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【JJとその時代】他、鈴木涼美読書記録

 いつも使っている書店に、ScriptaというA5判フリーペーパー(年4回1・4・7・10月発行)があることに初めて気が付いて、autumn2022という通巻65号(令和4年10月1日発行)を持ち帰ったら、本の紹介コーナーに鈴木涼美という人が「哲学の門前(吉川浩満著)」の書評を見開き2ページで載せていた。
 スルスルと読みやすいその文章に惹かれ、初めて聞いたその名前を検索すると「元AV女優、元キャバ嬢、慶應義塾大学卒、東京大学大学院修士課程修了、元日本経済新聞記者」との経歴が。えーなになに。
 1983年生まれ。東京ディズニーランドと同い年か。「82年生まれ、キム・ジヨン」の1コ下。私の15コ下。上野千鶴子氏との共著「往復書簡 限界から始まる」というのもあるのか。

 市の図書館で著者検索して、いっぺんに来た著書が10冊。面白かったのが下の2冊で、このJJはファッション雑誌の「JJ」。
 「JJ」と書いて「熟女」と読ませ、「フェミニズムに出会って長生きしたくなった。」と言うアルテイシアさん(76年生まれ)の7コ下。

「JJとその時代」女のコは雑誌に何を夢見たのか

2021.12.30 初版第1刷発行:光文社新書
 序章 甘くて残酷な女性ファッション誌の夢
 第1章 JJの時代
 第2章 女性誌は生き方を規定する
 第3章 JJの誕生と大学のブランド
 第4章 女子高生と雑誌
 第5章 エビちゃんOLとは何だったのか
 第6章 JJの終焉と「自由」な若者たち

これだけが新書(文庫本よりちょっと縦長の本)。
新書がブームって聞いた事あるような気がする(うろ覚え)。

<P233> 20歳前後の女性たちは今も昔も多くの場合はまだ何者でもなく、単純な花嫁願望ではない形で、モテにもおしゃれにも恋愛や結婚にも興味がある場合だって多い。社会通念が変わり、個人の価値観も徐々に変容し、~略~新たな「何者かのなり方」を手に入れた少数のSNS上のヒーローたちの周囲には、新たな価値観をインストールしつつも緩やかに幸福を望む普通の女のコたちがいる。

 「まだ何者でもなく」「モテにもおしゃれにも恋愛や結婚にも興味がある」娘が2人いて、昔々の女のコである私。

つい先日、帰りの遅くなった私と専門学校生の娘とのLINE
「花嫁修行」なんて、うちの中で使ったことのない言葉が20才から返ってきてビックリ

<P240> これは長らく主婦たちの抱えていた、シンデレラも白雪姫も少女漫画も、幸福のゴールの先の物語がない、という問題をみつけだした雑誌の功績だと言える。

 自分のキャパを認識し、10年間「主婦」「おかーさん」であることを「仕事」と納得したつもりで過ごしながら、「保育園ママ/ワーママ/働くお母さん」という言葉に引っかかりを感じたり、「活動家/起業家/必要を仕事に/キラキラ/女性活躍」を横目に、ふてくされたり、力尽きたりしてきた私。

<P260> 時代で移ろう「正しさ」や流行に大いに影響を受けながら、押し付けられているのか選び取っているのかよくわからない価値観とつかみ取ろうとする幸福の形を追い求める女性たちの揺らぎは今後も健在であるに違いない。

 揺らいでいるのはもう既に「女性たち」だけじゃないのでは・・=今の時代、男のコも大変そう・・・と思って、もう1人の娘(20才前後とは言えないお年頃、女子大文芸学部文芸学科卒業のヒト)に「ちょっと引っかかったんだけど聞いてくれる?」とこの文章を朗読したら、彼女から「女性じゃなく(自分を含めて)バカな女(ってこと)?」と言われたので、ジェンダーとかフェミとか男女共同参画とか、理解したいと近づいては、怒りエネルギーに負けて距離を取らずにいられないヘナチョコ(私の問題)の根深さを垣間見た気がして、思わず笑ってしまった。(笑い事ではない、と怒られそう^^;)

 歴史を学び、戦いの同士的強い絆に憧れながら、身近な人との間や自分の中(心身)に「平和」を実現することの難しさに終始する私の一生でした。合掌。

「女がそんなことで喜ぶと思うなよ」~愚男愚女愛憎世間今昔絵巻

2019.6.10 第1刷発行:集英社
 はじめに~口を開いて男のワルグチ
 第1章 恋愛とか結婚とか不倫とか
 第2章 社会とかフェミニズムとかハラスメントとか
 第3章 とかおじさんとかあなたとか
 あとがき

 1話が10ページ(見開き5ページ)、最後のページは、あとがきから抜粋すると「私の長くて不親切なコラムが言いたいことを、余すことなく鮮やかに1コマのイラストで描いてくれた峰なゆかさん」で締められ、文字だけのページも目次と同じように、文字の太さ大きさフォントがいろいろだったり傍線波線だったりの構成で、絵のない漫画?的な読み易さ。

 これもあとがきから抜粋させて頂くと、「毎週月曜日に更新していた本連載ですが、大体の原稿は私が日曜の朝に送っていたので、志沢さん(※この前文でまず謝辞を贈られる「集英社の志沢直子さん」)の経験と頭のキレと辛抱強さがなかったら多分2週で終わっていたはずです。」とのことで、何かの連載をまとめた本、なのかな(テキトー)。

 どれも面白かったけれど、第1章では
<P70>家庭と仕事の男女逆転はありうるか~もうヒモ以外愛せない
第2章では
<P110>間違いだらけのフェミニズム~その男、リベラルにつき
に声を上げて笑ってしまった。

 通り一遍でない、心のこもったお礼の言葉の並ぶあとがきの締めの3行が
「おしゃべりの話題は大体は男の話だし、仕事しようという原動力も大体は男なんだけど、男には特に感謝はしていないので、愛と憎しみを込めて、この本を捧げます。 2019年5月 鈴木涼美」ということで、ブラボーでした。 

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