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【おはなし】クリスマスカラス #毎週ショートショートnote

闇に紛れ雑踏に紛れ、クリスマスに悪事を働く輩を人知れず懲らしめる。
人々は彼女をこう呼ぶ。

クリスマスカラスと…


男は上機嫌でシャンパンのグラスを空にした。
「ホテルをリザーブしてあるんだ。その前に夜景を見ないかい?せっかくのクリスマスだから」

女は小さな光を眺めていた。雑踏を行く人が小さく見える。あの人たちとは違う。私を愛してくれる成功者の男を手に入れた。きっと未来も安泰だ。

視野の中に何か黒いものが横切った。
カラス?こんなところに居るわけない。

そろそろ行こうか。その前にお手洗い。
男は持っていたセカンドバックを女に渡した。男がトイレに入るのを見届けた時、ハラリと何かが落ちた。
先ほど男から渡されたリングと同じブランド名が印字された領収書だった。

クリスマス限定リング 4点 

え…4点?

女は領収書と共に男のセカンドバックを床に叩きつけ、エレベーターの下矢印のボタンを押した。

カー!カー!
どこからかカラスの鳴き声が聞こえた気がした。

(411字)

今週も、たらはかにさんの企画に参加させていただきました。
いつもありがとうございます。
皆さま、良いクリスマスをお過ごしください!