宮澤大和

作家、演出家。ぺぺぺの会メンバー。『信仰、未知と差異のデマゴーグ』(呆然戯曲賞自由部門…

宮澤大和

作家、演出家。ぺぺぺの会メンバー。『信仰、未知と差異のデマゴーグ』(呆然戯曲賞自由部門)、『信号』(朝日新聞・あるきだす言葉たち掲載)、『No. 1 Pure Pedigree』(こりっち舞台芸術まつり!最終審査ノミネート)、『夢の旧作』(SAF vol.14優秀賞)など。

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記事一覧

光の煌めき

「理想」——理想を持っているっていうのはすごいことだ。 それを実現できるかどうかはわからないし、そのうえ「あなたの「理想」を言葉で説明してみてください」と言われ…

宮澤大和
1日前
13

こんなに神経をすり減らすくらいなら本音を隠して、当たり障りのないポジティブなものを書くほうがどれだけ楽だろう

多くの劇作家にとって、戯曲は単に対話の文体を容れるための器であるかもしれない。 けれども自分にとっては文体の総合芸術である、という高すぎる理想を掲げているために…

宮澤大和
9日前
64

浪曲・掛川宿から考える文体

広沢菊春の浪曲・掛川宿をカセットテープで聞いてから眠った。 翌朝、浪曲で何がおこなわれていたのかを把握するために、昨夜の記憶をたどりながら手帖に書き起こした。 …

宮澤大和
2週間前
58

フィードバックの適切な取捨選択

 冴えない頭で物を考えようと試みている。  昨夜飲んだウイスキーのせいだ。  頂き物のクリスタル・ダルクに琥珀色のそれを注いでみたくなって、うっとりと眺めたあと…

宮澤大和
2週間前
56

作家の創造力を拡張するための生成AI活用法

こんにちは。宮澤大和です。 先週日曜日のエッセーでは、事務的な文書を作成する際にChatGPT等の生成AIをどう活用しているのか、についてを記事にして投稿しました。 今…

宮澤大和
3週間前
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【2024年】宮澤大和のかんたんなアーティスト・プロフィール/ステートメント

Profile 宮澤 大和 Yamato Miyazawa 詩人・作家・演出家 1995年生まれ。千葉県出身。 早稲田大学入学時から演劇活動を始め、 2018年11月にぺぺぺの会を結成。 戯曲の枠…

宮澤大和
3週間前
46

【ChatGPTの使い方】ClaudeやCopilotと比較するのではなく、3者にチームプレーをさせるためのコツ

 こんにちは。宮澤大和です。  生成AIをつかって文章を書くために、編み出した小技のようなものがあるので、自分の記録のためにもnoteに書き留めておきます。  この方法…

宮澤大和
4週間前
86

AIが生成してくれた文章に100パーセントの納得がいっているわけではない. けれども, 近い将来にAIは人類にとって欠かすことので…

こんにちは。宮澤大和です。 現在は《日詩》というプロジェクトを進行させています。 《日詩》はnisshiと読みます。 毎日、日誌をつけるみたいにして、日に一篇の詩を…

宮澤大和
1か月前
87

百年

 Ⅰ  この情景から、人生の旅路には時に誘惑があり障害があり、その都度乗り越えていかねばならないものが多いことがわかります。  しかし、愛する者と力を合わせれば…

宮澤大和
1か月前
57

「日本映画っぽい」と言う時、何をもってわたしたちはそれを「日本映画っぽい」と言うのだろう

宮澤大和
2か月前
47

自己紹介 2024年版

 こんにちは。  宮澤大和です。  2018年にnoteをつかって「書くこと」を始めました。  noteをはじめたきっかけは、よく憶えています。    私は、もともと「書くこと…

宮澤大和
2か月前
115

一人旅の魅力

寸志 荷造りも無事に完了し、少々時間が余ったので、家で朝食をとってから出掛けることにした。  とは言っても時間がとてもあるわけではないので、たまごを2つ割って、…

宮澤大和
2か月前
64

 旅行前日はよく眠れない。  ある種の興奮状態。というか、緊張状態。ふだん、寝起きに夢なんて覚えていないのにこういう日に限って奇妙な夢をみる。そのたびに起きる。

宮澤大和
2か月前
37

2024年2月を振り返る(2)

 日記を書き始めた。日々、感じたこと、考えたことをしたためていくのは面白い。 「なぜ文章を書こうとするのか」を真剣に考え抜いたすえに出た答え——数年後あるいは数…

宮澤大和
2か月前
23

2024年2月を振り返る

 2024年2月は12回noteを更新した。  1月28日に作・演出をした演劇公演『「またまた」やって生まれる「たまたま」』を終え、自分が今後どんな作品をつくるべきか、つくり…

宮澤大和
2か月前
19

エアチャイナの国際線体験談:評判と機内食のレビュー

 28日は大半の時間を中国杭州で過ごした。明け方3時15分の便に搭乗し、タイ・スワンナプーム国際空港を離陸した飛行機は朝8時に杭州に着いた。  スワンナプーム国際空…

宮澤大和
2か月前
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光の煌めき

「理想」——理想を持っているっていうのはすごいことだ。 それを実現できるかどうかはわからないし、そのうえ「あなたの「理想」を言葉で説明してみてください」と言われても、それはそれで難しい。 もし、説明できたとしても、そこからは「大切な何か」が損なわれているのではないか。 要するに、性急に言葉にしようとしなくてもいい。ゆっくりと時間をかけてもいい。性急に言葉にしようと焦ると他人の言葉を借りざるを得なくなる。 他人の言葉は他人の理想だ。 自分の言葉を醸成させる。 焦らな

こんなに神経をすり減らすくらいなら本音を隠して、当たり障りのないポジティブなものを書くほうがどれだけ楽だろう

多くの劇作家にとって、戯曲は単に対話の文体を容れるための器であるかもしれない。 けれども自分にとっては文体の総合芸術である、という高すぎる理想を掲げているために戯曲を書くのを困難にしている。 転職をして、多忙になってからのほうが、いきいきしている。 多様なタスクに囲まれていたほうが、かえって精力的に多岐にわたる物事を処理できる、自分にはマルチタスクのほうが向いているのだろう。 もちろん、タスクに取り組むときは、ひとつひとつに集中して取り組んでいく。けれども30分くらい

浪曲・掛川宿から考える文体

広沢菊春の浪曲・掛川宿をカセットテープで聞いてから眠った。 翌朝、浪曲で何がおこなわれていたのかを把握するために、昨夜の記憶をたどりながら手帖に書き起こした。 冒頭の話はイントロデュースのようなもの。本でいえば前書き、音楽でいえばプレリュードのようなもの。要約とまではいかないが、簡単に全体を紹介するような役まわり。観客に期待を持たせる。 次に対話が起こる。ここは謡にはなっていない。落語のようなまわし。しばらくすると、またもや謡が入る。 謡はト書きのような役割を果たした

フィードバックの適切な取捨選択

 冴えない頭で物を考えようと試みている。  昨夜飲んだウイスキーのせいだ。  頂き物のクリスタル・ダルクに琥珀色のそれを注いでみたくなって、うっとりと眺めたあとでちびちびと啜りながら飲んでいた。仔猫がミルクを舐めるみたいに。 *  ラフロイグを飲んでいる。  鼻から抜ける独特の薫りが好ましい。  まるで薬品のようなその薫りのせいで好き嫌いがきっぱりと分かれる。  それっくらい個性の強いものを私は愛好する。ある種の信念さえ感じられるからだ。 *  なにより大切な

作家の創造力を拡張するための生成AI活用法

こんにちは。宮澤大和です。 先週日曜日のエッセーでは、事務的な文書を作成する際にChatGPT等の生成AIをどう活用しているのか、についてを記事にして投稿しました。 今週は、創作(クリエーション)の分野で、具体的にどんな活用を試みているのかについてご紹介できればと思います。 小説を書くときのAI活用方法創作分野でのAIの利用方法は多岐にわたりますが、今回は【小説】を例にお話を進めていきたいと思います。 文学や脚本をAIと共創していく、というと、 物語や脚本のアイデア

【2024年】宮澤大和のかんたんなアーティスト・プロフィール/ステートメント

Profile 宮澤 大和 Yamato Miyazawa 詩人・作家・演出家 1995年生まれ。千葉県出身。 早稲田大学入学時から演劇活動を始め、 2018年11月にぺぺぺの会を結成。 戯曲の枠にとらわれない上演台本のフォーマットを用いて、 エンゲキ的表現の探求を継続的におこないます。 2020年には呆然戯曲賞自由部門を受賞。 近年は、朝日新聞「あるきだす言葉たち」に 詩「信号」が掲載されるなど、活動の場を広げています。 Writer宮澤大和は、鋭い洞察力と繊細

【ChatGPTの使い方】ClaudeやCopilotと比較するのではなく、3者にチームプレーをさせるためのコツ

 こんにちは。宮澤大和です。  生成AIをつかって文章を書くために、編み出した小技のようなものがあるので、自分の記録のためにもnoteに書き留めておきます。  この方法では、ChatGPTとClaudとCopilotを使います。 ここまでのおさらい 昨年2月に書いた記事『乗り物としての文体、あるいはChatGPT(AI)と書き手の問題』では、以下のようなことを生成AIの問題として指摘していました。  そのうえで前回の記事『AIが生成してくれた文章に100パーセントの納得が

AIが生成してくれた文章に100パーセントの納得がいっているわけではない. けれども, 近い将来にAIは人類にとって欠かすことのできないtoolになっているだろうから努めて使うようにしている.

こんにちは。宮澤大和です。 現在は《日詩》というプロジェクトを進行させています。 《日詩》はnisshiと読みます。 毎日、日誌をつけるみたいにして、日に一篇の詩を書いています。だから1年後には366つの詩ができあがっていることに——単純計算すれば——なるのかもしれませんが無理をして書く必要も義務もないことから、実際は366つよりも少ない詩集ができあがることになりそうです(抜けている日付に趣を感じることもできるかもしれない)。 前回noteにアップロードした『百年

百年

 Ⅰ  この情景から、人生の旅路には時に誘惑があり障害があり、その都度乗り越えていかねばならないものが多いことがわかります。  しかし、愛する者と力を合わせれば、どんな逆境も乗り越えられるのではないでしょうか。  ふたりは親密な絆で結ばれ、互いに支え合いながら人生を歩んでいきます。雨雲の裏にも太陽があり、厳しい時もあれば穏やかな時もあります。  そんな移ろいの中を、二人三脚で歩んでいく姿が描かれているように感じます。  Ⅱ

「日本映画っぽい」と言う時、何をもってわたしたちはそれを「日本映画っぽい」と言うのだろう

自己紹介 2024年版

 こんにちは。  宮澤大和です。  2018年にnoteをつかって「書くこと」を始めました。  noteをはじめたきっかけは、よく憶えています。    私は、もともと「書くこと」が好きだったんですね。  小学校の頃から、自分が書いたものを人に読んでもらって、それで楽しんでもらうことが好きだったんです。  絵本やマンガのようなものを書いては、友達に見せていました。  幸いにして友達も楽しんで読んでくれたので、私は継続して書くことに夢中になりました。  けれども、じょうずに

一人旅の魅力

寸志 荷造りも無事に完了し、少々時間が余ったので、家で朝食をとってから出掛けることにした。  とは言っても時間がとてもあるわけではないので、たまごを2つ割って、熱したフライパンのなかに放りこむ。  目玉焼きができあがった。  それを米のうえに乗せてサッと醤油をまわして掛けた。  ほんとうは自室で食べようと思っていたが、キッチンでRさんに声を掛けられ、会話が弾んだので(時間もないので)喋りながらその場で立ち食いをする。 「この前話したと思うんですけど、これからタイへ行くん

 旅行前日はよく眠れない。  ある種の興奮状態。というか、緊張状態。ふだん、寝起きに夢なんて覚えていないのにこういう日に限って奇妙な夢をみる。そのたびに起きる。

2024年2月を振り返る(2)

 日記を書き始めた。日々、感じたこと、考えたことをしたためていくのは面白い。 「なぜ文章を書こうとするのか」を真剣に考え抜いたすえに出た答え——数年後あるいは数十年後の自分に向けて現在の自分をありのままに記録しておくこと——を導きだすことができたから、私は日記を書き始めたんだと思う。  いっけんエアチャイナのレビューを書いているように見える下の記事も、日記である。  自分はずいぶん無理をしていたのだと思う。演劇公演が終わると、かなりの体重を落とすのはいつも通りのことだけれ

2024年2月を振り返る

 2024年2月は12回noteを更新した。  1月28日に作・演出をした演劇公演『「またまた」やって生まれる「たまたま」』を終え、自分が今後どんな作品をつくるべきか、つくりたいかを考えるために、芸術や創作に対する自分の考えかたを、月の前半では書いて、まとめていた。 『私の芸術の原点』では「風景のような演劇をつくりたい」という永らくの構想を思い起こした。 『「またまた」やって生まれる「たまたま」』ではインタビューから演劇をつくるという性質上、言葉に集中をせざるを得なかっ

エアチャイナの国際線体験談:評判と機内食のレビュー

 28日は大半の時間を中国杭州で過ごした。明け方3時15分の便に搭乗し、タイ・スワンナプーム国際空港を離陸した飛行機は朝8時に杭州に着いた。  スワンナプーム国際空港では杭州までの便しか発券してもらえなかったので、トランジットである杭州で、いち度中国に入国(イミグレーション)し、カウンターで杭州から東京までの切符を発券してもらう手続きが必要になる。  ひじょうに面倒である。  さらに中国の空港は職員の対応もあまり好ましくない。私が入国に必要な書類に記入しているときに近づい