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福島出身大学院生による福島FS〜論考編〜

全6回に分けて私のFSの日誌兼論考を綴ってきたが、今回で最終回である。ここでは論考に絞って綴りたい。何かためになるようなことは出てこないだろうが、一人の人間がこんなことを考えているということを記録しているという認識で読んでほしい。

FSを終えて

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一人で遠出することがないため、若干不安はあったものの無事完遂することができて一安心である。多少道に迷いはしたものの自分で打開することができた。山道が続いた時も、今までの経験を活かしたドライブができた。ただ、同乗者がいる時にはもっと丁寧に運転したいところではある。

そんな前置きはさておき、本FSの目的に掲げた2つのことについてであるが、改めて整理しておこう。

①福島県民として改めて震災と向き合う

個人的にはどちらも達成できたのではないだろうかと思う。①に関して周縁を歩くことから始め、徐々に自分を実物の中に身を置くことで体を通して震災に関して向き合うことができた。また、そこにいた人たちに思いを馳せ、どんな気持ちだったのかを考えることができた。それにはいろんな立場の人がいて、いろんな世代の人がいて、いろんな考え方があった。資料を見る中でもそれらは感じられた。そして私自身はどうだろうかと自問自答をすることもできたのではないだろうか。同世代の苦難を目の当たりにし、改めて震災から自分が歩んできた11年を振り返り何を考えてきたのかを改めて理解することができた。

②先生の「大切な人」に会いに行く

②に関しては、計画した分では達成できたが、もう少しお話をしたかったというのが本音ではある。また、今回出会った人以外にも繋がりは広がりそうな予感はした。自分から声をかけて少しでもお話しできた人もいたため、今後自分から人との繋がりを作っていきたいと考えられるようになった。またいつの日か、仲間たちと訪れる機会を作って、その時に新たな人脈を作っていきたい。

心が一番動いた経験こそが最大の収穫の一つ

本FSを通じて私の心は大きく揺さぶられた。揺さぶられたというより「縮んでは膨らみの繰り返し」だったのではないだろうか。同じ福島でも経験したことが異なり、自分の方がまだマシだったということを再認識させられたと共に、その場にいた人たちのことを考える機会が多くあったため、どんな気持ちだったのかを想像することができた。

確かに震災や原発事故について学ぶこともできたが、それは前提知識が少しあった上で細かい資料や手記などを通して上書きしていくというものであった。そこで同時並行して心が動いたのである。以前仲間たちといったFSでは、私の心が解凍されたように無機的なものから有機的なものになり、大きく心を動かされることが多くなった。今回はそれ以来一番大きく心が動いた。

施設にいる間には「興味関心」を基盤としながらも「対象者の気持ちの想像」や「当時の情景の想像」、「未来の社会の想像 / 創造」、「自己省察」など多岐に渡って考え事をしたり学びをした。中々できない経験であると同時に、今後もこのような活動は続けていきたいと思うようになった。むしろ私より下の世代の子どもたちに対してこのような体験の機会を設けたいとも考えた。

実際に経験している身としてその現場に自分が立つことで、心が縮んでいろんな感情や想いが複雑に絡み合っていた。そして施設を後にし自分一人の時間を作ることで、心が改めて膨らみ、複雑に絡まっていた糸をほぐしながら自分の考えを整理することができた。確かに負担が大きいところもあったが、それも一つの経験、それを避けていては自分が学ぶべきこと、感じたかったことは何も得られなかっただろう。

私にはこれから何ができるか

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震災から11年が経つが、私の地元のように時間が止まる期間が短かったところは既に "普通" に戻っているが、今回実際の現場を訪れたことによって時間が止まったままという自分とは違う生活圏が広がっていることを感じることができた。

そして本FSを通して、私はこれから何ができるかを考える「一つのきっかけ」を得たような気がする。以前の授業で「環境教育実践構想」について考えたが、それをもう一度アップデートする必要があるのではないだろうか。あの時には「とんでもないことを考えていい」というご指摘を頂いたが、今回の経験も加味すると本FSをそのままではなくても、近い形で校外(公害)学習として還元してみたいと考えた。だいぶ大掛かりにはなると思うが、公的機関が何を考えて伝承館や交流棟を建設し運営しているのかについて自分たちで考えてみる。そして市民が何を考えて資料館を設置し運営しているのか、そして当時何があったのか、今後の未来への展望を語ってもらいどのような視点の違いがあるのかについて気づく。こんな過程を踏んだ教育活動を行えたらいいなと。

幸いにも私は県内で働くことにはなっており、今回のFSで濃淡問わず繋がりができた。それは私の財産であり、下の世代にも紡いでいきたいものである。また、自分で学校周辺を歩いて地域を知り現在抱えている課題を解決するのではなく、時間軸を大きく捉えて「地域の成り立ち」「人の流れ」などについて理解を深めていきたい。それには子どもたちに学ぶ機会を提供するだけで終始するのではなく、子どもたちと伴走しながら自分も学びを深めていく姿勢が必要不可欠である。

そうするとやはり繋がりというものは作っておく必要がある。私には猶予があと1年ある。その中でどれだけ構築できるか、それが現場に出た時の実践を大きく左右する気がしてならない。なので4月からは定期的に福島に行って現地をしっかり見ておきたい。そしてできることなら人との繋がりを広げておきたい。

エピローグ

これにて私のFSの記録と論考は以上になる。論考も本当に内容が薄いと思われるかもしれないが、ご容赦頂きたい。今回は一人で回ったが、これを複数人で仲間たちを回った時にはその場その場で感情の共有ができる。ぜひその機会を持ちたいという期待を抱きつつ、私はこれからの1年を「大事に」過ごしたい。

本FSにおいてお話しして頂いた方々、施設、そしてきっかけを作って頂いた先生、その土地の関係する人々全てに感謝したい。

あれから11度目の3.11を迎える。この経験を胸にこれからも歩んでいく。

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