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ヘルニアンの憂鬱

4月初旬。

夫が腰痛を訴えている。

1年に1回あるかないかの、いつもの尿管結石だと思っていた。

気の毒だが遺伝で石が出やすい体質らしい。
発症したのは中学生だという。

結婚して初めてわたしがその様子を目の当たりにした時は、吐き気を催すほどの痛がりように、どうしたらいいのかわからずに救急車を呼んだこともある。

銀婚式もすぎた今となっては、お互い慣れたもので、いつもなら水分をたくさん取り、痛みが酷い時は坐薬で紛らわせると数日で排出される。

でも今回は違った。


1週間経ってもまだ痛がっている。坐薬は強い痛み止めなので、何回も使わせたくなかった。

数日後にはコロナ禍以降、何年も帰省出来ていなかった夫の実家へ行く予定があった。

夫の実家は新幹線と在来線を乗り継いで、片道約3時間はかかる。

夫はとにかく病院に行きたがらないタイプで、今回もそのまま帰省しようとしていた。

今回の石は大きいのかもしれない…嫌な予感がしたわたしは

「病院に行かないなら、帰省はしない!」と強く言った。

夫はしぶしぶ病院へ。
この時はまだ1人で病院へ行けた。

まずは内科でエコー。

確かに石は認められるが詰まったりしているわけではなく、どうやら腰痛の原因ではなさそうだと。

「これはうちではない」とハッキリ言われたそう。

すぐに整形外科へ。

MRIの結果、

腰椎分離症+ヘルニアになっていた。

「何かスポーツされてましたか?」と聞かれたそう。

後に大きな病院の方で、わたしも画像を見せてもらったのだが、完全に背骨の一部が折れて隙間がある。

ここ数年で折れたものではないことは画像からもわかるそうだ。

夫は10代の頃、空手をしていた。

義父が師範だったので、仕方なく続けていたらしい。

何十年も経って、こんなツケがまわってこようとは、ますます気の毒である。

もちろんここで帰省は中止に。

ふぅ。病院行かせて正解!

帰ってこれなくなるところだった。いや、辿り着けさえしなかったかも?

かかりつけの整形外科から、大きな病院に紹介状を書いてもらい予約も取ってくれた。

しかし予約日までは10日ほどあった。

それからどんどん痛みが増し、座ることもできなければ、トイレに行くのもやっと、3分しか立っていられない最弱ウルトラマンと化した。

10日も耐えられないと、かかりつけの整形の方へ電話をすると、強めの薬を出してくれるという。

夫が自分で取りに行ける状態ではなかったので、わたしが代わりに取りに行く。

けれど、それを飲んでもウルトラマンが限界で、大きな病院までいけるのだろうか?と心配になった。

予約を早めてもらえないかと大きな病院へ電話を入れてみると、明日の朝イチに行けばなんとか診察してくれるとのこと。

翌日、病院へ。


駐車場から車椅子移動。
椅子にも座っていられないので、処置室のベッドで待たせてもらった。

やっと診察を受けると、思っているよりヘルニアの飛び出し方が悪いようで、3か月安静にして回復する可能性6割、手術すれば10日ほどの入院で日常生活に戻れるという。

そんなわけで急遽入院手術が決まったが、最短でも1週間後だと。

1週間か……
いったん自宅に戻る。


あれ?なんだかわたしにも違和感が……


2階にある寝室では、階段の上り下りが不可能になっていたので、入院まではリビングに布団をひき安静にさせることにした。 

その後の夫は、もはや貞子が憑依していた。

ウルトラマン

貞子

ウルトラマン

貞子

貞子

ウルトラマン

貞子

貞子

貞子

入院までの1週間が長く感じた。


あれ?なんか痛いかも?



ようやく入院当日。

この日、家の中であれほど貞子のように床を這っていたのにコルセットは付けているものの、なぜか調子が良いと歩いている。

ウルトラマンと貞子、どこいった?

手術の前日から入院することになっていて、2人で手術についての詳しい説明を聞くことになっていた。


イタッ!


人生初の手術。

説明が大切なのはわかる。
ないのも怖いけど、正直詳しく聞くのも怖いな…という印象だった。

とにかく夫を送り届けた。



イタタッ!


明日、手術の立ち会い大丈夫かな?長丁場になりそうだから、早く寝ないと。


ピコン♪



深夜2時、LINEで起こされた。


「調子いいんだが、手術せないかんかな?」


「はぁ?」




深夜に起こされイラつくわたし。


さては手術の説明聞いて日和ったな。



翌日、手術は中止に。

医師、看護師さんも苦笑い。

先生が

「普通は安静期間をもう少しとってから手術するか決めることが多いので、今回のように早急に手術という流れに不安を抱くのは当然だと思います。ご本人が納得して受けられるのが1番ですから」と、優しいフォローを入れてくれた。


本当に申し訳ございません。
何度も深々と頭を下げてきた。

まずは1か月様子を見て、もう1度MRIを撮りましょうということになった。

手術に立ち会うために朝早くから病院に向かった、わたしと娘は特大のため息をついた。

一連の騒動で桜を見ることもできず、連日車で往復1時間の送迎と何時間もかかる待ち時間でヘルニアンのわたしが坐骨神経痛を発症。

わたしもコルセット生活が始まった。

休み明けからリハビリ頑張ってきます。

帰宅後の夫。

貞子は成仏したようだが、まだ最弱ウルトラマンは居座っている…というより座れないから涅槃仏化している。

とりあえず拝んどくか。


さぁ、皆さん!

1か月後、どうなっているのか!?

手術はするのか、しないのか!?

しないに越したことはないが、乞うご期待?


最後に……

ゴールデンウィークってなんですか?


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