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第6回毎月短歌(外村ぽこ選)

大変遅くなりました!一月の毎月短歌の選を発表します!ありがたいことにこれで3回目ですが毎回楽しくやらせていただいてます!それでは早速行きましょう!

テーマ詠「肌」部門

グッドぽこ賞(三席)

ノーマルのカメラで撮ったストーリー肌荒れしててわたしかわいい/小谷リノ

まず一首目はこちらのお歌。一読して主体の素直さというか愛嬌に溢れていて可愛らしいなと思いました。
主体は女性だと思うのですが、ノーマルカメラで人を撮るのってあまり自撮りとかに執着しない男性、つまり恋人なのかなと読みました。
恋人が撮ったツーショット自撮りか、はたまた勝手に撮った写真なのか、それを恋人の(もしくは自分の)ストーリーを通して見ている。それを『肌荒れしてて』『かわいい』と表現している所が幸せなのが伝わってきてとても素敵です。好きです。

鮫だったことはないけどおたがいが肌交わすたび鑢られている/ef

二首目はこちらのお歌。これはなんとなく考えさせられる力があるなと思いました。
この方はお歌と一緒に「かねへんに慮るで鑢ということばはいろいろ含みがあるようで好きです。」というコメントを寄せてくれているのですが確かになーと思いました。
この歌の2人はお金で繋がっている関係なのでしょうか。肌を交わしているのに心が擦り減ってゆく感覚、それを『鮫だったことはないけど』と冗談めかしているのが切なさを際立たせます。個人的にこうゆう言葉遊び的なのは楽しいですね。好きです。

咬みつけば僕のかたちに沈む肌 永遠なんてぞっとしちゃうね/肺

三首目はこちらのお歌です。なんと言っても上の句と下の句の取り合わせが良いですね。肌を咬むという官能的な動作から下の句の『永遠』を恐れる心理描写が一見脈絡が無いようで強く惹かれあっていると思います。
『僕』が付けた歯形もきっとすぐに治る、それは誰にしも平等に時間が流れるからです。「今が永遠なら良いのに」という想いは時が流れゆくからこそ抱くのかもしれません。深読みかもしれませんが、主体の「相手と一緒に未来へ歩んでいきたい」という祈りが見えるようです。好きです。

ナイスぽこ賞(二席)

やわ肌の少女のままで生きるには竜の鱗が少し足りない/日比野永遠

ナイスぽこ賞の一首目はこちらのお歌。とても下の句が魅力的です。人はどうしたって歳を取りますからいつまでも『少女』ではいられない。でもあと『竜の鱗が少し』あったら少女のままでいられるなんてとてもファンタジーです。
竜の鱗を比喩と読んでも、本当に竜の鱗が存在する世界の話で読んでも良さそうですが、何より主体が幼い頃は持っていたであろう「竜の存在を信じる心」が現実を知り大人になってゆく主体が少女のままで生きていく鍵なのではないかと思います。好きです。

夜がひとつ欲しくてひろげあう四肢のなんてつめたい部品だろうか/石村まい

二首目はこちらのお歌です。恐らく性愛の歌だと思うのですがそこに愛はあるのでしょうか。二人の『四肢』を『つめたい部品』と表現したことに感嘆します。
きっと互いに相手のことを寂しさを埋めるための道具だと思っているのでしょう。満たされないと分かっていても縋ってしまう切なさが漂います。主体が欲しい『夜』は意中の相手と眠る夜なのかもしれないですね。
初句6音の歪さの歌への落とし込みと比喩の巧さが素晴らしいです。好きです。

ベストぽこ賞(一席)

乳白の朝の日じみた肌に触れ昔習ったピアノを想う/とうこ

ベストぽこ賞はこちらのお歌です。この『肌』は主体の母親なのかなと個人的には読みました。『乳白の朝の日じみた』という言葉から、年老いてあまり外に出ることもなくなって血の気の引いてしまったような、そんな肌を想像しました。あんなに逞しかった母の弱々しい手、それが恐らく主体がとっくに辞めてしまった『ピアノ』を想起させるのでしょう。
母から教わったものが今の自分に繋がっているとは限らない、でもその思い出は確かに存在したのだとセンチメンタルな気分になります。好きです。

テーマ詠『肌』部門は以上となります!それでは次は2023年の自選部門です!いいお歌ばかりで選ぶのが大変でした〜

2023年の自選部門

グッドぽこ賞(三席)

あたまからつまさきまでぜんぶさみしい パピコを割ってどっちも食べる/一色凛夏

一首目はこちらのお歌です。上の句の5/6/7という不安定さにとても惹かれます。『さみしい』という感情は数多の歌人が多種多様な方法で表現していると思いますが、この上の句は秀逸だと思いました。
そこからの下の句で『パピコ』が出てくるのが良いですね。パピコと言えば基本的に分け合うものだと思います。2個入りだしキャップの所が取れるし。それを『どっちも食べる』と表現したことで、主体の虚無感がずっしりと伝わります。好きです。

テーブルのコップの跡をさっと拭き 以上をもって別れとします/琴里梨央

二首目はこちらのお歌。主体の強さというかカッコよさが良いですね。別れの場面を詠んだ歌は(個人的に)未練のようなものが滲むことが多い印象です。しかし、この主体はきっぱりと今の相手のことを切り捨てる覚悟ができているのでしょう。
もう覚悟は決まっていて、きっときっかけなんてなんでも良かった。たまたまそこに結露した『コップ』があっただけなんだと思います。「立つ鳥跡を濁さず」ではないですが、この行為によって主体は次に進めるような希望があります。好きです。

暗い色しか着なくなりソーイングセットに残ってゆく赤い糸/小野小乃々

三首目はこちらのお歌です。やっぱり明るい服や派手な服ってなかなか歳を重ねると着づらいのではないかなと思います。自分が好きな服を着るより周りからどう見られているかが気になって無難な服に落ち着いてしまう人が多いのかなと。
そんな大人になってしまった主体と残された『赤い糸』の取り合いが良いですね。赤い糸と言えば運命の人ですが、そうゆう乙女な気持ちも歳を重ねて忘れてしまった虚しさが伝わります。いつか主体に素敵な出会いがあると良いなと思います。好きです。

ナイスぽこ賞(二席)

(平凡を羨む夜があなたにもありますか)サイリウム折る音/小石岡なつ海

ナイスぽこ賞の一首目はこちらのお歌です。『サイリウム』を折っていることから恐らくアイドルのライブ会場なのでしょう。アイドルと言えばやはり皆からの憧れの的だと思います。
ただ、有名人には有名人の苦労があるのでしょう。もしかしたらアイドルを辞めたいと思ったこともあるかもしれません。でも決してそれを見せないからアイドルなのでしょう。
だから主体も言わない。ファンにできることは全力で応援することだけです。括弧にした心の声に愛を感じます。好きです。

ジャンケンはデカさ勝負と思い込みチョキを鍛えているシオマネキ/良い天気

二首目はこちらのお歌。これはもう一読して笑っちゃいました。『シオマネキ』が分からない人は是非調べてほしいんですが片方のハサミだけが大きい蟹です。あれは『ジャンケン』に勝つために鍛えた結果だったんですね。努力とは凄まじい。
てか、シオマネキの世界にはチョキしか存在しないですよね。そしたら案外『デカさ勝負』も間違いじゃないのかも…。実際、あのハサミは求愛行動に使われるようですし…奥が深いです。好きです。

ベストぽこ賞(一席)

離職した同期について語りあうミモザサラダを分けあいながら/塩本抄

ベストぽこ賞はこちらのお歌です。ファミレスでのワンシーンでしょうか。この歌を読むにあたって『ミモザサラダ』について簡単に調べたのですが、卵を雪上に咲くミモザに見立てているそうで、ケーキのようにカットして取り分けるそうです。
このようなバックボーンを持つミモザサラダを歌に読み込むことで『離職した同期』にどんな感情を抱いているかを明記せずに伝えている巧さがあると思いました。
同期との別れを寂しく思いつつも新たな門出を祝福しているのでしょう。暖かな雰囲気が素敵です。好きです。

以上で第6回毎月短歌の選評は終わりです!受賞された方々は本当におめでとうございます!スペースでも発表してますのでよければ聞いてください!
第7回にも懲りずに参加させていただいてますのでこの記事を読んで興味が出た方は参加してくれると嬉しいです!それでは〜👋

https://x.com/outvillage_poco/status/1750126393038618890?s=46

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