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回想その2‥‥触れている安心

私が家にいるときは、いつも隣に彼女がいた。

家の中、どこへ行くにもついてきた。
なぜか夫は、可愛がってくれるけど、餌をくれるけど、ただそれだけの人、ちょっとかわいそうだけど、そうゆう風に見えた。

だから、夫は私が帰宅すると、私の足元で喜びのあまりにクルクル回ってるZaattiを抱えて「ほら、ただいまってしっかり抱っこしてあげなよ」と、私の両手がバッグと買い物袋でふさがっていることなどお構いなしに、彼女への頬ずりを強要してくる。

私がソファーに座っている時、疲れて横になっている時、彼女は必ず近くに来て体のどこか一部を私に触れるように座る。
彼女のお尻を私の脚に押し付けて座ったり、片方の前足をそっと私の腕に添えて箱すわりしたり。言いたいことがあるときは前足で私をトントンと叩いて静かに見上げる。

ベッドでは、冬はいつも布団の中に入ってきて私の右脇の下で丸くなって寝る。脇の下から肩にかけて彼女のモミモミで引っ掻き傷が多くできる。パジャマの上からでも爪は刺さる。いつも、最近痛いな...と気付いてから爪を切る。
夏は枕元で、私の顔と首まわりに彼女のお尻を押し付けて眠る。柔らかい毛が汗で顔にまとわりつくから結構暑苦しいのだけれど、彼女のしたいようにさせる。

(ちなみにもう一頭のオスは、冬の寒い朝にだけ私の布団に潜り込んできて、左の脇の下で寝る。湯たんぽ程度にしか思われてないような気がする)

見えないからなのか、彼女は触れることで私の近くにいることを確認していたように思う。なんともいじらしくて、どうしようもなく可愛くて。

私の体温は彼女の期待通り、安心感を与えられていただろうか。

彼女から伝わる柔らかな毛のぬくもりと息づかい、時には心拍さえも感じる距離は、私にとって日々の生活のささくれをそっと包んでくれる温かな抱擁であり、何にも代えがたい宝物であり、優しい気持ちにしてくれる安定剤そのものだった。

いつもベッドに入るとき、思い出す。

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