見出し画像

ジムニー泥沼物語 その16 2サイクルオイル編

 SJ30は2サイクルエンジンである。現在一般的なエンジンは4サイクルエンジン。ガソリンを燃やすことに違いはないが、エンジンの潤滑方法が違う。構造がまるきり違うのである。2サイクルエンジンは小型・軽量・高出力という優れた特性がある。しかし2サイクルエンジンは構造上、潤滑のためのオイルをガソリンに混ぜてエンジン内に供給する必要がある。オイルはエンジンを潤滑する。その上で綺麗に燃焼しなければならない。2サイクルエンジンの排気ガスは、もちろんオイルの燃焼ガスを含むので、排気ガスの基準をクリアするのが難しくSJ30の最終型を最後に消滅してしまった。
 2000年くらいまで、原付バイクと言えば白い煙を吐きながら走っていた。これも2サイクルエンジンである。この煙が特徴であるが、煙とはオイルが不完全燃焼している証拠である。潤滑と完全燃焼、この相反する能力を求められる2サイクルオイルは1,000円/1L以下で買える安いものから、5,000円/1Lを超えるものまで様々である。安いものではエンジンの焼き付きや、カーボン・デポジットなどの不完全燃焼による燃えカスの堆積など、トラブルの原因に直結するものが少なくない。ここでは「スズキ純正CCISオイル スーパーFC」「ヤマハ オートルーブ スーパーRS」「BARDAHL(バーダル) KTS COMPETITION」を比較する。何のエビデンスもなく、個人的な感想・感覚である。ちなみにオイル1Lで600Kmほど走行できる。

CCISとはスズキ独自の潤滑システム

「スズキ純正CCISオイル スーパーFC」¥1,500-/L前後
スズキ純正であり、指定オイルでもある。必要最低限の性能と感じる。何より白煙がすごい。特に始動時は前回走行時の燃え残りなのか、自宅前で始動するのが躊躇われるほどである。エンジンの回転も柔らかくモッサリとしている。もちろん高回転の伸びもない。

CCISオイルの色はメロンソーダの色
オイルタンクから抜き取ったCCISオイル(?)

 前オーナーは走行が少ない上に、早めの継ぎ足しをしていたようである。全く別物のオイルなのか、揮発成分がなくなって濃くなったのか、酸化してしまったのか? いずれにしてもこれだけの白煙が発生するということは、エンジン〜マフラー内に多量の燃え残りがあるのだろう。必ずトラブルに結びつく。

通称:ヤマハの赤缶 オイルは明るいオレンジ色

「ヤマハ オートルーブ スーパーRS」¥3,000-/L前後
ヤマハの2サイクルオイルの上位版である。ヤマハにもスズキのスーパーFCと同クラスのオイルがある。値段が倍になるが、エンジンの回転は軽く、回転の伸びもよい。以前、2サイクル90cc空冷エンジンのオートバイに乗っていた時から愛用していた。混合比(ガソリン:オイル)をかなり絞ってオイルを少なくしても焼き付きの兆候も出なかった。普通に乗るのであれば、これが最適解であると思う。

一番高価であるが、、  オイルは濃いオレンジ色

「BARDAHL(バーダル) KTS COMPETITION」¥4,000-/L前後
ジムニー交流サイトで紹介されていた。しかし、1Lで4,000円である。製品説明には「皮膜を作りベアリング・摺動部を保護する。」とある。SJ30のエンジンには製造廃止の部品が多く、手に入りづらい。少しでも延命して長く使いたい。良いというインプレの紹介であったが、¥4,000-/Lもするなら良くて当たり前とも思う。しかし、使ってみて驚いた。4サイクルも2サイクルもオイルでエンジンフィーリングが変化するが、ここまで変化するとは想像しなかった。オイルタンクにはヤマハの赤缶が少々残っているので、混合して少しずつ入れ替わっていき、新しいオイルがエンジン各所に行き渡る。長距離を走行中であったため、変化を如実に感じ取ることができた。エンジンの回転が段々軽くなり、排気音が高く乾いてくる。エンジンには元々の設計コンセプトがあり、設計により特性が決まる。SJ30のエンジンは低速での高トルク(回転力)を優先しているため、高速での回転の伸びはない、、、と思っていた。まるで別物のエンジンのように軽々と高回転まで伸びていく。今までは信号からの発進でもたつき、自虐的に「これでも全速力」とか「全速力で加速中」なんてステッカーを作って後ろに貼ろうかと思っていた。オイルを変えただけで決して速いわけではないが、頑張らなくても周りの乗用車に引けを取らない加速をする。とても28馬力とは思わないだろう。
 ここからは想像でしかないが、
①燃焼がよいためにガソリンの燃焼を邪魔せず、ガソリンが完全燃焼する。
②潤滑が良く、フリクション(回転抵抗)が減少した。
排気音の変化から①が推測され、回転の伸びと加速から①と②が推測される。
 もうバーダル以外の選択肢が無くなってしまった。このオイルはエンジンの性能を全て引き出していると感じる。決して赤缶が悪いわけではないが、自転車とオートバイ程の違いを感じる。確かに安いオイルではないが、性能差とエンジン保護を考えれば安い買い物なのかもしれない。

 なお、これより高価なオイルも多数あるが、レースでの使用を目的としているものも多い。これらのオイルは燃焼温度が高く設定されているため、市街地などでの使用ではオイルを燃焼しきれずにトラブルに結びつく可能性があり注意が必要である。

 最後に。 ガソリンスタンドへ行き、ガソリンを満タンに入れる。SJ30のガソリンタンクは40Lなので30Lほどの給油とする。ガソリンの比重はおよそ0.7。約21Kgの重量変化がある。普通車であれば60L給油で約42Kgの変化。助手席に人を乗せれば、約60Kgの変化である。あなたが感じられる違いはどこからだろう? いくら非力なSJ30でも20Kgの変化はわかりづらい。しかし、60Kgの変化ははっきりと感じられる。人の感覚は鈍いようで鋭い。また人により感覚は様々である。オイルの違いとして記事を書いているが、人により感じ方に差があることを承知いただきたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?