街場詩人Hideoの書斎

放浪する街場詩人

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最近の記事

映画『トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代』

映画『トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代』を鑑賞。 (相原裕美監督作品) 加藤和彦をテーマに映画を撮るきっかけになったのは、盟友・高橋幸宏のコメントがきっかけとなったという。 「トノバン(加藤和彦の愛称)って、もう少し評価されても良いのじゃないかな?今だったら、僕も話すことが出来るけど」 本作では高橋幸宏をはじめ、きたやまおさむ、松山猛、朝妻一郎、つのだ⭐︎ひろ、高中正義、小原礼、今井裕、新田和長、クリス・トーマス、牧村憲一など、加藤和彦と縁の深い人物たちがインタビュ

    • 大阪中之島美術館「ロートレックとミュシャ パリ時代の10年」

      大阪中之島美術館 「ロートレックとミュシャ パリ時代の10年」 2022年に開催された美術展のレポートである。 「わずか10年の内にこの世に送り出された宝物のようなロートレック作全ポスター作品31点を一堂に紹介」というなんとも贅沢な企画展だった。 ロートレックはまさに天才。 障がいを抱え、放蕩に明け暮れた短い人生を疾走したロートレック。 ロートレックの絵画には、彼自身の個性が横溢し、見る者を離さない魅力がある。 対するミュシャは秀才。 アール・ヌーヴォーの代名詞ともい

      • 京都「美濃吉本店 竹茂楼」 〜王道の京料理を学ぶ〜

        コロナ禍中の先年、祇園祭の時期に、弾丸ツアーで京都へ。 感染対策もあり、贅沢だけど料亭「美濃吉本店 竹茂楼」の個室をリザーブ。 鱧寿司、丸仕立の椀物、鱧落し・・・と、季節感に溢れた王道の京料理を堪能した。 京都に行くとついつい目新しい料理を求めがちだけど、今回は王道の京料理を再発見。 ガツ〜ンというより、しみじみとおいしい。 旨さと目新しさばかりの追求は、中年になって楽しくなくなった。 不易流行。伝統の重みのなかに、イノベーションを感じるようなスタンダードが好き。料理も、生き

        • 尾道 naïf (ナイーフ)ふたたび 〜魔法にかけられた夜〜

          尾道の路地に佇む隠れ家のようなレストラン。 伺う度に、料理の奥深さ、素晴らしさ、本質を、シェフから教えて頂くような気持ちになる。 今回も、驚きと新たな発見に満ちた一夜だった。 見目麗しきアミューズブーシュと泡を頂きながら、期待感が徐々に高まっていく。 オマール海老とホワイトアスパラガスの料理。 オマール海老もフランス産ホワイトアスパラガスも高級食材だが、シェフはこれみよがしに提供しない。 素材の持ち味に寄り添い、さりげなく本質を提供。 シンプルなヴィネグレットソースで頂

        映画『トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代』

          傍観者でなく、当事者になること。 〜蓮は泥より出てて泥に染まらず〜

          NHKの関連会社・NHKエデュケーショナル前社長の熊埜御堂朋子(くまのみどう・ともこ)さん。 NHK教育テレビ(Eテレ)のディレクターやプロデューサー、編成責任者などを歴任。多くの教養番組や福祉番組を手掛けてきた。 僕は氏のことを詳しく知っている訳ではないが、以前ドナ・ウィリアムズについての番組を、NHKで取り上げたことは知っていた。ドナは「自閉症者自身が世界で初めて自らの精神世界に踏み込んだ本」と言われる『自閉症だったわたしへ』の著者である。 熊埜御堂さんは、その番組の制

          傍観者でなく、当事者になること。 〜蓮は泥より出てて泥に染まらず〜

          青山ゆみこ『元気じゃないけど、悪くない』読書会に参加

          大阪の北摂地域に行ったのはいつぶりだろう? 「北摂」って、旧国制の摂津国北部のこと。だから、豊中市、吹田市、箕面市、川西市、池田市などなど。兵庫県でいえば宝塚市なども入る。 以前行ったのは、箕面に紅葉を見に行った20歳の頃。かなり昔である。紅葉の天ぷらを食べたことは記憶しているのだが、当時の光景をほとんど覚えていない。 まあ、そんなものだろう。 人生の折り返し点を過ぎると、過去の思い出が朧気にしか感じられなくなることもある。 新しいことを覚えるのが苦行に感じられる時もある。

          青山ゆみこ『元気じゃないけど、悪くない』読書会に参加

          賛否両論 〜北大路魯山人の陶芸について〜

          北大路魯山人の陶芸作品を初めて鑑賞したのは、今から35年くらい前ではなかったか。 場所は、広大な日本庭園と横山大観の絵のコレクションで有名な、山陰の美術館で。 魯山人が得意とする志野・織部を中心にした、華やかな器を鑑賞することができた。 不思議なことに、この美術館は魯山人の展示室の上階に、同じく陶芸家の河井寛次郎の展示室を設けていた。 魯山人が嫌っていた河井寛次郎と魯山人を併置するというのは、僕には到底考え付かない発想だが、比較して鑑賞することはとても有益だった。

          賛否両論 〜北大路魯山人の陶芸について〜

          自称「グルメ」批判 〜湯木貞一・辻静雄『吉兆料理花伝』を読む〜

          湯木貞一・辻静雄『吉兆料理花伝』(新潮社) 本著は現在、残念ながら版元で品切になっているが、日本料理人のみならず、飲食業に携わる者なら、いや、料理を愛する者なら、ぜひとも入手し、熟読玩味して欲しい名著である。 『吉兆料理花伝』は、1983年に新潮社より刊行された。 本著は、「吉兆」の創業者・湯木貞一による日本料理についての話を、「辻調理師専門学校」理事長・辻静雄がインタビューするという構成である。 また、写真家・入江泰吉による「吉兆」の四季の料理写真が掲載されていて、「吉兆

          自称「グルメ」批判 〜湯木貞一・辻静雄『吉兆料理花伝』を読む〜

          日本映画屈指の名作「人情紙風船」

          山中貞雄監督作品『人情紙風船』を観る機会があった。初めて見たのは今から約四半世紀前、既になき東京・千石の三百人劇場だった。 『人情紙風船』は日本映画史上屈指の名作。 僕も約20年ぶりに再見した。(前回は映画館でのリバイバル上映) 『人情紙風船』は、河竹黙阿弥作の歌舞伎「梅雨小袖昔八丈」(通称「髪結新三」)をモチーフにしたものだ。 「髪結新三」は、主人公の新三が豪商・白子屋の一人娘お熊を誘拐し、白子屋から大金を得ようとするストーリー。 悪人の新三が、胸のすくような啖呵

          日本映画屈指の名作「人情紙風船」

          僕は彼女の王子様だから 〜小沢健二と岡崎京子〜

          1994年、僕はまだ若かったからか、街場のレコード屋や本屋を一日中歩き回っても、全然疲れることがなかった。 その頃レコード屋で出会った一枚のアルバム・・・ 小沢健二『LIFE』。 CDだからレコードと違って擦り切れるなんてことはないのだけど、イメージとして「擦り切れるほど」聴いたなあ。 現在の僕だったら「擦り切れるほど」に聴かないだろう。当時の年齢だったからこそ、小沢健二のメッセージが直截に伝わり聴きまくったのだと思う。 『LIFE』は小沢健二の詞や曲も良いが、ドラム

          僕は彼女の王子様だから 〜小沢健二と岡崎京子〜

          東京・出光美術館 〜仙厓のすべて〜

          「東京の美術商の店先に掛けてあった、仙厓の達磨図を見た時のショックを今でも鮮やかに覚えている」(ピーター・ドラッカー) 禅画など興味のなかった僕にその魅力を教えてくれたのは、経営学の大御所ピーター・ドラッカーである。 ドラッカーは1959年の初来日以来、長年に渡り日本の水墨画を収集。禅画は1962年の3回目の来日時に「発見」したという。 ドラッカーは禅画について次のように述べている。 「20世紀初頭におけるヨーロッパ表現派の人々があらわそうとしていたもの、すなわち直観的

          東京・出光美術館 〜仙厓のすべて〜

          東京・根津美術館 〜国宝「燕子花図屏風」〜

          尾形光琳の「燕子花図屏風」(国宝) 燕子花の群生を群青と緑青で表現。 呉服商「雁金屋」に生まれたからなのか、注文主の要望なのか、ここまで装飾的で様式的な美を描くとは、実物を観て正直震えた。 「光琳が生きた時代」ということで、狩野探幽や喜多川相説、そして大津絵まで幅広く同時代の絵画を展示。 光琳の同時代性と特異性の両者が際立ち、楽しめた。 乾山の陶器も良かったなあ。 なんでも鑑定団に乾山が出品されると、ほぼ贋作(笑) 見る目がない僕でも、光琳が絵付けした乾山は実に素晴らし

          東京・根津美術館 〜国宝「燕子花図屏風」〜

          高橋幸宏は、もういないんだ。

          2023年の初頭のある日のこと。 寒くて外出したくなかったので、午前中に用事を済ませて、昼過ぎから「ミュージック・マガジン増刊 高橋幸宏 多才なロマンティストの軌跡」を読みながら、サブスクで高橋幸宏さんの音楽に浸った。 お線香の代わりにインセンスを焚きながら、高橋幸宏さんの好きだったビールを。今日ばかりは涙で全く酔えなかった。 「そもそも、こんなにお洒落で、しかもドラム・セットの前に座っただけでもロックを感じさせるドラマーはいなかったし、「今日の空は少し悲しいって街を駆け

          高橋幸宏は、もういないんだ。

          坂本龍一と矢野顕子

          2022年12月11日、坂本龍一のピアノ・ソロ・コンサート“Ryuichi Sakamoto Playing the piano 2022”がネット配信された。 僕はリアルタイムでなく、YouTubeの公式サイトで鑑賞した。 https://youtu.be/z9tECKZ60zk?si=zhhOaIdo3mGDVtez 涙が止まらなかった。 教授(坂本龍一のニックネーム)が一音一音を慈しむように、緩やかに演奏していた。 体調不良もあり、テクニックは全盛期と比ぶべくもない

          坂本龍一と矢野顕子

          大阪・十三 「喜八洲総本舗」と「ねぎ焼やまもと」

          久しぶりの大阪・十三(じゅうそう)。 十三といえばB級グルメに限る。 まずは喜八洲総本舗(きやすそうほんぽ)へ。 喜八洲総本舗は、大阪の誇る和菓子屋。しかも、廉価で良質な和菓子に、味に厳しい大阪府民が行列するほど。 今回は力士最中(大きめだから「力士最中」)、栗饅頭、小型羊羹の詰め合わせを購入。 「喜八洲総本舗」の後は、久しぶりの「ねぎ焼やまもと」本店。 新大阪駅や梅田の支店は数年前行ったが、本店は数十年ぶり。 本店に入ると、やはり良いなあと思う。支店にはない、下町らしいざ

          大阪・十三 「喜八洲総本舗」と「ねぎ焼やまもと」

          The Okura Tokyo「オーキッドバー」〜ドンペリニヨン・ベリーニを味わう〜

          私的パワースポットである、The Okura Tokyo ロビーは往年のホテルオークラの雰囲気を残し、伝統的な和の意匠を楽しめる。 ロビーから少し奥まったところに、メインバーである「オーキッドバー」が佇む。 僕はここで、大人の階段を登ってしまった。 The Okura Tokyoのメインバー「オーキッドバー」の誇る・・・ 夏のスペシャリテ「ドンペリニヨン・ベリーニ」 旬の白桃をまる絞り。 目の前で搾る白桃ジュースに、ドン・ペリニヨンを注ぎ入れる。 こんな贅沢なカクテルが

          The Okura Tokyo「オーキッドバー」〜ドンペリニヨン・ベリーニを味わう〜