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償いと決意の物語-『ブラック・ウィドウ』感想

ブラック・ウィドウ、ついに公開されました。

前作『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』から約二年、やっとMCUが劇場に帰って来ました。

大人の事情で一部の大手シネコンで上映がされないというのは残念ですが、それではとせっかくなので普段はほとんど行かないIMAXのデカい映画館で観てきました。ディズニープラスで配信中のドラマ『ロキ』などで今年に入ってからは新作MCU作品を接種はできましたが、やはり劇場で観るのは違いますね。大きなスクリーンと大音響で観るお馴染みの冒頭のロゴシーンでテンション上がりまくりです。

では、映画の内容について書いていきますので、ここからはネタバレ注意。



孤独な暗殺者は、なぜアベンジャーズになったのか…?

今回の映画は、タイトル通り、アベンジャーズの初期メンバーでクールで謎多き女スパイ"ブラック・ウィドウ"ことナターシャ・ロマノフが主役。アベンジャーズの初期メンバーで単独映画がなかったのは彼女とホークアイの二人。ホークアイは今度ドラマ化が予定されていますね。派手ではないけどいぶし銀の活躍でシリーズを支えてきた二人に遂にスポットが当たることになります。

とはいえ、ナターシャはご存知の通り『アベンジャーズ/エンドゲーム』でソウル・ストーンを手に入れるために命を落としました。今回の映画は、最新の時間軸ではなく彼女がまだ生きていた『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』の後の話と公開前に明かされていましたね。

本編ではより細かな時系列が示されていました。劇中のロス将軍とナターシャの会話によると、シビルウォーで描かれた空港での戦いからそれほど経っていないころ、キャプテン・アメリカが逃亡してホークアイやファルコンが”ラフト刑務所”に投獄されている状態で、シビルウォーのラストシーンでキャプテンがファルコンたちを脱獄させる前の限られた時間の話のようでした。ある意味ではシビルウォーの映画で進んだ時間軸の中に収まるかなりコンパクトなエピソードではありました。

ナターシャは、これまでMCUでオリジンが描かれておらず、初めからS.H.I.E.L.D.のエージェントの一人として登場しました。シリーズ内では断片的に”レッドルーム”という謎の施設で幼いころから訓練を受けて育ったということが示されていた数少ない彼女に関する情報でした。この映画ではその”レッドルーム”の正体も明らかにされます。「孤独な暗殺者は、なぜアベンジャーズになったのか…?」というキャッチコピー通り、この映画では謎多きブラック・ウィドウというヒーローの過去を描くことが一つの大きなテーマでした。

”レッドルーム”は、なんとなく察していた通り、世界中から適性がある少女たちを攫い、スパイとして利用するために訓練と洗脳をしているヤバい組織でした。ナターシャは幼少期からここで育てられましたが、結果的にら裏切り、S.H.I.E.L.D.に入ったようです。その際に、入隊最終試験として、そして自分の過去を清算するため、レッドルームのボス、ドレイコフを暗殺しました。しかしナターシャはこの時、やむを得ずドレイコフの幼い娘も巻き添えにしてしまったのです。彼女はこの罪をこの後も引きずっているようでした。もしかしたらこれがアベンジャーズとしてヒーロー活動をする理由の一つになったのかもしれません。

しかし、ドレイコフは生きており、レッドルームも健在でした。レッドルームは存在する場所を発見されないように某所の空中に浮かんでいる要塞のような施設として存在しており、ナターシャは今度こそこの忌まわしき場所を破壊しに向かいます。

そんな彼女の前に立ちはだかる敵、今回のメインヴィランとも言える”タスクマスター”。一度学習した動きを完コピする能力を持ち、キャップやホークアイのような攻撃を繰り出してくる強敵です。映画の冒頭ではシビルウォーの空港決戦でのアベンジャーズたちの動きを見て学習しているような描写もありましたね。タスクマスターはあまり詳しくない自分でも知っている有名ヴィランで、コミックでは時にはヴィランたちの教官も引き受ける傭兵というイメージでした。映画で登場したタスクマスターもナターシャと因縁があるキャラクターと聞いたので、”レッドルームの教官”的なポジションのだと観る前の私は予想していました。しかし、どうやらそうではない様子。どこかプログラムされたような動きで、与えられた任務を淡々とこなす、アンドロイドみたいな印象も持つキャラ。その正体はまさかのナターシャが一度目にドレイコフを暗殺した際に巻き添えにしてしまったドレイコフの娘でした。ドレイコフによって他の少女たちのように人間兵器として改造された彼女は、レッドルームの忠実で冷酷な戦士となっていたのです。ここでの視聴者のドレイコフに対してのヘイトはきっと最高調になったでしょう。彼はMCUの中でも純粋な”悪”として、かなり残虐なヴィランでしたね。そして、そんな意外なタスクマスターの正体は、ナターシャにとって心の傷として残っていた罪の証そのもの。

こんなふうに今まで伏せられていたナターシャの過去を少しづつ明かしつつ、その過去と向き合う戦いに身を投じる。『ブラック・ウィドウ』はそんな物語でした。


家族の物語

そして、もう一つこの物語の大きなテーマだった”家族”の物語。

レッドルーム育ちのナターシャは血のつながった母親とは幼少期に引き離されてしまっているので、劇中で登場した父アレクセイ、母メリーナ、妹エレーナは、ナターシャにとって”疑似”家族。予告編で登場した時はどんな関係なのかな…と不思議でしたが、ナターシャが小学生くらいの歳の頃に任務である街に潜入するために作られた偽の家族関係だったのですね。

余談ですが、幼少期のナターシャを演じていたエヴァー・アンダーソンさんはあのミラ・ジョヴォヴィッチさんの娘だそうです。まだ幼くも将来のナターシャの意思の強さを感じさせるような雰囲気はさすがですね。

妹のエレーナは、過去編ではまだ何も理解できていない小さな可愛い女の子でしたが、成長して姉のヒーローポーズを茶化すようなちょっと生意気でたくましい女性に成長していました。この映画では、ナターシャが彼女と再会するところから物語の歯車が大きく動き出し、中盤までは姉妹のバディムービー的な印象もありました。演じているフローレンス・ピューさん(まだ25歳なのですね。若い!)のかっこよくもどこかかわいらしさもある演技も相まって、かなり魅力的なキャラクターでした。

父のアレクセイは、”ロシア版キャプテン・アメリカ”のようなヒーロー”レッド・ガーディアン”の名も持つ誇り高き男…と思いきや、刑務所で過去の栄光を自慢するメタボな小汚いおっさんになり果てていました(キャプテンと戦ったという時系列も合わないのでやっぱりあれは彼の妄言なのでしょうか…)。ナターシャ&エレーナの手助けで脱獄はしましたが、うざい父親っぷりを発揮し、完全に年頃の娘に嫌われる親父ムーブをかましていましたね。元(疑似)妻も飼っている豚に彼の名前を付けるなど、コメディリリーフとして面白いキャラクターでしたね。しかし、ただのダメおやじではなく、疑似家族こそがまだ当時幼かった彼女にとって唯一の本物の家族と言うエレーナを不器用ながらも励ましたり、家族のために強敵タスクマスターとぶつかったり、後半にいくに連れて彼もかっこよく見えていきましたね。エレーナとアレクセイのシーンは、娘と父親という関係性の描写が好きなので私的お気に入りのシーンでした。

そして、母メリーナ。ナターシャやエレーナのようにレッドルームで育ったウィドウの一人で、レッドルームのシステムも担当している科学者でもあるというやり手の母ちゃん。レッドルーム潜入時には彼女が裏切った…?とハラハラさせてくれましたが、それは彼女の作戦で、レッドルーム破壊の一番の立役者とも言える頼りになるお母さまでしたね。

そんな家族との再会、そして協力によって目的を果たしたナターシャ。一度バラバラになった疑似家族ながらも、こうしてまた一緒になれたことをきっかけに、ナターシャは内部分裂した”もう一つの家族”、アベンジャーズを再結成させるために動き、シビルウォーのラストシーンの脱獄の手助け、そして、さらにその先のエンドゲームでの彼女の決断につながるのでした。過去編ながらもMCUの物語に深みを与えるさすがの一作でしたね。

しかし、せっかくまた一緒になれた家族とまた別れるシーンでは、エンドゲームでの展開を知っているとこれが今生の別れになるのか…と切なくなってしまいましたね。いつもクールなナターシャが家族に対しては素っぽい表情やリアクションもしていて、新鮮な魅力を感じたので、余計寂しくなりました…。


続編への布石

ドラマが先に配信はされてしまいましたが、この映画はMCUでフェーズ4一発目の作品になる予定でした。とはいえ、当初からわかっていたことでしたが過去を描く作品で、さらにフェーズ3で退場したナターシャが主役というのもあり、フェーズ4の新展開の幕開け!って雰囲気の映画ではありませんでしたね。

唯一の次の展開への布石と言えるのは、ブラック・ウィドウの妹こと”エレーナ”の存在でしょうか。彼女はドラマ『ホークアイ』に登場することが明かされています。もしかしたら、今後のシリーズではエレーナが二代目ブラック・ウィドウのような存在になるのかも。

『ブラック・ウィドウ』のポストクレジットでも、例のごとく次回作への伏線を張るシーンがありましたが、ここではドラマ『ファルコン&ウィンターソルジャー』の最終話に登場した”ヴァル”が登場。どうやらエレーナは彼女の元で何らかの任務を行っている模様。そして彼女が示した次のターゲットは、ホークアイこと”クリント・バートン”。ドラマ『ホークアイ』でエレーナはクリントの敵になるのでしょうか……。

ヴァルはクリントのせいでナターシャが死んだとエレーナに伝えていました。おそらくエンドゲームでの二人のやりとりのことを言っているのでしょう。しかし、クリントはどちらかというとナターシャの盟友で、今回の映画でも何度か名前が出ていました。エレーナはアベンジャーズにはあまりいいイメージを持っていなかったようですが、単純に騙されるような人物でもありまあせん。クリントVSエレーナも見たいですが、最終的には和解し、ホークアイで登場するケイト・ヴィショップ二代目ブラック・ウィドウ&ホークアイのようなコンビになったら胸熱ですね。

また、ヴァルが関わっているということはU.S.エージェントらと共に裏のアベンジャーズ的なチームを結成する可能性もありますね。どちらにせよ、今後の活躍が楽しみなキャラです。

アレクセイやメリーナ、そしてタスクマスターと他のウィドウたちも生存したので、何らかの形で再登場するかもしれませんね。特にタスクマスターはデザインやアクションがカッコよかったので、また見たいものです。


次の劇場公開映画はアジア系カンフーヒーローの『シャン・チー』! 久々の完全新規ヒーローで楽しみですね。

それでは、近いうちに衝撃のラストを迎えた『ロキ』の感想も書こうと思いますの、そちらもよろしくお願いします。

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