見出し画像

第13回大磯プリンスホテル ∞点



ふと目を覚ますと、時刻はAM2時43分だった。

霞んだ目にはiPhoneの画面が明るすぎて、一気に目が覚めてしまった。

明日も暇だな。

何にもすることないや。

ガランとした3LDKの東京湾が一望できる新築マンションに1人だもんな。

遊ぶ友だちもいないんだもんな。

そうだ、直前予約でのんびり旅に出よう。


ドラマのサ道に出てきた大磯プリンスホテルに行こう。



じゃらんで即予約を取った。

時刻はまだAM3時。

チェックインまで12時間もある。

ひと眠りしよう。

........。


目を閉じても眠れない。

いや、もう準備して大磯に行こう。

すぐさま、着替えて車に飛び乗った。


夜明け前の平日の首都高はガラガラだった。



さして飛ばしていないのに、1時間半で大磯に着いてしまった。

夜明けを大磯港でみた。

防波堤釣り場には魚釣りをするおじさんが何人かいた。





時計を見たらAM11時23分だった。

そうか、私はクルマの運転席で寝てしまったのか。

この港には小さな食堂があった。

刺身定食を1人で食べた。味はよく覚えていない。

PM1時。

大磯プリンスホテルに着いてしまった。

どこか懐かしい感じがした。

ここは、幼少期に性格の悪い姉と仲良くプールに入ったところだった。

私のプールハンターとしての原体験はベトナムのダナンではなく、家族4人で楽しんだ大磯ロングビーチだったのかもしれない。


ホテルのロビーには、カップルや家族連れがたくさんいた。


すぐに、サウナとインフィニティプールに入って、ジャグジーにも入った。

おひとりさまは私だけだった。

みんな、なぜか楽しそうに写真を撮っていた。

大学生と思われる男女も、アラサーのカップルも、還暦を過ぎた夫婦も、家族連れも、みんなプールに楽しそうにiPhoneを持ち込んで、仲良く自撮りをしていた。

なんで、写真をあんなに楽しそうに撮るのか、私はわからなかった。

ジャグジーに1人で入っていた。

カップルが入りたそうにしていたので、すぐに出た。

プールに1人で入っても、何も楽しくはなかった。

夕ご飯の中華も1人だった。

味はよく覚えていない。

夜は、テレビでお笑い番組をやっていたが、つけたまま気づいたら寝ていた。

朝起きたら部屋に1人だった。テレビは、めざましどようびをやっていた。

朝飯も1人だった。

写真は1枚も撮らなかった。

チェックアウトのとき、スタッフの方に、昨日はよくお休みになられましたか?と聞かれた。

「ええ、とても」


愛想笑いをしながら、精一杯の嘘をついた。






私はいったい何をしているんだろう??



チェックアウト後に喫煙所でピースアロマインフィニティ8ミリを吸いながら思った。

ライターは自宅マンション1階のセブンイレブンで買った100円のやつだった。



よく考えたら、私はこれまで生きてきて、1人の時間というのはなかったのかもしれない。常に女がいた。

おひとり様は楽しいっていう人もいるけれど、私は単に孤独だと思う。

朝飯を食べてお腹がいっぱいだったので、昼飯は食わなかった。

自宅近くのリンコスでチキンの照り焼き弁当を買って家へ戻った。

なんとなく冷たい弁当食いながら、75インチのソニーのテレビを見ながら、東京インテリアで買った3人掛けの電動ソファで気づいたら寝ていた。


翌朝、目が覚めたらテレビはボクらの時代をやっていて、部屋に1人だった。

コンタクトレンズをしたままだったから、目がとても霞んでいた。


そういえば、1泊2日の大磯で口を開いたのは夕飯の時に、乾いた声で「お水ください」と言ったことと、チェックアウトの「ええ、とても」だけだった。











今年のクリスマスは誰かと大磯プリンスホテルに行こうかな。



なんとなくそう決めた。













11ヶ月後。

この続きはブログをご覧ください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?