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絵本をつくるって大変だ…! 絵本『4つごのまじょの おかいもの』ができるまで ~かわいみなさんインタビュー~

絵本を開いたら、思わず「わあぁ!」と声を上げずにはいられない! ステキでかわいくてちょっぴりふしぎな魔法の世界がぎゅっと詰まった絵本『4つごのまじょの おかいもの』が、ポプラ社より刊行されました。
作者は、この絵本が作と絵の両方を担当する絵本としてはデビュー作となる、かわいみなさん。
絵本が出来上がるまでの紆余曲折や絵本の見どころを、担当編集者がインタビューしました。

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【絵本『4つごのまじょの おかいもの』】
新しい家に引っ越してきた、4つ子の魔女。ぼろぼろですっからかんのお家を、4人の大好きなものでいっぱいにするために、お買い物にでかけます。
かわいくて、おしゃれで、ときにはゾクっとちょっぴり不気味…。そんな魔法のお店やアイテムがたくさん登場。
4つ子の魔女たちはどれを買う? 自分はどれがほしいかなあ…? ひとりでも、親子でも、兄弟姉妹や友だちと一緒でも、何度も何度も楽しめる、“おかいもの絵本”。
○かわいみな
イラストレーター。愛知県出身。著書に『水彩色鉛筆ではじめる ぬりえの塗り方上達レッスン』(ソシム)、挿絵を担当した作品に「ねこやなぎ食堂」シリーズ(講談社青い鳥文庫)、『ゆくぞ、やるぞ、てつじだぞ!』(朝日学生新聞社)、など。作絵の絵本は、本書がデビュー作。

苦節4年! 何度も何度もラフを直して……

――とうとう絵本が出来上がりましたね! 本当におつかれさまでした。

かわいさん(以下、かわい) 富川さんに最初にメールをいただいたのは確か2016年とか2017年とか……?

――そうですね……。クリエイターEXPOでかわいさんの絵を拝見して、ステキ! 大好き! と思ってお声がけしたのですが、それを絵本の形に仕上げるのがこんなに大変とは……。私もたくさん勉強させていただきました。

かわい よく「絵本みたいな絵だね」と言われることがあったので、絵本というものに興味はあったんです。だから声をかけていただいたときは「わーい!」と思って。
でもいざ取り組んでみると、普段イラストレーターとして1枚の絵を仕上げているのとは全然違いました。お話や流れも考えないといけないし、ただ楽しいことをたくさん詰め込んで描けばいいんじゃないんだなと。

――一番はじめは、絵本と言っても「魔女の世界の図鑑」といった雰囲気で、ただただ魔女の世界を紹介する絵本、というご相談をしていたんですよね。でも、知らない世界をただいきなり紹介しても、興味を持ってもらえないんじゃないかという話になり……

かわい それで、主人公がいて物語がある、お話の絵本の方向でラフを進め始めたんですよね。4つごたちが町にお買い物にいって、途中で迷子の犬に出会って……みたいな。あれはあれで気に入ってはいるんですけど。

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――でもそこで、もっとかわいさんの絵のよさを生かせる形があるはず! と言ってまた手直しをしていただいて……。最終的に、お店の絵と、そこで買えるものがずらーっと並んだページが交互に出てきて、何を買うか選びながら読む、というスタイルになりました。

かわい 本当に、ラフを完成させるまでがめちゃくちゃ大変でした。キャラクターや世界観の骨格は随分初期に固まっていたと思うんですけど、それをどういう構成の絵本にすればよいのかが掴めなくて。なんとなくイメージはあるんだけど、上手く形にできないジレンマはありましたね。

――ラフを上げていただくたびに、「もっとこういう形の方が」「こうもできる」「ああもできる」と積み上げていって。

かわい ラフ段階ではかなり紆余曲折がありましたけど、その全部の積み重ねで結果的にこういう絵本になっているんだと思います。最終的に、入れたかったものは全部入れられたなと思っています!

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――物語の絵本のラフを描いていただいたときもありましたけど、出来上がった絵本を見てみると、かわいさんの絵は「読む側が勝手に物語を想像する」みたいな楽しみ方の方がフィットするのかなと思いました。

かわい よく見ると気がつく、みたいな要素は好きですね。今回の絵本も、絵の中に本当にいろいろなものが隠れているので、それはぜひ探して楽しんでほしいです! ほうきが折れちゃった女の子とか、社会見学に来てる魔女の子たちとか、マンホールにいるスキマくんとか、4つごのほかにもいろいろな物語があるので……。

描き込みすぎて……清書が終わらない!?

――ラフが完成したあと、清書していただくところは、絵の密度から想定していたよりもかなり早かった印象でしたが。

かわい 清書は、「まじょのて」のお店の中の絵が一番時間がかかるだろうと思って、最初そこから描き始めたんです。そうしたらなんとそのページだけで1か月くらいかかってしまって! そのときは焦りましたね。でも結局ほかのページはそこで覚悟したよりも全然時間がかからなかったので、間に合いましたが。「まじょのて」は本当に、描いても描いても終わらなかった……。

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――でもあの見開きが私は一番好きです! かわいさんの真骨頂ですよね。

かわい 私もあそこが一番楽しいなと思ってます! 描き込みすぎて、描いた覚えのないものまで描いてあるくらい。
今回原画がデジタルだったので、拡大すれば、どこまででも描き込めるんですよ。アナログだと諦めがつくんですけど。あと、修正もできますし。(笑)

――修正に関しては、逆に修正できてしまうが故に、最後の最後までめちゃくちゃお手間をお掛けしました……。ここだけカバンのデザインが違う! とか、荷物が1つ足りない! とか。ああいうところを統一しましょう、というのも絵本に独特のことですよね。

かわい そうですね。普段1枚の絵を完成させるときは、全然気にしていなかったので……。清書が終わって仕上げた!と思ってからが結構長かったです。(笑)

――最後の最後、ご家族のファインプレーもありました。

かわい はじめてちゃんと見てくれたんですけど、そこで「リボンの長さがちがうよ」と……。なんでああいうところに気がつけるんでしょうね。

――私も決してそういうのが得意な編集者ではないので……お金をお支払いして校正していただきたいくらいです。(笑)

絵本の中の世界をめいっぱい楽しんでほしい!


――先ほど絵の中に隠れているいろいろなものを探してほしい! というお話がありましたが、ほかにもここを楽しんでほしいなというポイントはありますか?

かわい もちろん、好きなものを選んで……というお買い物の部分も楽しんでほしいのですが、あとはこの絵本に出てくる町の世界観ですかね。

――魔法の世界なのに、なんというか、魔法っぽすぎないナチュラルな雰囲気がありますよね。

かわい そうなんです、そういう世界が好きなんです! ちょっと不思議なんだけど、日常と離れすぎていないというか。ハイファンタジー的な壮大な世界観ではなくて、もしかしたらこういう場所があるかもなと思えるくらいの感じの方が楽しいと思っているので。この絵本の中の世界を見て、いろいろな想像をしてほしいです。

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――子どもの頃の私だったら、絶対にかじりついてすみからすみまで眺めて、勝手にいろいろなスピンオフストーリーを妄想していると思います。この絵本、自分が子どもの頃にほしかった……と思ってます。

かわい 私も、昔の私はこういう絵本が大好きだったなって、思います! そういう絵本がつくれたことが、とても嬉しいです。

――まだまだいろいろなものをお買い物できるな~と思っていまして……ぜひ2作目も、どうでしょう?

かわい まだ描きたいものも描きたい場所もたくさんあるので、ぜひ!

――ということで、気が早いですが、2作目もどうぞ楽しみにお待ちください!

(聞き手)ポプラ社 富川いず美
1992年、兵庫県生まれ。2015年、ポプラ社入社。主にキャラクター本や音が出る絵本などの幼児向け書籍と、絵本の編集を担当。『4つごのまじょの おかいもの』担当編集。

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