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BSプレミアムシネマお薦め⑳『ザ・ローリング・ストーンズ/レッツ・スペンド・ザ・ナイト・トゥゲザー』

今回お薦めするBSプレミアムシネマはこちら、ローリングストーンズの1981年のツアーを収めた『ザ・ローリング・ストーンズ/レッツ・スペンド・ザ・ナイト・トゥゲザー』です。

ドラムのチャーリーワッツ氏は亡くなりましたが、現在でも解散しているわけではないので、いずれまた、何らかのか形で演奏を聴くことはできるかとは思いますが、この1981年はまさにストーンズのキャリアの中でも全盛期であったと言えるでしょう。デビューが早く、また早くして売れたので、全盛期はむしろ60年代なんじゃないとも思われるかもしれませんが、勢いだけでやっていた初期と比べると実力も風格もそしてビジネス力も格段にパワーアップしていたのがこの時代です。そしてステージがいくら大きくなっても、ステージや演出にいくらお金をかけても、彼らのやっていること、やりたいことはブルースなんだな、ということが改めて理解できます。アメリカの黒人階級が歌っていた労働課をイギリスの労働者階級が形を変えて、つまりはロック化、エレキ化して歌う、それがストーンズのコンセプトであり、最初から一貫して持ち続けている姿勢です。よくストーンズとビートルズは比較されますが、変化し続けたのがビートルズであったのに対し、一貫し続けた、しかし時代に合わせてパワーアップはしてきたのがストーンズだと言えます。

そして、このライブツアーが行われた1981年とは、あれから10年以上が過ぎたんだ、という意味合いもあったでしょう。あれから、というのは結成当初のリーダーでもあったブライアンジョーンズの脱退と死からです。ぱっと見は金髪の美少年なのですが、まあ、ストーンズで一番の不良です。この不良性がもちろん初期ストーンズの魅力なのですが、しかし、彼の死を期にふっきれたものがあったのでしょう。もちろんその不良性はそのままキース・リチャーズがしっかりと引き継ぎましたが、70年代を超え、80年代を迎えることにはある意味健康的?なバンドとして(しかし、ちゃんとステージ上でも咥えたばこですが)スタジアム規模のライブをこなすバンドとなっていったのです。この映画の中でも過去との比較がさりげなく提示されています。(忘れていましたが、この映画はコンサートフィルムではありますが、あくまで映画としても作られており、過去の映像などもフラッシュバック的に入ってきます)

ということでストーンズファンでなくても、単に音楽として十分に楽しめる映画ですし、もちろんストーンズファンならもっと楽しめるでしょう(例えばミック・ジャガーのファッションはいかにも80年代的ですし、メンバーの中でミックだけがそのようなファッションをしていることも、いかにも、という感じがします)。お薦めです。

なおストーンズのコンサート映画には、日本未公開(おそらく世界でも未公開というか非公開)の『コックサッカーブルース』という映画もあるそうで、こちらのほうはさらに10年前のツアーの様子を撮ったもので、タイトル同様、もっと過激というか不健康なもののようです(それが70年代と80年代の違いでしょうか)。時が経った今だからこそ、公開できるようになることを期待しています。


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