巨女ノ国 ~#010~

【五人は、皆頷きました。98%絶望が目の前に繰り広げられていたとしても、2%の希望を信じ、そこに残りの命を全て賭けようという気持ちは皆同じでした。】

 ただ何事もないように無難に時間を過ごし、年齢を重ね続けるような生き方を、彼らは良しとしませんでした。そんな五人に共通していたのは、希望を捨てない強い気持ちでした。

 希望のパーセンテージは2%。決して希望と絶望は50:50ではありませんでした。しかし、彼らの想い描く巨女ノ国は、その2%の希望に全ての人生を全振りして賭けても良いと思えるだけの魅力が詰まっていたのでした。

一人目「じゃあ、全員一致だな。この村に帰ってこれない覚悟はもうできているってことだよな。」

 命をかけてでも巨女ノ国に行くか・・?その問いは、もはや五人には愚問でした。

二人目「そんなことでビビッてちゃ、何も欲しいものなんて手に入らねえ。だよな?”おケツに入らずんば虎児を得ず”ってやつさ」

一人目「おケツじゃなくて、虎穴(こけつ)だろ。」

三人目「ははっ!二人目は脳みそが筋肉だからな。面白いやつだ。」

三人目「ああ。何かを創造するには、まずは自分の人生を創造する必要がある。命を惜しんでいては何も始まらないさ。生きるってことは、常に何かを生み出し続けることだ。巨女ノ国に向かうことは、新しい世界と生き方を開拓することにつながるのは間違いない。」

一人目「ああ、そうだな。こんな男だけの小人の村では、先々限界が見えているしね。男しかいないという環境も良くない。このまま沈没していく船に乗ったまま死ぬか、新しい島を目指して荒波に飛び込むか、の違いでしかないさ。」

 小人の村の閉塞感のもう一つの原因は、「男だけ」という環境にもありました。テクノロジーあが発達している小人の村では人工的に子孫を増やす方法も開発されており、一定数の人口が保たれるように仕組みが出来上がっているのですが、果たしてそうして種を途絶えさせないことが本当に幸せなことなのかどうか、もはや誰にもわからないような状況になっていました。

 女性がいないことが当たり前になり続けている小人の村の生活は、彼らの心の中から潤いまで奪っていっているように感じられました。でも、「いないものはいないので、仕方ない」と自分で自分に言い聞かせ、ただひたすらに毎日を過ごすことに意識を向けることで生き永らえてきたのでした。

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