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ヨーロッパのECファッションリーダーに急伸したSHEIN、過酷なEUデジタル規則の標的に①

今回は中国のオンラインファストファッション小売業者SHEINについて、2本立てでお送りします。


まずはこちらのニュースをどうぞ。


SHEIN、ZARA、H&Mがスペインのオンライン・ファッション市場をリードしている

ドイツのコンサルタント会社ECDBの調査でも、ヨーロッパにおける電子商取引は2027年までに7,560億円を超えることが明らかになっている。

欧州のEコマースは成長を続けており、世界デジタル経済の重要な柱としての地位を確立しつつある。ノルウェー、英国、ドイツ、オランダといった国々が先頭を走る一方、欧州大陸の南部や東部の小規模経済圏は有望な可能性を示している。

ドイツのコンサルタント会社ECDBによる最近の調査では、欧州のEコマース市場が着実に成長していることが明らかになった。2027年には7,560億ドルに達すると予想されている。この成長を支えているのは、B2C電子商取引のユーザー数の増加で、2024年には5億5,000万人を超え、2027年には5億8,000万人に達すると予想されている。

売上高の分布では、アイルランド、チェコ共和国、ベルギーが欧州をリードし、ルクセンブルグ、スウェーデン、デンマークが僅差で続く。スペインは主要なリーダーではないが、GDPの約5.7%を占める成長市場である。これは、スペイン市場におけるEコマースの堅実な進展と、進化する欧州経済への貢献を反映している。

オンライン・ファッションの分野では、Eコマース大手のSHEINが、同調査で強調されているように、11%という傑出した市場シェアで、紛れもないリーダーであり続けている。同社は顧客中心の戦略により、より手頃な価格と配送時間の短縮を実現し、要求の厳しいスペイン市場で成功を収めている。
ZARAは前年の8%から6%のシェアで2位につけている。H&Mは4%から3%にダウンし、スペインのオンライン・ファッション市場で3位となった。一方、それ以外の企業は市場シェアを76%から80%に伸ばすことに成功している。

出典:How Fast Fashion Affects eCommerce in Europe(ECDB)

ECDBの報告書によると、2023年のスペインのオンラインファッション市場は、SHEINが6億6,000万ユーロの純売上高で首位に立ち、ZARAが3億3,500万ユーロで続いている。さらに、SHEINはイタリア、ポルトガル、ギリシャでも市場をリードしており、この優位性はスペイン国内にとどまらない。

欧州レベルでは、2023年のオンライン売上高が82億ユーロのSHEINが圧倒的で、H&Mが38億5,000万ユーロで続く。InditexのブランドであるZARA、Bershka、Pull&Bearが40億ユーロを上乗せし、ヨーロッパのオンラインファッション市場におけるスペインの存在感を確固たるものにしている。

出典:How Fast Fashion Affects eCommerce in Europe(ECDB)

スペインにおけるSHEINの成功は、オンデマンド・ビジネスモデルの効率性と、顧客体験を向上させるための欧州主要市場でのローカライズ戦略に基づいている。最近、同社はマドリードに事務所を開設し、4月27日からスペイン最大のポップアップストアをマドリードにオープンするなど、地元に密着した取り組みを実施し、スペイン国民との距離をさらに縮めることをめざしている。

Source:Shein, Zara y H&M lideran el mercado de la moda online en España(LIBRE MERCADO)


深掘り:なぜSHEINはヨーロッパで成功しているのか

上記紹介した記事はスペインに的を絞った内容ですが、SHEINの急速な成長はスペインに限った話ではなく、ヨーロッパ全域に渡っています。
以下、ヨーロッパ全体に視野を広げて深掘りします。

ECDBによると、SHEINがヨーロッパで成功している理由は3つあるようです。

成功理由その1

1つは、ファストファッションの性質により、購入する商品に対する消費者の関わり方が変わったことをSHEINはいち早く掴んだこと。
インフルエンサーマーケティング、特にナノインフルエンサーとマイクロ インフルエンサーを活用して、ターゲットユーザーであるZ世代とY世代の興味・関心・認知を得ました。

2023年米国におけるSHEINの世代別利用状況と認知度(ECDB)

ではどのように若い世代の心を掴むことができたのか。
それは、生産サイクルをスピードアップし、どのアイテムが最も消費者の反響を呼んでいるかを、ビッグデータを基に製造工場に即座にフィードバックする技術の活用です。SHEINはこれを「large-scale-automated test and re-order(大規模自動テスト・再注文)」(LATR)モデルと呼んでおり、最初の段階で小ロットを生産し、どのアイテムが大規模に流通させる価値があるかを見極めた上で、後から注文量を増やしていく手法を取っています。

しかしこの方法は、環境問題や労働問題で批判を集めている側面もあります。
EUも介入している事態となっていて、H&MやZARAでは製品価格の引き上げやサードパーティーブランドを含む自社サイトでのマーケットプレイスモデルへの移行などグリーンウォッシングに勤しんでいます。

成功理由その2

2つ目は、上記記事にもあったオンデマンド・ビジネスモデルの効率性と、顧客体験を向上させるための欧州主要市場でのローカライズ戦略です。

これには昨年株式の1/3を買収し提携したforever21の要素も大いに含まれます。 この結果、SHEINは現在、forever21の商品をウェブサイトで扱い、顧客により多くの種類と認知度の高い商品を提供しています。同時に、SHEINはforever21の実店舗でも商品を提供しています。これは、都心部での一時的なポップアップを通じてのみ実店舗販売に携わってきた同社にとって、新たな展開となっています。
SHEINはこの他にも昨年、イギリスのファストファッションブランドMissguidedも買収しています。

成功理由その3

3つ目は、経済的課題がより顕著な国ほどファストファッションのシェアが高いということです。しかしECDBでは「それだけが要因ではない」とも述べています。

2023年、オンラインファッションストア トップ100に占める特定のファストファッションブランドのオンライン純売上高の割合(ECDB)

ポルトガルはオンラインファッションストア トップ100の中でファストファッションのシェアが最も高い国で、30.5%という驚異的な売上高の大きな割合を占めています。同様に、スペイン(25.6%)、ギリシャ(22.3%)、イタリア(17.5%)、スウェーデン(16.1%)、デンマーク(16%)も高いシェアを示しています。

ポルトガル、スペイン、ギリシャ、イタリア…、これらの国に関しては〈経済的課題がより顕著〉というのは頷けます。しかし、スウェーデンやデンマークも売上高が大きいのはなぜでしょうか。

ヒントはH&Mです。

スウェーデンの企業であるH&Mは、純売上高の6.6%をスウェーデンで稼ぎ出している一方、ドイツ、デンマーク、オランダ、ノルウェーと、スカンジナビア半島に属する、もしくは隣接している国々がH&Mが商品を販売している上位10か国に属しています。

それはスペイン、ポルトガルも同様で、イベリア半島にはスペインのファッション複合企業Inditexが進出しており、Inditex発のZARAやPull&Bear、Bershkaなどトップブランドの多くがポルトガルやスペインのEコマースで成功を収めています。

ECDBでは、衣料品の生産拠点はヨーロッパ全土にあるが、消費者が注目する主要ブランドと最も近い場所にある国ほど、これらの店舗からの売上高比率が高いと分析しており、必ずしも経済状況がよろしくない国のシェア率だけが要因ではないと結論付けています。

北はH&M、南はInditexといったように、ヨーロッパにはすでにファストファッションが浸透しやすい土台ができているため、SHEINはその大きな翼を広げやすかったのでしょうね。

さて、そんなSHEINですが、ちょっと羽を伸ばしすぎたかもしれません…。
ラスボス…とでも言いますか笑、とうとうブリュッセル(EU)に目をつけられました。

次回はそのお話をしたいと思います。
乞うご期待!


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