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消えた3万円。消えた友達。

≪プロローグ≫
これは私が実際に体験した話である。日が照って30度を軽く超える朝。二泊三日の修学旅行の2日目。友がペットボトルをぺちゃんこにして汗をかいている。東京は常に人で溢れている。テンションの上がりを実感する程の顔をした友や財布を無くして死んだような顔をしている友を横目に嘲笑っていた。そんなある日の出来事である。

第一章 財布を覗く犯人
良い朝だ。一日目はとても楽しく、就寝時間を超えても友と談笑していた。
今日は修学旅行の2日目。
自主研修という名前の学生のための時間だ。
4人のいつめんと、孤立していた学生が1人いる。
私たちの行くところはあまり決まっていなかった。
電車での移動が多く、最初の方は警戒していたが
最後の電車では気を抜いていた。
そこで電車が揺れた。カバンが動いた。チャックが開いた。
隠れてスマホを使っていたが、浮かれてイヤホンをしていた。
田舎ではあまり不思議に感じたことがなかったが
皆、ワイヤレスイヤホンをしていた。
少しは気になったが、私は有線をし周りからの音をシャットアウトした。
そこで事件は始まった。

第二章 お前だろ
電車から降りた。
ディズニーのある舞浜駅で降りた私たちはお土産を最初に買いに行った。
そこからの出来事だ。私の財布から一万円が抜かれていた。
電車で来たこともあって、電車で擂られたのかと思っていた。
だが、私の周りがひそひそ笑っていた。
確実にこの中に犯人がいるものだと思っていた。
同じ部屋だったのはこの班の皆だけだった。
そこでは「多分、電車で擂られたんだわ」といった。
そこの反応で犯人が割れると思っていたからだ。
その言葉を吐いてからは意外な反応が見られた。
全員が辺りを見渡しながら、同じタイミングで同じ言葉を吐いた。
「警察行く?」
全員の顔から、笑顔が消えた。
友達Aの話に寄ると、「昼食の場所に置いてきたのではないか?」
とって言っていた。
その場でそんなことは無いと分かっていた。
あそこは後払いだ。財布が無かったら払えていないことは
この際言わないことにした。
それと同時に、友達Aを疑い始めた。
私の経験上、嘘をついている奴は嘘が下手になる経験がある。
次に友達Bの話を聞いた。次にC、最後にボッチの話を聞いた…

第三章 話が合わない
全員の話が合っていなかった。
財布ごと盗られていなかったのに、盗られたという友達B。
電車で座っていなかったのに置いてきたと友達C。
ホテルに置いてきたのではないかと言っているボッチ野郎。
全員の話が合っていなかった。
電車では座っていないし、財布は持っている。
ホテルに置いてきているはず無かった。
全員が支離滅裂な言葉遣いで私はだんだんイライラしてきた。
声を荒げた。口調を荒げた。口遣いが悪くなった。
ディズニーがクラスでの集合場所だったこともあり、
クラスの雰囲気が一瞬で凍り付いた。
「どうかしたか?」
先生が私に尋ねた。
話を説明すると、先生は笑った。
完全に私を馬鹿にしている笑い方だった。
そこからは、またクラスが賑わってきた。
私はグループから外れ、一度一人になった。
班の4人はみんなで盛り上がっていた。
多分、私のことを馬鹿にしているのだと思う。
あいつらは正直、俺にとっての2軍だ。
俺から見ると、他の連中の方が仲がいい。

第四章 犯人捜しと信じたい声
焦って私は犯人を探した。
先生に話をしても丸められると思い、黙っていた。
私がお金を盗まれた話はどんどん広まっていった。
「~君が犯人だってよW」
「~君は~君が犯人だと思うってよW」
どの声を信用すればいいのか分からなくなった。
だんだん私は人間不信になってきた。
そっかくの修学旅行が、全く楽しくなくなった。
話は広まっているのに、慰めの言葉は一つも無く
”~君が”などの話しか回ってこなくなった。
東京の全ての人が俺のことを馬鹿にしているように感じ
修学旅行の間、ずっと孤立していた。
この時間が終わったら犯人なんか、すぐ出てくるものだと思っていた。
犯人はすぐ出てこず、いずか私は人間不信となり
登校拒否になった。

第五章 誰も信用できない
担任が私の家へ訪問に来るようになった。
他の友達のことを声を荒げながら聞いた。
担任は最初の方の励ますための歌文句から一転代わり、
「皆君のことを笑っていたよ。でも…」
そのあとからの言葉なんて覚えていない。
私はイツメンだと思っていたあいつらに裏切られて、
あいつらがイツメンと呼んでいたのは
私がボッチだと思っていいた奴を入れた4人組で
私は全く仲良くのないただの財布で、
1万円を4人で山分けしていたから
励ましの嘘が支離滅裂だったのがその瞬間に分かった。


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