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オーバーツーリズム対策で話題沸騰中のベネチアに行ってみた


ベネチアのオーバーツーリズム対策を体感してみた

THE 円安のこのゴールデンウィーク、界隈で話題になっていたイタリア水の都・ベネチアに行ってきたのでレポートをば。

話題になっていたのは、「オーバーツーリズム対策」の文脈。地元住民の生活を守ることや環境保護の観点から、観光客数を制限するのが狙いである。
国内でも近年ビッグワードになりつつあるオーバーツーリズム。住民がバスに乗れないことで不便極まりないぞ、というニュースが流れてくることも多い気がするが、ベネチアは運河・舟運ど真ん中の街で、行ってみてこりゃ確かに日常生活しんどいわ、などと思った。

人口26万人のベネチアに、多い日には1日10万人の観光客が訪問するということで、これを4-5万人の半分程度まで抑えようというのが当面の狙いのようで。
その起爆剤として導入されたのが、日帰り客からは5ユーロ(約840円)いただくよ、という入場料制度である。(5ユーロ取られる!じゃあ行かない!という、桃鉄1年目のマイナスマス回避ムーブのような期待効果を想定しているっぽいが、施策それ自体がとっても疑問ではある)

・イタリアのベネチアでは4月下旬、オーバーツーリズム対策として日帰り客に5ユーロの入場料を徴収する制度が導入された。
この入場料7月まで実施されるトライアルの一環で、29の「ピーク」日に適用される。
こうした動きを受け、ベネチアでは抗議デモが発生し、オーバーツーリズムに取り組む際に市当局が直面する問題を浮き彫りにした。

出典:Business Insider

実際のまちの様子

ベネチアのメインステーションを降りると、早速黄色いウェアを着たスタッフが大量に街に放たれている光景に出会う。

基本的に、ベネチア市街地にINするための出入りスポットにはすべからく入場ゲートとスタッフが配置され、都度チェックが入る仕組みになっている。
1人5ユーロ徴収するのと、スタッフの人件費と相殺したらどれくらい手残りがあるのだろうか。目的は税収増ではなく地元民のQOL死守・環境保全にあるのでそこは一旦良いのかもしれないが、まちが吐き出すコストを持続的にどう生み出していくのかは若干見えにくい気もした。

最近始まったんだよ〜みたいなことを言っていた(気がする)
4月28日、オペレーション開始4日目に訪問。
駅に降り立ったのち、規制線が張られ入場ゲートを潜らないと入場できないパワープレイ方式。
ゲートをしれっと通過しようとした人は、エンゴロ・カンテばりのマンマークプレスに遭っていた
入場資格をGetしたぞ、の画面キャプチャ
無事入場、水上バスで街中に繰り出す
「逃走中」のハンターを彷彿とさせる黄色スタッフの数々。"DMO"と書かれていた。
入場料はなんのその。それでも人、人、人…。細路地を抜けるのに大苦戦。
メインの大水路。水上バスやゴンドラやボートなどが乱立しており、引き波?によって船体が揺れて運転手が舵を取るのに苦戦していた

「単純に人が多いから、住民が不便極まりないのよ」という京都や東京のオーバーツーリズムとは訳が違って、
・観光客が増える=輸送車両数が増え波が立つ=船の安全運行が妨げられる
・細い運河とそれに沿った細い路地で構成されているまちなので、そもそも人が歩ける面積が狭く、日本のそれより日常生活が劇的に不便

であるため、思っているより住民の日常生活に支障をきたすのだろう。
ゴンドラに乗っているさなか、水上バスの引き波でスプラッシュマウンテンのような水飛沫を喰らいかけた。とてもこわかった。

それよりも、"細路地"の活かし方がすごいのよ


オーバーツーリズム対策の方は、夏前くらいには公式にレポートが上がってくるとして、今回小樽や日南、半田などの運河街と比べたときにベネチアが魅力的に映った気付きの方が大きかったので、伝えてみたい。

個人的に感じたベネチアの圧倒的な凄さは、
・友人/知人に独自の視点で"おすすめ"や"自慢"したくなる街
・(広く見れば)細路地に着目してもらう仕掛けを施すことで、UGCが生み出されやすい街
になっていることかしら、と。

たいがい、日本の舟運スポットは左側

【ベネチアのゴンドラ】の何がすごいのか?それは、舟運の一丁目一番地になっている「水上バス」では入れない細い水路に入っていくことができることだろう。観光パンフレットの中心になるリアルト橋付近を離れ、曙2人分くらいの横幅のゴンドラが、すいすいと細い水路を駆け巡る。

ー その船を漕いでゆけ、お前の手で漕いでゆけ。

通常は、運河のメイン通りを船で移動するのが一般的な運河観光地のルートだが、ベネチアは、運河を主軸に据えた観光地の中でも、一般的な乗り物やモデルコースに誘われていては発掘できない自分なりの"隠しスポット"が発掘できるのが凄い。
舟運の妙で、大(水上バス)→小(ゴンドラ)を辿ることで一般的な、大衆が知るベネチア ⇔ 自分だけが(はじめて)発見した別な角度のベネチア を比較しながら楽しむことができる。

これは、おそらく他のまちにも活かせる部分は大きくて、メインストリームを体感させた後、その付近を自分なりに巡り、新たな価値を見出していくような仕掛けを施すことで、良質なUGCが出来上がるはずである。
一般的な観光スポットがSNSに上がってきても「ふーん、いいな」くらいになるものが、"自分の言葉・自らの着眼"で語っている観光地アゲの投稿を見た方がその街に興味を持ちやすいんじゃないだろうか。

日本の地方観光地でも、観光客自らに新価値発見をさせてあげる工夫、例えばロゲイニングや謎解き・脱出ゲームなどに昇華させてあげられると良さそう。Questoなど、世界観が作られたプラットフォームに掲載するのもアリ。

Discover new places
As you walk and tour around the city, you will visit new cool places.
Solve puzzles, crack riddles
You will test your wits and exploring abilities with fun challenges.
Learn fun history
Each place comes with its own bit of history that you'll discover as you walk.
Role-play
Put yourself in the shoes of a famous fictional character and play out their story.

出典:Questo
細路地から見える対岸の飲食店

「半円をくり抜いて中の賑わいの様子が見える工夫、ベネチアの飲食店ってすごくない?」みたいなSNSの投稿だったり、

ベネチアは色彩豊かでした。ムラーノ島にて。

「ベネチアの細路地で見つけた、わたしだけの10色の色彩、これぞベネチアカラー!」みたいなSNSの投稿だったり。
ただ単純に、見知った橋と共にUPされる「ベネチア、最高!」みたいなSNS投稿よりも、独自の着眼でSNSに上がってくる投稿の方が知人・友人の来訪率を高めてくれそうだなと。

観光客に独自の切り口を持たせる仕掛けを施したい

(再掲)

ということで、これからはベネチアを意識してまちの魅力訴求や、UGC生成のための仕掛けをしていこうと思ったのでした。

おまけ -日本人の美徳とは-

ベネチア、海鮮が群を抜いて美味かった。白ワインを持ち歩きながら街歩きをしたいレベルだった。白身魚もタコも全部最高。
そして、日本人として、イタリア人よりもいかに魚をうまく食べられるかを示して、ベネチアを去ったのでした。これが日本人の矜持だ!

ベネチアは魚の街。魚は全部うまい。
レントゲン技師のみなさま、どうですか?


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