショートブーツを買った時の話。

コートは100着試着して買ったよ!



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