【いま、なんどきだい第二部:その席にて待つ】
<一>
私のもとに、あの差出人不明の書簡が舞い込んだのが、ケチのつきはじめだったのだろう。絶対に、そうに決まっている。
白い封筒の表書きには、力強くも流麗な筆文字で私の名前と自宅住所が明記されていた。匿名の封書を手にすることに些か戸惑いはあったが、まあそれはいい。
それよりも、消印に記された『浅草』の文字に、私の勘は並々ならぬ引っ掛かりを覚えた。
視線がその二文字を捉えた途端、意識に猫の爪が突き立ったような……どう反応してよいかはわからないのに、そのまま放っておく